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- 2019/11/05 掲載
「リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)」とは何か?そもそもなぜ構築すべきなのか
大野博堂の金融最前線(5)
現行RAFは地域金融機関の実情に合っていない
多くの金融機関がRAF構築に際しての拠り所を、FSBなど海外当局が発信する情報に依存している。ただし、そもそもFSBは欧米の大手金融機関を念頭にRAFによるコントロール手法を定義していたはずである。それもあり、我が国の地域金融機関とりわけ国内基準行に適用しにくいのは当たり前。ましてや信用金庫にRAF構築を促すことは現実的ではない。金融庁が期待するRAF構築の本来の目的の一つに、いわゆるリスクベースド・アプローチ(RBA)がある。さまざまなリスクを点検しつつ重要性の高いリスクを特定・評価し適切にコントロールする、といったものだ。金融庁はこれらを建物でいう「一階部分」としたうえで、「二階部分」に該当する「顧客本位の業務運営態勢の構築」を要請している。
ところが、多くの金融機関が採用する現行RAFのフレームは自行庫のリスクコントロールに過度のウェイトが置かれている。すなわち、顧客に与える影響の視点が詳細には定義されておらず、自行庫が負うリスク中心の検討スコープとなっているのだ。このままでは金融庁が期待するような顧客本位の経営基盤確立まで至ることは困難だ。
すでに金融庁では今夏にもストレステストを実施し、足元の収益指標を基準とする早期警戒制度を改め、将来収益に着目する仕組みに変更する方針だ。金融庁では金融機関ごとに収益シミュレーションを実施できる環境を用意しているとされ、結果を金融機関に突きつけるだけではなく、個々の金融機関におけるシミュレーション作業を金融機関内部で実装、検証することを促すことになる見通しだ。
これ自体、RAF対応の一部を構成する作業と位置付けられることから、金融庁はRAFそのものを推進するというよりも、RAFに準拠した何らかの形での内部管理機能の高度化を企図しているのだろう。
自行庫のRAFのリスクコントロール対象は他公庫と同じで良い?
この問いへの解としては「丸写しでは意味がないが、リスクコントロールのフレームワークは活用できますよ。」ということになる。RAFに関して言えば、地政学的因子が一つ異なるだけでも他金融機関とのリスク許容度に影響を与え、そのコントロールの手法も変えざるを得ない。
つまり、個々にデザインしない限り「形ばかりのRAF構築」にとどまってしまうのだ。金融機関を取り巻くリスクは多様化しており、事業構造がわずかに異なるだけでもリスク許容度の偏差は拡大する。他者事例を導入しても有効に使える部分は限定的であることを意識すべきである。
【次ページ】自行庫のリスクコントロールにとどまっていないだろうか
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