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2011年末頃から、企業のマーケティング部門などで「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」というキーワードが取り沙汰されるようになった。消費者のネット上における動きとリアル店舗での購買活動をシームレスに連携させようという取り組みである。一方、1957年にスーパーマーケットとして誕生したダイエーでは、2008年にネットスーパーをオープンさせ、現在ネットとリアルを繋ぐさまざまな活動を展開している。ダイエー ネット事業推進部 部長の渡辺泰章氏と、同社のO2Oへの取り組みをIT面で支えたソフトバンクテレコム パートナー営業本部 ソリューション推進統括部 O2O事業担当部長 藤平大輔氏の対談から、今後の小売業が向かうべき方向性を探る。
リアル店舗での購買データまで把握できて初めてO2Oと呼べる
──はじめにO2Oという言葉をどのように定義されているのか、お二人の考えをお聞かせください。
渡辺氏:一般的にO2Oはネットからリアルへの送客を指していると思いますが、ネットを経由して、どんな人が、いつ、どのお店に行ったかを知るだけでは、マーケティングにおける“プロモーション”の部分を行っているだけに過ぎません。その後、その人が店舗内でどんな行動を取ったのか、あるいはどんな買い物をしたのかという詳しい“購買活動”までを把握して初めてO2Oと呼べるものになると私は考えています。
藤平氏:ネットにおけるマーケティングでは、ユーザーがどのWebメディアから、どんな経路で自社サイトに辿り着き、どこをクリックしたか、あるいは資料請求は何件で、売上がどれだけ上がったかというデータを取得することができます。しかしリアル店舗に来た消費者の購買データまでは、これまでなかなか採ることができませんでした。
消費者がネットもリアルも自由に使いこなす時代になった今、次のステップでは、リアル店舗内における購買行動のデータも把握し、ネットでのマーケティングデータと融合させることで、新たなビジネスチャンスを掴むことが求められます。渡辺さんがおっしゃったように、ネットからリアルへの送客を考えるだけでは単なるプロモーション活動にしかなりません。それは本来のO2Oとは、似て非なるものだと思います。
──O2Oという言葉に大きな注目が集まっている現在の潮流を、小売業に携わられている渡辺さんはどのようにご覧になっているのでしょうか。
渡辺氏:我々にとってこれは2回目の大きなうねりで、かつごく自然な流れだと受け止めています。
1回目の大きな変化は数十年前のモータリゼーション、つまり車社会の到来です。その時に流通小売業は、生活者の行動範囲の広がりに合わせて立地を変えました。郊外に巨大なディスカウントストアを作るという戦略を採ったのです。
まさに現代も大きな環境変化の真只中にあるといえます。インターネットの社会インフラ化によって、消費者であるお客さまの情報の採り方や購買の仕方が変わってきて、ネットショップだけ、あるいはリアル店舗だけということではなくなってきている。であれば、この両者を橋渡しするスキームはあって然るべきだと思います。
スマートフォンの爆発的な普及がO2Oに拍車をかけた
──一方藤平さんは、流通小売業のIT化を支援されてきた立場ですが、今のO2Oへの流れをどのように見られていますか。
藤平氏:実はIT業界では、O2Oのような話はかなり以前から出ていました。それが一躍注目を浴びるようになったのは、iPhoneに代表されるスマートフォンの爆発的な普及が理由だと思います。最近ではテレビを見る人が減って、販促メディアとしてのテレビの効果が疑問視されています。
一方でスマートフォンがいつでも手元にあり、何かあればすぐにインターネットに接続できる環境が急速にでき上がった。そして企業側は、単にネットからリアル店舗への送客を仕掛けるだけでなく、実際に消費者が店舗に来たというエビデンス(=証拠)を採ることが重要だということに気付き始めたのだと思います。
渡辺氏:確かに私たちのネットスーパー事業でも、お客さまのスマートフォン比率がどんどん高まってきています。2011年の終わりから大きく伸び始め、スマートフォン用に最適化したサイトを立ち上げた2012年7月以降は一気に増えました。
また当初は、都市部の立地店配下のネットスーパーのほうがスマートフォン比率は高いだろうと予測していたのですが、実際には地方や郊外店配下のネットスーパーのほうが高かった。通勤に長い時間をかけられているお客さまが、その時間を使ってネットスーパーでお買い物をされているのです。そうした消費行動がごく当たり前の生活の一部になってきていると感じています。
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