定額課金型コンテンツ配信プラットフォーム「cakes」 加藤貞顕氏インタビュー
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2012年9月11日にオープンした定額課金型コンテンツ配信プラットフォーム「cakes(ケイクス)」。小説、書評、コラム、写真、人生相談、そして漫画……多様な分野のコンテンツを集めて始まったサービスは、早くも話題を集めているようだ。ベストセラーを幾つも世に送り出した編集者にして、cakesの運営会社であるピースオブケイクの社長である加藤貞顕さんに、開始直後の感触や今後の展望について伺った。
──新サービス「cakes(ケイクス)」、いよいよスタートしましたね。おめでとうございます。加藤さんのインタビュー記事や執筆者の発表など、多くの人が事前情報の段階で注目し、スタートを心待ちにしていたことと思います。まずは、加藤さんの目から見て、cakesはどんな場所になったでしょうか?
加藤貞顕氏(以下、加藤氏)■コラムもあれば対談もあり、写真もあれば小説もある……と、まずは何でもある場になりましたね(笑)。ただ、雑誌とかと比べると、インタビューや対談ものが多めかもしれません。Webではそういうものが読みやすいなと、編集の過程を通じて再認識しました。インタビューって、いろんな面白い人から伺った濃い話をまとめるのに適した形だし、特にアーカイブされていった時に新たな価値が出てくる。なので、そこは意識的に増やしていこうと考えています。
──Webの特性を活かしたコンテンツとして、インタビューなどの会話ものがあるということですね。
加藤氏■はい。もちろん普通のコラムもありますし、Q&A(人生相談)なんかもあります。たとえば、橘玲さん、津田大介さん、速水健朗さんや茂木健一郎さん、山形浩生さんのような出版界でも広く知られている人気の書き手も多数いらっしゃいますし、一方でフランスに渡ってワインを作っている仲田晃司さんといった、ぜんぜん毛色の違う方もいらっしゃいます。
あと、Webの強みを生かして、写真にも力を入れています。「美少女図鑑」と提携して、『スクールガール・コンプレックス』の青山裕企さんが、全国都道府県の女の子とデートして写真を撮るという企画がありまして。ちなみに「美少女図鑑」の社長である近藤大輔さんと僕は同郷(新潟)で、高校の同級生なのです。そんなこともあり、新潟が第1回目なんですけど、写っているのが地元で有名なデートコースなんですね。新潟で多感な時期を過ごした身としてはもう、すべてのカットが涙なくしては見られないという……。
──それは第1回にふさわしい(笑)。
加藤氏■他にも、漫画では能町みね子さんにご参加いただきますし、大槻ケンジさんの新作小説もあります。とにかくWebでできることは全部やってやろうと思っています。あと、意識手にやっているのですが、まだ本などを出していない、ネットで人気のクリエイターの方々にもお声がけしています。
──実にバラエティ豊かですね。加藤さんは以前のインタビューで、「新しい市場を創るデジタルコンテンツは新しい発想のもと作られなければいけない」と仰っていました。「紙か電子か?」といった二項対立から脱却し、デジタルならではのコンテンツの在り様を考えるべきである、と。人選や内容において、基準のようなものはあったんでしょうか?
加藤氏■cakesにおけるメディアの部分のターゲットは、20~40代の、スマートフォンやタブレット端末なんかを使っている人たちなので、そういう人たちに何を届けるべきなのかをまず考えました。今は大変な時代だから、それを明るく楽しくできないかなというのもありますね。だから、そのための視点を提供してくれそうな人たちにお願いしたつもりです。
そしてもう1つ。これは仕組みとも関係しているわけですけど、エッジが立ったものがいろいろあったらいいなと思うのです。なぜかと言うと、cakesは読者の好みに応じて記事がソーティングされる仕組みになっているので、とんがったものでもそれが好きな読者に届きやすくなっているんです。
──パーソナライズされるわけですよね。その人の好みや傾向によって、トップページに出てくるコンテンツも変わってくる。それから、特筆すべきはデザインです。ノイズがなく、たいへんすっきりしていてリーダブルですね。
加藤氏■はい。通常のWebサイトは広告ありきのビジネスモデルで、そうなると、いろんなところにリンクを貼ったり、ページビューを稼ぐために、1つの記事を何ページにも分割する必要が出てくる。CMの入ったテレビみたいなものですね。それはそれで完成されたかたちですし、いいと思うのですけど、「作家が渾身の最新作を発表できる場にしたい」というcakesの理想像を突き詰めていったら、自然とこういうデザインに落ち着きました。そのために、広告に依存しない、課金制というスタイルを選んだという面もあります。
例えば、ここに伊坂幸太郎さんといった人気作家の新作が載るような、そういう場にするにはどうしたらいいか? そうした逆からの発想で作っているんです。そのためには、まず読者が読むことに集中できなくてはいけないですよね。デザインもそのために工夫しています。
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