• 2012/10/12 掲載

【加藤貞顕氏インタビュー】デジタルコンテンツの時代に対応したプラットフォーム「cakes(ケイクス)」の目指すもの(4/5)

定額課金型コンテンツ配信プラットフォーム「cakes」 加藤貞顕氏インタビュー

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パーソナライズ機能がもたらす「対象のなきメディア」

──すでにちょっと話に出ましたが、ユーザーの特性を分析してパーソナライズする機能があるのもcakesの大きな特徴ですよね。これまでモノを買わせるサービスで利用されてきた機能を、こういう形で使われたのがすごく画期的だと思いました。

 加藤氏■閲覧履歴を解析し、その読者が好きそうな、興味を持ちそうな記事が、オススメのコンテンツとしてページ上部に表示されるようになっているんです。つまり、トップページの景色が十人十色、異なったものになります。

──例えば、従来の雑誌であれば、作り手側が対象読者を明確にすることから始まり、読者は自分の年齢や好みや社会的立場などから読む雑誌を選んでいました。でも、あらゆる媒体において前提となる「対象」を、cakesでは、究極的には決めなくてよくなりますよね? 自動的にその人に最適(と思われる)コンテンツでページが構成されるわけですから。ネット以降、あらゆるものが細分化され、パイが分散してしまったと言われますが、このシステムをもってすれば、細分化したままの状態で、しかし読者が分散することを避けられる。つまり、「対象」という概念が変わるんじゃないかと思ったんです。

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すっきりとして読みやすいデザインが特徴的
 加藤氏■最初はコンテンツの量が限られているので、僕らの作るメディア部分や、出稿してくださっているメディア関係上、20代~30代くらいの人たちがターゲットになっています。でもおっしゃるように、究極的にはターゲットとか対象というものはなくなっていくと思うんです。大量のコンテンツと人がcakesに集まれば、読者それぞれの多様な媒体が出来上がる。そのためのプラットフォームを作っているわけです。

 我々がやっているcakesというメディアの大きさを1とします。そしてそこには、さっき申し上げたような「20~30代の、スマートフォンやタブレット端末を使っている人たち」という対象が存在する。今後、他のメディアさんにもどんどん声をかけていき、その1が、2や3になるよう広げていく。その果てにあるのが、「対象のなきメディア」という究極の姿なんだと思います。

──あと、パーソナライズされたことで出来上がるトップページは、ちょっと飛躍し過ぎかもしれませんが、個人対応の「(雑誌の)特集」みたいなものとして捉えることもできると思ったんです。

 加藤氏■すごく記事が増えたあとの話ですが、ある読者がものすごく原発に興味があって、そうした記事ばかり読んでいたら、トップページが原発特集みたいな様相を呈すこともありうるでしょうね。でもcakesには、新しい出会いが生まれるような、そうした機能も盛り込んであるんです。例えば、新しいもの好きな人には、新しい話題がトップにくるようになっている。雑誌って、そうした新しいもの、未知のものと出会うきっかけになったりもする。そのへんは雑誌というメディアの良くできたところですよね。

 あと、これはまだ無い機能ですが、ゆくゆくは人が括ったものを見られるようにしたいんです。その機能があれば、ツイートをまとめられるトゥギャッターのように、好きな記事をグルーピングできますよね。そして、他の人もそれを見ることができる。それって雑誌の特集的なものになると思うんですよ。例えば、津田大介さんが著作権についてのcakes上の記事を括ったとしたら、それは1つの価値のあるコンテンツになり得るわけでしょう。

──なるほど。「対象」というのもそうですし、メディアにおける「括り」のあり方が変わってくるかもしれませんね。でも、パーソナライズするには、そして新たな市場を創るには、多様なニーズに、そして読者の「もっと」に応えることが要求され、かなりハードな面もあると思うんです。そうした貪欲なニーズにはどのように対応していくんでしょうか?

 加藤氏■とりあえずしばらくは、がんばって自前のコンテンツを作ることと、他のメディアと提携の両方を行っていきたいですね。まだまだ相談中の媒体もありますし、某社の新書レーベルやいくつかのWebメディアにも打診中です。

──既出のインタビューで、「いずれは誰でも原稿を投稿できるようオープンなプラットフォームにしていきたい」と仰っていましたが、それはcakesにおいてどのような効果をもたらすのでしょうか?

 加藤氏■みんなが作品を発表できる場にして、ゆくゆくはそこからスターが生まれたらいいな、ということですね。ニコニコ動画とかもそうじゃないですか。で、そこから現れたスターと既存のスターが共存して、ここで新作を発表していく、というのが理想像ですね。

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