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- 2013/04/25 掲載
新卒1千万円、年俸1億円に勝つ!成長ベンチャーの人財獲得戦略
新連載:急成長ベンチャーの人財マネジメント戦略
企業名:ホニック社
主な事業:スマートフォン向けのゲームアプリの開発
従業員数:100名
売上高:20億円
現社長の岩崎は、大手EC関連企業でサービス開発を担当していたが、8年前に独立した。当初はEC関連企業向けのシステム開発を受託開発していたが、3年前からスマートフォン向けのゲームアプリ市場に進出することを決め、自社でアプリ開発を始めるようになった。ホニックの主力商品は若手サラリーマンが移動中に気軽に楽しめるゲームアプリが中心。若手サラリーマンを中心の多数のユーザーを獲得し、事業も右肩上がりで成長している。
ホニック社の人事部長の宮田は、もともと営業部門の一員として勤務してきたが、社長の岩崎から社内の人脈の広さやコミュニケーション能力の高さを買われ、今年から人事部長に抜擢された。ホニック社では、事業の拡大が順調に進む一方、適切な能力を備えたエンジニアがまだまだ少なく、エンジニアの採用が喫緊の課題となっていた。また、エンジニアを中途採用しても比較的短期間で退職してしまう状況にあった。
宮田は、社長の岩崎から、「ビジネスの急拡大を促進できるよう、エンジニアの採用、教育、評価、報酬を早急に整備せよ!」との指令を受けた。そこで、宮田は、大学時代の友人で、X社で人事コンティングを提供している河上に相談を持ちかけた。宮田は社長の岩崎の承認を取り付け、河上の支援を受けながら、3ヶ月でホニック社の人事改革を進めることとなった。
優秀なITエンジニアをいち早く採用せよ!
すると、現場では圧倒的にエンジニアの数が足りておらず、開発スピードにも遅れが生じており、社内のエンジニアたちが日夜残業しながらなんとか対応している状況にあった。
また、採用された後のエンジニアたちも十分な説明やサポートを受けぬまま、直ぐに現場に放り込まれるため、現場で力を発揮するまでに時間を要していた。さらには、商品やサービスの開発スピードがあまりにも速く、そのスピード感にキャッチアップできていないエンジニアも一部に見られた。
技術面では、ホニック社のような事業の場合、数十万人から数百万人のユーザーに対応しなければならないため、パフォーマンス、セキュリティ、アジャイル開発などに対する技術的な要求が高まっていた。
宮田は「このままではまずい」と思い、河上とミーティングを持つことにした。河上は宮田がヒアリングを進めている間、複数の人材紹介会社の担当者から個別にヒアリングを行っていた。
宮田:社内におけるエンジニアの人材不足の状況は思ったよりも深刻でした。何とかしなければならないですが、他の会社ではITエンジニアの中途採用の状況はどんな状況なのでしょうか?
河上:いやぁ、IT業界全体として今エンジニアは圧倒的に不足しているようですね。ある会社の調査によれば、日本企業全体でも81%が人材不足を感じており、中でもエンジニア不足はもっとも人材不足を感じている職種に挙げられていますね。特に、スマートフォン向けのアプリ開発のエンジニアは圧倒的に不足しており、『とにかく一人でも多く採用したい』という声が人材紹介会社には毎日数多く寄せられているようです。メディア系の会社やコンテンツサービスの会社、広告代理店など、実にさまざまな企業から採用ニーズが寄せられるようですね。
宮田:一人でも多く採用したい、ですか…。
河上:既に知っているとは思いますが、最近では、ゲームアプリ開発大手のA社が中途採用のエンジニアに対して200万円の入社支度金を支給したり、ネットサービス大手B社がエンジニア向け無償の研修プログラムを提供して、受講を修了した人に内定を出す制度も導入しています。各社の人材獲得競争はそれぐらい熾烈な状況と言えますね。
宮田:入社支度金や無料の研修制度かぁ。大手はコストをかけてでも優秀なITエンジニアを採用しようとしているんですねぇ。しかし、うちのような成長ベンチャーがエンジニアの採用に関して大手と真っ向勝負をしようとしてもなかなか勝ち目はない。何か他に差別化できる方法を考えないといけないダメですね…。
宮田と河上は会議室で向かい合い、腕組みをしながら考え始めた。しばらくして、河上が話し始めた。
河上:ホニック社のような会社が大手も含めた同業他社と人材獲得競争で勝負するためには、他とは違う差別化戦略を取らなければなりません。同じ土俵で勝負をしようとしても勝ち目はありません。そこで、もう少し採用対象として狙うエンジニアのターゲット層を広げてみてはどうでしょうか?
宮田:ターゲット層を広げる?
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