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  • 2021/04/13 掲載

「金融サービス仲介業」の考え方、有力スタートアップらが“埋込型金融”を求めるワケ

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現在、決済法制の改正において「新仲介業」(金融サービス仲介業)の新設が注目されている。これは登録を受けることで、銀行・証券・保険のすべての分野での仲介が可能になるというもの。これにより、より利便性の高い金融仲介サービスが実現される。この新仲介業や、2021年のトレンドでもある「埋込型金融」についてFinTech協会の会長でありナッジの代表取締役である沖田 貴史氏、FOLIOの代表取締役CEO 甲斐真一郎氏、クラウドリアルティの代表取締役 鬼頭 武嗣氏、GMOあおぞらネット銀行 執行役員 小野沢 宏晋氏、Finatextホールディングスの代表取締役CEO 林 良太氏が語った。

フリーライター 吉澤亨史

フリーライター 吉澤亨史

元自動車整備士。整備工場やガソリンスタンド所長などを経て、1996年にフリーランスライターとして独立。以後、雑誌やWebを中心に執筆活動を行う。パソコン、周辺機器、ソフトウェア、携帯電話、セキュリティ、エンタープライズ系など幅広い分野に対応。

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有力スタートアップらは「金融サービス仲介業」をどう見るのか
(出典: FINOLAB CHANNEL 4F2021)

※本記事は、2021年2月のFINOLAB主催イベント「4F 2021」での講演内容をもとに再構成したものです。

B向けとC向けでサービスに違いや共通点はあるのか

 金融業界においては、金融以外のサービスを提供する事業者が、金融サービスを既存サービスに組み込んで提供する「エンベデッドファイナンス(埋込型金融)」やあらゆる人々に金融サービスを提供することを目指す「フィナンシャルインクルージョン(金融包摂)」といった異業種のサービスにアプリで連携する動きが活発になっている。さらに「新仲介業」の新設により、この動きは加速すると見られている。

 このような新たな金融サービスの多くは、スマートフォンなどのアプリを通じて提供されるため、その操作性、つまりUXが重要になると考えられる。そこで論じられるのは、サービスの対象となるのは企業(B)なのか個人(C)なのかである。議論の冒頭、ナッジの代表取締役である沖田 貴史氏が、FOLIOの代表取締役CEOである甲斐 真一郎氏にB向けとC向けの違いや共通点について聞いた。

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モデレータを務めたナッジの代表取締役である沖田貴史氏
(出典: FINOLAB CHANNEL 4F2021)

 甲斐氏は、BtoCもBtoBもエンドユーザーにサービスを届ける点は同じなので、共通点は多いとした。しかし、BtoCとBtoBでは、情報遮断が必要であるなど営業やマーケティングの手法はまったく異なり、使う筋肉もまったく違うとした。

 Finatextホールディングスの代表取締役CEOである林 良太氏は、自社でもBtoBを志向していたが、自分たちが運営していないものをお客さまに提供するのはどうかという意識が根本にあり、なかなか踏み切れずにいるという。ただ、日本でのBtoBは中規模の企業が中心の市場であり、ユーザーもチャネルに対するロイヤリティが高く、ポイントも細分化されているのでニーズは高いとした。

 チャレンジャーバンクであり、ネオバンクのプラットフォーマーでもあるGMOあおぞらネット銀行 執行役員 企画・事業開発グループ長 小野沢 宏晋氏は、「CとB」の顧客両方にプラットフォームを提供し、フィードバックを経て改善しているための「エコシステム」が重要であるとした。

「私たちはB向けに特化していますが、一方でC向けのサービスを意識することで、初めてマネタイズされるのが現実です。Bに特化したビジネスは頭も筋肉も使い方が違うので難しい。BaaS型のビジネスを立ち上げることは、B向けとC向けのビジネスをバランス良く推進しながら新しいビジネスを立ち上げていくことと同じで、とても難しい」と小野沢氏は言う。

 クラウドリアルティの代表取締役である鬼頭 武嗣氏もまったく同じ意見であるとした。ユーザーニーズを理解した上で、UXを意識しながらSaaSやBaaSに落とし込んでいく重要性を痛感しているという。一方でスケーラビリティも必要である点で、両サイドにCがいるPtoP(Peer to Peer)型のビジネスは相当なパワーが必要だとした。

 
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クラウドリアルティの代表取締役である鬼頭武嗣氏
(出典: FINOLAB CHANNEL 4F2021)

埋込型金融は何を解決するのか

 フィンテックでは特に、イノベーターやアーリーアダプターが最初のユーザーとして存在した。一方で、エンベデッドファイナンス(埋込型金融)やフィナンシャルインクルージョン(金融包摂)といった、よりマスに向けた話も出てきている。

 林氏は、「尖ったクールな金融サービスはマスにリーチするのは難しい」と指摘した。これは保険と似ている。保険の場合、便益を得るのは何かしらのダメージを受けたときなので、サービスが減点法で評価されてしまう。そうすると、できることはアプリのスペックや画面、使い勝手を良くしていくくらいしかないとした。

 ただし、たとえアプリだとしても、改善の余地があるのはいいことであると小野沢氏は言う。金融サービスの普及に“秘伝のレシピ”があるわけではないので、課題を1個づつつぶしていくしかない。「非常に地道な作業である」と林氏。沖田氏も、「救世主もいないし、銀の弾丸もない」と同意した。

 小野沢は、「そういった問題を解決するのが、おそらくエンベデッドファイナンスなのではないか」と指摘した。目指すところは、「UX」「CX」の中に金融機能が入り、ストレスなくコンバージョンされる世界であるためだ。

 
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GMOあおぞらネット銀行の企画・事業開発グループ長であり執行役員である小野沢宏晋氏
(出典: FINOLAB CHANNEL 4F2021)

 「一社だけで孤軍奮闘するよりは、競合がたくさん生まれてきた方が、市場が開ける」と語った沖田氏は、ECが普及したのは最近であり、2020年が今までで一番の伸び率であったと指摘。「新たなサービスに関心がない“動かない人”を取り込む答えが埋込型金融と考えている」とした。

「金融はエネブラーとして黒子になるが、そこで支援するのは金融機関だけとは限りません。その結果、普通の商取引に金融が埋め込まれると思います」(沖田氏)。

 甲斐氏はFOLIOで「テーマ投資」や「ワンコイン投資」を始められるようにし、“動かない人を動かした”事例を持つ。しかしそのFOLIOも、ある程度のユーザーを捕まえるまではかなり困難な道を歩んだという。新しいサービスを提供する前には入念な調査をしインタビューやレビュー、海外の成功事例なども参考にしたにもかかわらず、サービスページのPVは取れてもその先の本人確認や入金、取引までは想定したようには進まなかったためだ。

 ターゲットやメッセージが合っていても、最低投資金額がずれているとユーザーに刺さらず、コンバージョンレートが劇的に落ちることをを痛感したという。また、アントフィナンシャルやロビンフッドが起こしたような規模での若年層を含めた投資ブームが日本でも起きるかというと、まだ距離がある。「日本は土壌が硬いのです」と甲斐氏は言う。

 ただし、「PayPayが発表したような、本人確認のないポイント運用だったらユーザーが増えることも頷ける」とした。そういった面倒臭さや縛りのない、金融監督庁のあまり規制のない領域に寄せていくことが鍵になるとした。

【次ページ】新仲介業に期待が集まる理由

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