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  • 2024/01/05 掲載

アドベンチャーツーリズムが観光業を救う3つの理由、日本がとるべき戦略とは

連載:「コロナ後のインバウンドの行方」

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訪日外国人(インバウンド)が順調に回復している。ただ、京都のようにオーバーツーリズムに悩む地域もあれば、閑古鳥が鳴いている地域もあり、回復ぶりはまだら模様である。そこで注目されるのが地方でも集客が期待でき、オーバーツーリズム対策にもなる「アドベンチャーツーリズム」である。バンジージャンプ、トレッキング、自然観察など幅広いアクティビティで構成されるアドベンチャーツーリズムは経済効果、成長性といった点でも有望株である。しかし、スイス、ニュージーランドのような先進地域に比べ、日本の取り組みはまだまだである。日本がアドベンチャーツーリズムを軌道に乗せるには、何をすればいいのだろうか。
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図表1:1965年以降の訪日外国人旅行者数推移
(出典:日本政府観光局(JNTO)資料より筆者作成)

京都はカオスだが地方は閑古鳥?まだら模様のインバウンド

 訪日外国人(インバウンド)が順調に回復している(図表1)。インバウンド急増に伴ってオーバーツーリズムも顕在化しているが、日本中どこも満員御礼かというとそうでもない。東京、大阪、京都、富士山など有名観光地は大賑(にぎ)わいだが、インバウンドをほぼ見かけない地域もある。

 図表2は外国人延べ宿泊数の上位5都道府県と下位5県(2023年9月)である。最下位の島根県の宿泊数は東京都の0.1%と、島根県の人口が東京都の5%であることを勘案しても少ない。同県は回復の度合いも鈍く、宿泊数は19年比で大幅マイナスである。

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図表2:外国人延べ宿泊数の上位5都道府県と下位5県(2023年9月)
(出典:国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査 2023年9月・第2次速報、2023年10月・第1次速報」より筆者作成)

 有名観光地にインバウンドが押し寄せ、地方で閑古鳥が鳴いている背景には、コロナ禍で国際線が大幅に減便され、地方空港ではまだ十分に復便していないという事情もある。

 だが、根本的な問題は、多くのインバウンドの訪日目的が「有名観光地をめぐること」だという点にある。駆け足で有名観光地をめぐって帰っていくので、京都は地元住民が路線バスにも乗れないような状況なのに、地方は閑散という事態になるのである。

 そこで注目されるのが、体験型の旅行・観光であるアドベンチャーツーリズムである。地方でも集客が期待でき、インバウンドの分散化につながるアドベンチャーツーリズムとは何だろうか。

アドベンチャーツーリズムとは、観光業を救う3つの理由

 アドベンチャーツーリズムとは、「アクティビティ・自然・文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行・観光」を指す(国際的なアドベンチャーツーリズムの業界団体「Adventure Travel Trade Association(ATTA)」による)。バンジージャンプやラフティングからウオーキングや自然観察、座禅まで多様なアクティビティが含まれる。

 なぜ、インバウンドにアドベンチャーツーリズムなのだろうか。

 まず1点目に、地方に旅行客を分散させるので、オーバーツーリズム解消が狙える。日本のアドベンチャーツーリズムは、まだ西欧ほど盛んではないが、知床半島のトレッキング、飛騨高山白川郷の散策、山形羽黒山の山伏修行体験、永平寺の座禅体験などは欧米の旅慣れた旅行者にはすでに人気である。

 2点目に、アドベンチャーツーリズムは経済効果が高く、地域経済を潤してくれる。前述のATTAによれば、地域経済が1万ドルの経済効果を得るには、クルーズ客では100人必要なのに対して、1泊2日のツアー客では9人、アドベンチャーツーリズム客ではわずか4人で事足りるという。

 クルーズ客の経済効果が小さいのは、午前中に寄港地に上陸して夕方には出航するパターンが多いためである。宿泊は船内、飲食も上陸地では昼食だけのケースが多いので、地域に落とす金は少ない。

 一方、アドベンチャーツーリズムを楽しむ層は、滞在期間が平均約2週間と長く、教育水準の高い富裕層が多いので、宿泊施設や食事にも出費を惜しまない人が多い。アドベンチャーツーリズム旅行者の平均消費額は、インバウンド平均消費額の2倍以上という報告もある(国土交通省観光庁「地域の自然体験型観光コンテンツ充実に向けたナレッジ集」による)。

 最後に、アドベンチャーツーリズムは成長市場でもある。旅慣れた欧米客、特に欧州の旅行者は、すでに半数が体験重視型と見られている。今は駆け足観光にいそしんでいるアジアの旅行者も、旅行経験を積むにつれ、観光型から体験型へ移行するだろう。 【次ページ】日本がアドベンチャーツーリズムを軌道に乗せるためには
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