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新型コロナや相次ぐ自然災害で、レジャー・観光分野は崖っぷちの状況に陥っている。特に集客施設では客足が遠のいたり、休業を強いられたりと業績への影響は多大だ。しかし多くの行政・企業は効果的な対応策を見いだせていない。こうした中で、新たな集客方法として期待されているのがメタバースだ。バーチャル渋谷やバーチャル東京タワーなど、集客に成功している例もすでに散見される。レジャー・観光分野は、どのようにしてリアルとバーチャルを融合することができるのか。そしてメタバースは救世主となり得るのか。代表的な5つの事例を紹介しながら、解説する。
「これまでのメタバース」と「Web3時代のメタバース」
メタバース(3次元仮想空間)は、名称こそ異なっていたが、以前から同様のサービスは存在している。2000年代に人気を博した「ウルティマ オンライン」(現在はサービス終了)といったオンラインゲームの世界観がそれに合致し、2003年に公開された米Linden Lab社の「
Second Life」はメタバースの商業利用の先駆である。
VR開発が活発になった2016年ごろにも話題となった。当時はメタバースという言葉はまだ使われていなかったが、VR技術がもたらす未来の世界観として、現在のメタバースと同様の概念が提示された。この世界観はオンライン社会が到達する1つの最終形態とも言える。
国内で3次元仮想空間が一般的にメタバースと呼ばれるようになったのは、2010年代後半以降。2021年10月29日にはフェイスブックがメタバースへ本格参入するため、メタ・プラットフォームズに社名を変更したが、これが世界的な話題となり、改めてメタバースが注目されるようになった。今、
Web3.0時代の到来によりメタバースの可能性が拡大していると言える。
Web3.0におけるメタバースがそれまでと大きく異なるのは、
NFTの導入によってメタバース内によりリアルな経済圏ができることである。現実的には法的環境整備やセキュリティ対策が追い付いていない上、NFTと密接な関係にある仮想通貨の一部レートが暴落するなど、懸念点は多い。しかしそのような状況には関せず、猛烈な勢いで世界中の投資と人材が流れ込んでおり、いやおうなしにWeb3.0時代にかじが切られている。
国内でもすでにさまざまな分野でメタバースが開発されている。レジャー・観光分野においてもメタバースによる新たな表現やサービスが期待できるが、今のところそれは切実な問題とは言えないだろう。しかし、Web3.0はレジャー施設にとって無関係なものではなく、むしろシティツーリズムやレジャー施設・ミュージアムなど、リアルの集客が抱えるさまざまなリスクに対して、その解決策・支援策の1つになる可能性がある。
全レジャー施設に大チャンス!メタバースが与える可能性
近年、レジャー施設やミュージアムなどの集客施設はさまざまなリスクにさらされている。たとえば今回の新型コロナによる影響が挙げられるが、感染症の拡大はこれからも起こり得ると専門家は指摘する。また、豪雨や猛暑、豪雪などの異常気象も常態化し、被害も大きくなっており、それによって休業を余儀なくされたり、客足が遠のいたりもしている。
このような外的リスクへの対応策は料金変動制の導入くらいで、なかなか効果的な策が見られない。期待が高まるインバウンドも、コロナ禍や、東アジア圏の地政学的な危機によって、一気に落ち込み、どれほど回復するかも見通せない状況だ。
しかしメタバース上にもう1つの施設があれば、外的リスクに見舞われて集客できなくても、メタバースの施設で利用者を集客し、収益化していくことができる。
オンラインでのサービスは距離や時間を問わないため、遠方の人や多忙で時間が取れない人でも、いつでもどこでも利用できる。多言語対応すれば海外からの利用も見込め、客層の拡大を図ることも可能だ。さらに、NFTを通してつながったファンと、サービスの価値創出に向けた意見交換をするなど、ファンとの新たなつながりの可能性も言われている。
もちろん、現時点でWeb3.0にさまざまなリスクがあることは事実であり、うまく収益化できるとも限らない。しかしリアルにはない演出やサービスが集客を促進すると考えられ、大きな可能性を秘めていることは間違いない。
またNFTマーケットは希少性のあるものに価値があり、高い価格がついている。均一的なクオリティーで良質だが、どこにでもあるものではなく、多少変でもほかにはない個性的なものの方が評価される。レジャー施設に置き換えれば、大規模で誰でも知っているレジャー施設だけにチャンスがあるわけでは決してない。むしろ小規模であまり知られていない施設や少し風変わりな施設、老朽化した施設の方にもチャンスがある。
【次ページ】メタバース活用の事例5選
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