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  • 2018/02/22 掲載

ERP移行の5つのポイント、なぜ単なる老朽化対応ではもうダメなのか

連載:次世代ERPによるビジネス変革

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近年の堅調な業績を受け、基幹システムを刷新する企業が増えています。国内/海外の市場環境や業界ごとに状況は異なりますが、最新のERP(Enterprise Resources Planning)システム導入に踏み切る企業が多いようです。注目したいのは、「これまでの老朽化したERPシステムのリプレース」とは様相が異なること。そこで、本稿ではERPの移行で注意すべき5つのポイントとして、本社と子会社で用いられる「2階層型ERP」、Webやクラウドとの親和性の高い「ハイブリッド型ERP」などについて解説します(2018年3月15日一部修正)。

フロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎

フロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎

フロンティアワン 代表取締役。 同志社大学工学部化学工学科卒業(生化学研究室)、1989年米国総合化学デュポン社(現ダウデュポン社)入社、1998年独ソフトウェアSAP社を経て、2005年にフロンティアワン設立。業務系(組立工場、化学プラントなどの業務知識・経験)、基幹系(ERP/SCMなど)、クラウド(エンタープライズ系:PaaS、SaaSなど)、製造現場システム(MES/MOM/IoTなど)の調査・企画・開発・導入の支援に携わる。一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)のサポート会員であり、IVIのエバンジェリストをつとめる。

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成長戦略やリスクに対応できる未来志向のERPが求められている
(©adiruch na chiangmai - Fotolia)

「既存システムの踏襲」から「未来志向の基幹システム」へ

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 近年、基幹システムに対する顧客企業のニーズは大きく変化しています。

 過去において基幹システムを移行する場合、「既存システムが提供する機能を踏襲する」ことが大前提でした。つまり、「既存システムでできたことは、新システムでもできる」ことが当たり前だったのです。

 しかし、最近では「既存システムにこだわらず、これからの成長戦略やリスクに対応できる、柔軟かつ拡張性の高い未来志向の基幹システムがほしい」という要望が大きくなっています。

 この傾向は経営者からエンドユーザーまで共通しています。特に、ビジネスの最前線に立つ事業部門やエンドユーザーからは、次世代ERPシステム(ポストモダンERPシステム)の導入を望む声が確実に増えています。

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ERPシステムの進化。以前は業務システムの寄せ集めであり、サイロ化していた
(出典:フロンティアワン)

老朽化したERPシステムは「負の遺産」である

 ここで、日本のERPシステムの歴史を(ざっくり)振り返ってみましょう。日本にERPシステムが登場したのは、1990年代半ばでした。ERPシステムがそれまでの基幹システムと大きく異なっていたのは、以下の2点です。

・複数部門間にまたがる統合型システムである
・パッケージ型システムである


 特に「パッケージ型」というシステムは斬新でした。これにより、パラメーターの設定変更で、幅広い機能が利用できるようになったからです。

 パッケージ型が普及するきっかけは、オフィスコンピュータ(オフコン)や汎用機よりも安価なクライアント・サーバモデルが登場したことと、ERPパッケージ(ソフト)が同モデル上で稼働したことが挙げられます。

 ただし、日本企業でERPシステムが普及するのは、2000年代に入ってからでした。国産ERPパッケージが数多く登場して導入費用が手頃になったことや、ERPシステムが日本の商習慣に対応したことがその理由です。

 日本のERPシステム導入には、以下の2つの特徴があります。

・ 導入目的として管理会計の機能を重視している
・ 既存システムに機能や操作性を近づけるため、追加開発(アドオン)やカスタマイズが多い


 ERPシステムの導入は、日本と欧米で大きな違いがあります。欧米でも管理会計を重視していたのは同じですが、カスタマイズが多いのは日本企業特有の傾向です。

 欧米ではトップダウンで導入を決定し、パッケージの標準機能をそのまま使うのが一般的でした。しかし、日本ではパッケージをベースに手を加え、操作性や不足機能を追加するという使い方が大半だったのです。

 この「アドオン/カスタマイズ」は、SI(システムインテグレーション)ベンダーの収益源でした(今でも収益源です)。アドオンやカスタマイズが増えれば増えるほど、SIサービスは増加します。人月工数ビジネスをするSIベンダーにとってはありがたい仕組みです。さらに、個別開発した独自機能を保守サポートできるのは開発したSIベンダーですから、保守運用サービスが自動的に受注できるウマミもありました。

 しかし、カスタマイズを繰り返した重厚長大なERPシステムは、急速に変化するビジネス環境に対応できず、企業にとっては事業再編の足枷となってしまいます。今や「老朽化したERPシステムは負の遺産」とも言われています。最近、ERPシステムの再構築を急ぐ企業が急増しているのは、「負の遺産を清算したい」という背景もあるのです。

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これまでのERPがカバーしていた領域
(出典:フロンティアワン)

企業が次世代ERPに求めるべき5つのポイント

 では、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる「次世代ERPシステム」とはどのようなものなのでしょうか。

 次世代ERPへの移行を進める企業のニーズは、以下の5つに集約できます。

1.全社統合、グループ統合のインフラシステムであること

 企業の買収や合併、グループ会社再編など、激しいビジネス環境の変化に対応するためには、全社グループで共通したビジネスインフラが必要です。その際に意思決定に必要な情報を即時に入手する手段として、ERPは有効です。また、会計だけではなく、販売や購買、生産など幅広い業務の情報を入手する仕組みとしても、ERPは最適なのです。

2.ガバナンス強化の手段となること

 多くの企業では月次決算の情報を集計し、連結決算を行っています。しかし、最近は大手企業による海外子会社・グループ会社での粉飾決算が相次いでいるのが現状です。

 そのような問題を発生させない仕組みとしても、ERPは注目されています。なぜなら、海外拠点の業務内容を本社でも詳細に把握できるため、粉飾を見抜く手段となるからです。特にクラウド環境で提供されるERPは、短期間での導入やコスト的にもメリットが多いため、海外拠点の子会社・グループ会社向け事業用ERPとして導入されています。

 こうした事業用ERPと本社のメインERP(コアERP)を接続するモデルは「2階層型ERP」と呼ばれています。

 その仕組みはこうです。本社や重要拠点などにはコアERPシステムを導入し、子会社・関連会社などのグループ会社には事業用ERPシステムを導入します。そのうえで、両方を2階層で使い分ける構成のシステムを構築します。これであれば、(ある程度の)ガバナンス強化を実現できます。

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2階層ERP(2 Tier ERP)の考え方。1層では安定性を重視し、2階層では柔軟性を優先させる
(出典:フロンティアワン)

 もっとも、理想を言えば、国内海外の本社とグループ会社(子会社・関連会社)全拠点に、同じERPシステムを導入することでしょう。プラットフォームとデータフォーマットを統一して業務やデータを連携する仕組みを構築すれば、業務処理の効率化やビジネス状況のリアルタイム把握が可能になるからです。

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