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都市部も地方も、今や金融機関のデジタル武装はとどまることを知らない。しかし、金融機関のデジタル化は、主に自社の営業費用や原価を下げることが目的で進められてきたものが多く、必ずしも顧客の利便性を高めることだけを目指したわけではない。大手行のデジタル戦略に追随せざるを得ない立場の地方の中小金融機関の一部では、「顧客離反」を招く可能性もささやかれるほどだ。それでは、真の地域課題に寄り添うために、地域の金融機関には何が求められているのだろうか。
「どの地域でも共通する」テーマへの取り組みが目立つ
地域を取り巻く環境は、高齢化の進展や都市部への人口流出などにより激変しており、地域ごとに異なる利用者ニーズに適合した金融サービスを提供したり業務をデザインしたりするためのハードルはひときわ高いものとなっている。
地域金融機関に対して金融庁は、地域の顧客利便性を向上するのみならず、「地域経済の活性化、少子高齢化社会への対応、デジタル社会の推進などといった社会的課題の解決」をも要請している。いわゆるコンサルティング機能の発揮である。
たとえば地銀の地方創生のケースでは、全国地方銀行協会が、「地方創生事例集」として各地銀の取り組み事例を紹介している。また、筆者らも同協会が開催する地方創生をミッションとする地方銀行職員向けの研修講座でたびたび講師を要請されるなど、喫緊のテーマとして認識されている様子がうかがえるところだ。
実際に、図のように自治体などから地方創生に関して相談を受けている地銀の数も増加傾向を示していることからも、自治体が「地方創生への担い手」として地域金融機関に寄せる期待は高まるばかりだ。
取り組み対象としても、以下の図のように、2023年において伸長したもので際立つのは人材マッチングや脱炭素化支援など、「どの地域でも適用可能なテーマ」が多いようだ。すなわち、本来自治体が頭を悩ませている「その地域に特に存在する」特定課題への対処には至っていない可能性があるのだ。
また、地域におけるDX支援を目指す動きはあるものの、地元ITベンダーらとの連携により、実質的には当該ベンダーが主体となって地元企業のIT化を支援するにとどまる例もみられるのが実体だ。
もちろん、地域金融機関の中には地域課題への対応を目指し、傘下のシンクタンクによる自治体の地方版総合戦略や最上位計画となる総合計画の策定を支援する例も存在する。
ただし、実際に策定された計画体系をみると、前期計画の焼き直しにとどまるものや、表紙や表現上の「見栄え」を特徴的なものに衣替えしただけにみえるものも少なくない。
【次ページ】デジタル田園都市国家構想と自治体に求められる「新・総合戦略」
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