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  • 2017/08/24 掲載

守屋淳氏に聞く、『戦争論』から読み解く「勝てる人の理由」

『もうひとつの戦略教科書「戦争論」』著者

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ナポレオンが猛威をふるった時代に生きた、プロイセンの軍人・クラウゼヴィッツ。戦争の勝ち方ではなく、戦争とは何かに主眼を置く『戦争論』を残し、その考え方はレーニンや毛沢東、そしてアメリカ軍など、世界各国の軍事に影響を与えたという。『もうひとつの戦略教科書「戦争論」』(中公新書ラクレ)は、中国古典を専門に研究している守屋 淳氏が『戦争論』のエッセンスを抽出し、まとめたものだ。守屋氏はどのように『戦争論』を読み解いたのか、話を聞いた。

『孫子』から『戦争論』を読む

――まずは本書を書かれたきっかけをお聞かせください。守屋さんは『孫子』などの中国古典を読み解く本を多く執筆されていますが、クラウゼヴィッツ(1780~1831)の『戦争論』を扱おうと思った理由はなんでしょうか?

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『もうひとつの戦略教科書「戦争論」』
守屋淳氏(以下、守屋氏):『孫子』を深く理解するうえで、他の書籍と比較することを考えていました。そこで、クラウゼヴィッツの名高い『戦争論』を選んだのです。なぜなら、今もヨーロッパで『戦争論』は非常に重んじられていて、ビジネスマンなどが読んでいるんですね。つまり、アジアにおける『孫子』のような位置づけにある本と言えるからです。

 しかし、位置づけとしては近くても、実際読んでみると、『戦争論』は『孫子』とは正反対のことを多く言っていることがわかります。どちらも戦争について本質的に思考をしているのに、なぜ異なるのか探っていくと、それぞれの特質も見えてきました。そんな研究をしているうちに、『戦争論』の本を書きませんかというお話をいただいたわけです。

――戦争について書いているのは、クラウゼヴィッツだけではないと思います。そのなかでクラウゼヴィッツがヨーロッパの代表的な考え方になっていったのはどうしてなのでしょうか?

守屋氏:実は戦争そのものの本質について、戦争を遂行する人間が書いた本は、そう多くないのです。あくまで戦争の勝ち方について書かれているものがほとんどなんですよ。その数少ない中で、もっとも深く思考したクラウゼヴィッツの本がヨーロッパでは受け入れられていったということだと思います。

戦争の「本質」とは何か?

――本書では、「争いの本質」からはじまり「戦争の本質」について解説なさっていますよね。このような抽象的なことから戦争を論じていくことへの重要性はどう考えてらっしゃいますか?

守屋氏:『戦争論』が「戦争の本質」について考えているのは、クラウゼヴィッツの目の前で戦争のあり方が変わったからです。時代の転換期に彼は生きたわけですね。それまでは君主が傭兵を使って行うような戦争が行われていました。でも、クラウゼヴィッツの生きた時代は、フランス革命やナポレオンの台頭などによって国民と国家全体が関わるような、性質の異なる戦争に移り変わろうとする時期です。なぜ戦争というものがここまで変わってしまったのか、その底流に流れるものをクラウゼヴィッツは考えざるをえなかったんでしょうね。

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守屋淳氏
――本質を考えることは、現代の読者にとってどういう意義があるのでしょうか?

守屋氏:たとえば、そもそも「競争とは何か」や「競争で勝つことってどういうことか」ということは、学校では教えませんよね。でもわれわれは現実に競争の場に放り出される。そこでよく生きるためには、根本的なところを知っておいた方がいいと思います。とくに変化の激しい時代は、物事の本質を考えることが大事になってくると思います。

 実際、『戦争論』が示した通りにクラウゼヴィッツ以後の戦争は進んでいきました。本質を知ることは、これから先どうなっていくのかを考えるうえで重要な要素になるわけですね。

現代との共通点と相違点

――『戦争論』が現代において特に有効な部分はなんでしょうか?

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