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  • 2022/05/31 掲載

金融庁が社外役員や内部監査部門に目を光らせる理由、その意図は何か?

大野博堂の金融最前線(49)

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金融機関への検査・監督に際し、「お飾り」や「上がりポスト」として認識される現状にあるのが、社外役員や内部監査部門だ。当時者も「下手なことを指摘できない」といった腰の引けた対応に終始しがちだが、金融庁はこうした風潮を抜本的に変革をしようとしている。金融庁の意図や期待、両部門に求められる機能について解説する。
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金融庁は社外役員や内部監査部門に何を期待しているのか?
(出典:Getty Images)

社外役員や内部監査部門は「ご意見番」を実現しているか

 「社外役員」の機能や在り方については、業態を問わず常に議論の対象とされてきた。形ばかりの配置にとどまっていることで、実効性が低いのではないかといった点が指摘の大半を占めているものと思われる。

 社外役員の機能として客観的に求められるのは、経営戦略そのものの「ご意見番」であり、経営トップに対するけん制機能である。

 したがって、「金融機関における意思決定にいかに関与しているか」「具体的な意見を述べているかどうか」「当該意見は経営戦略や方針にどのように反映されているか」といったことが確認される。加えて、金融機関内部における合理化余地を探ることで、経営効率の改善に向けた方向付けに積極的に関与することも求められる。

 今後の検査に際しては、こうした点を中心に具体的な考え方の説明を要請されることを意識せざるを得ないだろう。

 金融庁では、従来より検査を通じて役員会や経営会議といった意思決定の場での社外取締役、監査役の発言内容を注視している。場合によっては、議事の模様を収めたICレコーダーを直接聞くことで発言内容を確認してもいる。

 その際、経営トップが独断専行的な裁可をしていないか、けん制機能が働いているかどうかといった点のほか、そもそもの「発言の中身や量」に注目しているようだ。つまり金融庁は、金融機関としての対顧客戦略や今後の融資戦略などを中心に、社外役員の見解自体を知ろうとしているのだ。

 社外役員としては、これまで以上に当局からのプレッシャーを意識せざるを得ないだろうし、自身が認識する自行庫内の問題意識そのものも確認対象とされることだろう。

 経営陣の一角を占める立場として、社外役員も他行庫との競争において優位に立つためのアイデアを客観的な第三者目線で提示せねばならない。

 たとえば、役員会や経営会議で付議される今後の営業戦略や融資スタンスについて、他公庫と同様もしくは競争上の優位性に乏しいと思われる方針や方向性」が示されたとしよう。その場合、社外役員は「競争環境における有意性確保に向けていかなる差別化戦略をどの営業プロセスに組み込んでいるか」といった点を指摘することが肝要だ。

 検査に際しては、社外役員に対して直接に、日頃の取組みや経営そのものへの働きかけ方の実態についてヒアリングが実施されることが想定されるので、注意すべきである。

重要性を増す内部監査部門の機能

 内部監査部門としては、営業店における融資態度やその特異な傾向を探ることで、特定顧客への過度な依存の有無を確認する必要がある。とりわけ、コンダクトリスク(顧客保護や市場の健全性、有効な競争などへ悪影響がある行為がなされるリスク)への対応が喫緊の課題とされる昨今、実効性の高い内部監査手続きが金融機関に問われており、より厳しい目線で評価が加えられることだろう。

 コンダクトリスクを念頭に置いた場合、書類の改ざんリスクなどへの対応が各金融機関共通の課題ともなっている。

 そこで、融資残高の多い顧客や急激に融資残高に増加傾向を示す業態などを特定し、仮説検証型アプローチによるチェックを行うことが有効だ。

 かつて話題となった金融機関での融資関連書類の改ざんや、不動産担保ローンにおける顧客の預金残高改ざんといったように、営業事務プロセスにおける不正可能領域はほぼ特定することが可能だ。そのため、あらかじめターゲットを絞り込んだ上での監査が効果的といえる。

 金融庁では、内部監査における手続きそのものについて、内部監査マニュアルや手順の類を徴求した上で、実際のチェックの観点を確認することを目的に、具体的なチェックリストの有無を確認している。

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金融庁が着目している点はどこか?
(出典:Getty Images)

【次ページ】内部監査マニュアルは他公庫の知恵を活用することも有効
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