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  • 2023/05/10 掲載

インバウンドの次の立役者は「東南アジア」、訪日観光客爆増の裏にある“ある法則”とは

連載:「コロナ後のインバウンドの行方」

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コロナで半鎖国状態だったのがうそのように、訪日外国人(インバウンド)が街に戻ってきた。韓国、台湾、香港などに加え、欧米豪など、遠方からの客も続々と訪日している。また、最近、よく見かけるのが中国語でも韓国語でもない言語を話すアジア系の人々である。彼らはいったい何者なのか。入国規制緩和で中国からの客が戻ってくれば、2023年3月に政府が提示した「2025年に訪日外国人旅行者数を2019年の水準(3188万人)越えにする」という目標は達成可能と見られる。むしろ心配なのは、人手不足による供給制約である。インバウンドの現況と、IT活用による人手不足解消の試みを分析する。
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図表1:2023年1~3月の国・地域別訪日外客数とコロナ前(2019年1~3月)に対する伸び率
(出典:日本政府観光局(JNTO)資料より筆者作成)

なぜインバウンドは順調に回復しているのか

 2022年10月、コロナ水際対策が本格的に緩和されて以降、訪日外国人(インバウンド)が想定以上のスピードで戻ってきた。2023年1~3月の訪日客数は479万人と、コロナ前(2019年1~3月)の約6割の水準に達している。コロナ前に訪日外客の約3割を占め、客数・消費額の両面で主役だった中国人が、コロナ関連の規制で7%程度しか戻っていないのにこの数字である。

 インバウンドをけん引しているのは韓国、台湾、香港である(図表1)。この3カ国はコロナ前の約7~8割の水準に回復しているが、欧米豪など遠方からの客もおおむね順調に回復している。背景にあるのが、1. 国際観光市場がほぼコロナ前に戻りつつあること、2. 円安効果も加わった「安いニッポン」のお得感、3. 旅行先としての日本の評価が非常に高いこと、である。

 国連世界観光機関(UNWTO)によると、2022年半ばころから国際観光客到着数はコロナ水際対策を緩和した地域を中心に急速に回復した。2022年12月時点で欧州がコロナ前(2019年12月)比で約9割、米国が約8割の水準である。一方、ガードが堅い日中が存在するアジア太平洋は約4割と出遅れている。慎重な日本人から見ると異世界だが、多くの国々では海外旅行は当たり前の行為である。訪日旅行を待ちかねていた人々が、解禁とともに押し寄せている。


「旅行・観光開発ランキング」で世界1位の日本

 訪日旅行にはお得感もある。昨今、日本でも物価が上昇し問題になっているが、ほかの多くの国に比べれば上昇は緩やかである。たとえば、旧ソ連のエストニア。コロナ前に筆者が訪れた際は北欧や英独仏などに比べて圧倒的に物価が安かったが、昨年秋、筆者の知人が同地に行ったところ、普通のレストランでカレーを食べたら約5,000円だったそうである。旧ソ連でこの状況。円安の影響もあるが、飲食費1つとっても日本は高品質・リーズナブルである。

 物価を抜きにしても、日本は旅行先としての評価も非常に高い。世界経済フォーラム(WEF)が2022年5月に発表した「旅行・観光開発ランキング2021年版」によると、日本は米国、スペイン、フランスといった大所を押さえ、世界1位だった(図表2)。高く評価されたのは自然資源、文化資源など「旅行したい理由」に富んでいること、航空輸送などインフラ面の充実が大きい。

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図表2:旅行・観光開発ランキング(2021年)
(出典:世界経済フォーラム(WEF)「Travel & Tourism Development Index 2021」より筆者作成)

 日本は観光、グルメ、温泉、買い物、ゴルフ・スキーなど多様なアクティビティを楽しめる国である。しかも、ストライキやデモによる交通機関の混乱、銃犯罪ともほぼ無縁。ここにお得感が加われば、インバウンドが解禁と同時に我先に訪日する理由もわかるというものである。

 このように、中国人を除いて順調に回復しているインバウンドだが、韓国・台湾・香港といった常連組を上回る回復ぶりを見せている国々がある。 【次ページ】常連組を上回る回復ぶりを見せている国々と、その共通点とは?
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