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- 2023/06/21 掲載
ついに公表、経済安全保障への「金融機関対応」とは? 具体的な「対象銀行」
大野博堂の金融最前線(63)
「特定社会基盤事業」とは何か
「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(経済安全保障推進法)」の一部が施行された。金融分野に係る特定重要設備の内容、特定社会基盤事業者の指定基準について解説していこう。「特定社会基盤事業」とは金融機関がインフラ事業者として実施する政府が指定する重要業務を対象に、当該業務に関するデータの処理(当該処理が停止した場合に当該業務に大きな支障が生ずるおそれがあるものに限定)の全部又は一部を行う情報システムを指して「特定社会基盤事業」と定義している。
すなわち、「業務そのもの」ではなく、あくまで法の趣旨は「当該業務を実施するシステム」が対象であることに注意が必要だ。ただし、金融機関としてのすべての業務が該当するのではなく、あくまで特定社会基盤役務の提供を行うために不可欠なものに限定している。
つまり、「金融機関で導入している情報システム基盤であればすべてが法の対象となる」わけではない。では、実際に内閣府令で指定された各業態の対象業務(というより、対象業務の基盤となる情報システム、というのが正しい)をみてみよう。
銀行業で指定された「4つのシステム」とは?
ここでは筆者の解釈でわかりやすく表現することを念頭に解説する。銀行業では以下の4つの情報システムが指定された。- (1)預金受入業務を支える情報システム
- (2)資金貸付業務を支える情報システム
- (3)手形割引業務を支える情報システム
- (4)為替取引業務を支える情報システム
法令上は(3)は(2)と併せて列挙されているが、便宜上本稿では峻別して定義した。なお、信用金庫についても同様となっている。
その他、移動体通信事業者やフィンテックベンチャーなどの参入が相次ぐ資金移動業については、「資金移動業務に係る業務」を支える情報システムが対象となった。今後、資金移動業についても別途定める基準に該当する企業は、内閣府令に基づく個別の審査対象となることがほぼ決定したのだ。
現在でも登録事業者として厳しい金融庁検査に耐えている資金移動業者には、さらなる高いハードルが課せられることになったわけだ。
たとえば、外国企業が開発したAIツールやソフトウェアなどを対象システムなどに用いていた場合、政府の審査では開発者(社)の国籍が問われることから、これまでにはないサプライチェーンの厳格な管理が要請される。
なお保険業では「保険金の支払いまたは損害の填補に係る業務」を支える情報システムが対象となることは既報のとおりであった。 【次ページ】経済安全保障の「対象銀行」とは?
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