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前回、海外子会社を含めたグローバル連結経営管理において、絶対押さえたい4つのポイントについて解説しました。では実際にグローバル連結経営管理を実現していくにはどうしたらよいのでしょうか。そこで役に立つのがITです。今回は、グローバル展開を成功に導くためのERP構築に関する基本と、その際に必ず設定しておくべき「6つの決めごと」について解説します。集約するのか、拠点ごとに導入するのか、それとも両者を組み合わせるのか。企業は、さまざまな選択にあらかじめ備えておく必要があるのです。
ERPのグローバル展開の基本、必ず設定しておくべき6つの決めごと
ERPを活用してグローバル連結経営を実現するためには、以下の6つの決めごとが成否を分けます。
決めごと1.「コード体系の統一」
決めごと2.「計上ルールの統一」
決めごと3.「経営指標の統一/会議資料の統一」
決めごと4.「データの一元管理・リアルタイム集計」
決めごと5.「業務標準化の推進(インプットデータの信頼性)」
決めごと6.「継続的にPDCAを回す仕組みを確立する」
1つずつ具体的な詳細を見ていきましょう。
決めごと1.「コード体系の統一」
まず検討したいのは「コード体系の統一」です。コード体系が統一されていない場合、データを各社から収集する際に「コードの変換」が必要になります。そうしなければ、連結での数字を正確に把握することはできません。
システム的には、関連会社ごとの個別のコード体系と共通コード体系のマッピングができれば、変換をしてデータ集計することは可能です。しかし、その開発やマスタ管理には大きなコストがかかるとともに、本質的にはグループ内で同じ商品や部品は同じ呼び名(コード)とすることが合理的です。M&Aなども頻繁に発生するなど、ビジネスのスピードが速く、現実的には難しい面もありますが、いかに寄せていくのか。MDM(マスターデータマネジメント)ソリューションも活用しながら、進めてみてはいかがでしょうか。
決めごと2.「計上ルールの統一」
連結経営を行うためには、関連会社間取引におけるルールを統一する必要があります。たとえば、売上や原価についても、発生主義を採用するのか、それとも実現主義を採用するのかによって、その結果が大きく異なってくるからです。
売上計上や検収基準の統一、積送中を含めた各種在庫責任の明確化、原価計算ルールの統一など、収集する各種実績データが同じルールの下で算出された数字でなければ、比較可能性が確保されず、経営管理に結びつけることができません。
決めごと3.「経営指標の統一/会議資料の統一」
海外関連会社のマネジメント(経営層)が本社から出向する場合、定期的なローテーションが発生することになります。その都度、経営指標や会議資料に変更が生じ、海外独自の資料で運用しているようでは、前任者からの引継ぎも、前任者との期間比較性も確保できません。
グループ関連会社で統一した経営資料や会議資料を準備することで、新たなマネージャが赴任しても、即座に関連会社の経営状況を把握することが可能になります。
また、日本人マネージャと現地ローカルスタッフの言語の壁によるコミュニケーション不足についても、業務をある程度標準化しておけば、意思疎通がしやすくなります。
決めごと4.「データの一元管理・リアルタイム集計」
海外関連会社も含め、グローバルに統一したシステムを導入し、物理的に1つのデータベースで一元管理されることが理想ですが、現実的にはシステム統合の過渡期や各国ローカル要件への対応により、システムが異なるケースを想定しておかなければいけません。
その現実解で有効なのが、下図に示すデータ収集基盤の構築です。これがあれば、システムが完全に統合されていなくても、各国の情報をリアルタイムに収集し、グローバルでの需要や在庫の状況、各生産拠点の生産進捗、セグメント別の業績などが把握できます。
このデータを収集する際に重要となるのが「決めごと1/決めごと2」です。グローバルでの品目マスタの統一や取引マスタの整備、勘定科目コードの統一などが欠かせません。
さらにデータを一元管理する上で、その「置き場所」の検討も必要です。下図でシステム設置場所について比較をしてみました。
まず、データ一元化に加え、システム運用管理面からもサーバ集約が1つの選択肢となります(図ではシンガポール集約と書かれている列)。従来の拠点導入に比べて多くのメリットが考えられますが、デメリットもあります。そのため、シンガポール(集約地)と生産拠点の役割を分けたハイブリッド構成の選択もROIの高い選択肢として考えられます。
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