- 2012/10/12 掲載
【加藤貞顕氏インタビュー】デジタルコンテンツの時代に対応したプラットフォーム「cakes(ケイクス)」の目指すもの(3/5)
定額課金型コンテンツ配信プラットフォーム「cakes」 加藤貞顕氏インタビュー
Webでメシを食っていくために
──クリック数によってクリエイターのギャラが変わってくる仕組みもcakesの大きな特徴ですが、そうなると、やはり時事性の強いものやブームになっているものに対してのクリック数が上がってくるということが予想されます。そうすると、既存のニュースサイトなどとの競争になる部分もあると思うんです。他のネット媒体とcakesとの大きな違いはどのへんにあるとお考えですか?加藤氏■いわゆる時事ニュースみたいなものは、cakesに載せるのはちょっと違うのかもなと思っています。通信社や新聞のニュースサイトでやればいい。で、「他の媒体との違い」ということとは別に、話題のものを最速で取り上げて紹介するよりは、それを「どうクリエイティブに価値を投げかけるか」に重きを置きたいんです。つまり、より編集の入ったものにしたいってことなのかな。
──「いまこれが流行っていて、こんなに盛り上がっています!」みたいなのではなく、もうちょっとしっかり論じるものにしたい、ということですね。
加藤氏■そうです、それが1つ。そして、ちゃんとお金が発生しないと成り立たないようなコンテンツを掲載したいんです。その1つの例が、例えばですが、先ほど例に挙げた伊坂幸太郎さんの新作のような大物作家の作品です。そうした、これまでWebに出てきていないコンテンツがちゃんと載る場所にしたいなと思っています。
──cakesという場が、メジャー・マイナー問わず、新作発表の場としてごく当たり前の選択肢とならないと、加藤さんの目指しているcakesにはならないわけですね。
加藤氏■それを実現させることが、本当の意味で「Webでメシを食っていく」ことになるんじゃないかなと。そこはとても大事なことだと思っています。
──メシを食うってことでいうと、既出のインタビューを拝読していて、本当にクリエイターのことを考えていらっしゃるんだなと、いたく感動してしまったのですが、そのへんが顕著に表れているのがギャランティーの算出方法ですよね。購読料の60%をクリエイターへ還元する原資としていて、それをページビューによって分配するんですよね。
加藤氏■はい、やっぱりクリエイターさんには多めに還元したいなと思ってるんですよ。で、我々はメディアとして著者に原稿を依頼して、一から原稿を書いていただくこともあるんですが、その時は、著者の方には分配原資の60%の外側、つまり弊社分の40%の部分から最低保障の原稿料をお支払いします。クリック数によって決まるギャランティーの部分、これを我々はPVシェアと呼んでいるのですが、この金額が最初の原稿料分を超えたら、支払いがそちらに切り替わります。出版界の例で言いますと、翻訳書を刊行する際によく使われるアドバンス(印税前払い金)のような仕組みですね。
あとはこれ以外に、マーケティングフィーもお支払いするシステムになっています。これは、クリエイターのブログやSNSを経由して購読に繋がった場合、それに対しての報酬をお支払いする仕組みです。これまで本を売ってきて痛感しましたが、読者の好みが細かく分かれてしまったため、「ここに情報を出しておけば間違いなく売れる」という鉄板のメディアがなくなってしまったんですね。
──クリエイターや著者自らの宣伝が1番効果もある、と。
加藤氏■はい、もうそれが1番いいんじゃないでしょうか。そして、その傾向は今後もっと強くなるでしょう。と、そうしたことを前提にしていることもあり、宣伝しやすくなるような機能も用意しました。例えば、通常は会員でなければ読むことができないわけですが、とはいえ、著者の告知ツイートにあるリンクを開くと「お金払わなければ読めません!」ってなっていたら、ちょっと冷めるじゃないですか?(笑)
なので、ツイートするときに、著者は自分のコンテンツに関して一時的にロックを外し、一定時間無料で読めるようにすることができるんです。もちろん、そこから他の記事や同連載の前回分に飛ぶと有料記事になっているわけですが、このシステムだとそれを見たファンの人も「あと○○分見られる!」とリツイートがしやすくなる。つまり、著者と読者のことを考えることが、結果的にcakesという存在を広めることにも繋がると考えています。
──こうしたcakesのキモになる仕組みは、早い段階から決まっていたと思うんですけども、実際にシステムが出来上がり、コンテンツが上がってきてから浮かんだアイデアなんかもありました?
加藤氏■先ほどの話がまさにそれですね。マーケティングフィーの仕組みを作るというのは最初から考えていました。でも、実際に著者に宣伝してもらうことを考えたとき、「これを気持ちよく呟いてもらわなければならないんだよな……」と思い至りまして。著者には率先して宣伝したくなるような仕組みを作らなければならないし、読者だって、お金を払わないと中身が見られないものをリツイートはしませんし、著者のリンクをクリックしたら「お金を払ってください」というボタンがついてたらイラっとしますよね(笑)。みんなが気持ちよくなって、結果としてcakesに加入したくなる、そうなるにはどうすればいいか? これはスタートした現在でも考え続けていることですね。
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