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- 2016/05/10 掲載
木質バイオマス発電が本格化、「持続可能な社会」の構築は岡山県真庭市に学べ
固定価格買い取り制度が始まり、各地で建設ラッシュ
日本の国土のざっと7割は森林。林野庁の推計では年間、約2,000万立方メートルの未利用材が排出されているだけに、森林資源の有効活用として注目されてきた。
木材を燃やして燃料にすれば大気中に二酸化炭素を放出するが、木材の伐採後に森林が成長すれば森の樹木が再び、二酸化炭素を吸収する。このため、地球環境にやさしい再生可能エネルギーの1つに数えられている。
東日本大震災のあと、国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が始まった。未利用材を燃料とする木質バイオマス発電は、2016年度で1キロワット時当たり32~40円の高値で買い取られている。
森林を抱える自治体の多くが制度スタートとともに、木質バイオマス発電建設へ動き出し、建設ラッシュにつながった。中山間地域は林業の不振と急激な人口減にあえいでいる。木質バイオマス発電が地域振興の切り札と映ったことも建設ラッシュを後押しした。
4月から市役所など公共施設へ電力供給を開始
岡山県北部の美作地方にある真庭市は、人口約4万7,700人。市内の8割ほどを森林が占め、江戸時代から「美作ひのき」の産地として知られてきた。市林業・バイオマス産業課によると、木質バイオマス発電所は2015年4月、真庭産業団地で稼働を始めた。運営するのは、地元の集成材大手銘建工業と市、森林組合など計10社・団体が出資した「真庭バイオマス発電」(代表・中島浩一郎銘建工業社長)。総事業費は40億円以上に及ぶ。
出力は1万キロワットで、未利用材を主な燃料とする木質バイオマス発電所としては国内最大級。フル稼働した場合の年間発電量7万9,200メガワット時は、一般家庭2万2,000世帯の使用電力に相当する。
稼働から1年間で売電した売り上げは約21億円。発電した電気は新電力に販売してきたが、エネルギーの地産地消を目指し、2016年度から一部が真庭市役所本庁舎と市の第3セクター会社が運営する文化交流施設に供給されている。
発電所の運転要員として15人が雇用されたほか、未利用材の集積なども含めると、約50人の雇用を実現した。従来は山林に放置されるか、産業廃棄物として処分されてきた未利用材を活用することで、コスト削減の効果も大きいという。
木質バイオマス発電を進めるうえで問題となるのは、燃料の調達だ。地域全体に分散した木材を回収するには、人手もコストもかかる。真庭木質バイオマス発電所は年間、9万トンの間伐材など未利用材と、5万8,000トンの製材所から出る端材を必要とする。
そこで、未利用材の買い取り制度が設けられた。発電所近くにある集積場へ未利用材が持ち込まれれば、1トン当たり3,000~5,000円で買い取る仕組みだ。林業者の貴重な現金収入になるだけでなく、間伐が進めば森に日光が差し込み、良い木が育つ。林業者、森林の双方に良い循環が回り始めた。
木質バイオマス燃料は含水率15%未満の乾燥した状態が望ましい。だが、未利用材は含水量が多く、そのままでは燃料に向かない。このため、市は集積場で3カ月から半年、乾燥させて含水量を低下させる工夫も凝らしている。
【次ページ】いかにして地元に金が落ちるシステムにするか
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