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  • 2021/09/03 掲載

令和3年度金融行政方針のポイントは? 金融庁が「貸倒引当金の算出根拠」に言及する理由

大野博堂の金融最前線(40)

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2021年8月31日、令和3事務年度金融行政方針が金融庁より公表された。昨年来の新型コロナウイルス禍での金融行政方針となったこともあり、書き振りは主として事業者支援を中心としたものとなっているのが特徴だ。具体的には「貸倒引当金の算出方法を今後横断的に点検する」などの記載があるが、どのような点がポイントになるのだろうか。
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令和3事務年度金融行政方針のポイントとは
(Photo/Getty Images)

そもそも令和2事務年度の金融行政方針はどうだったのか?

 コロナ禍で策定された令和2事務年度金融行政方針は、サブタイトルに「コロナと戦う」といったメッセージが付されていた。目立つところでは「重要情報シートの導入」といったものもあったが、アカウンタビリティ(説明責任)をしっかりと実行せよ、といった従前からの指導そのものを中心に要件が整理されていたと言える。

 「コロナと戦う」を標ぼうするが故に、テレワークの推進のほか、デジタル化への障壁となっている従来の書面・押印・対面を前提とした慣行の見直しを推進する、といった点について、形式的に語られていたのが印象的だ。その中で、あえてトピックを挙げるとするならば以下の2点が挙げられる。

●地銀の合従連衡の推進
 具体的な地銀統合の将来像を「単独での生き残りが困難」と思われる地銀に検討させることで、早期の合従連衡を推進するとしていた。具体的には、「持続可能な収益性が期待できない銀行」「将来にわたる健全性が確保できない銀行」を挙げ、こうした課題を抱える地銀との間で、早期警戒制度などに基づく深度ある対話により、持続可能なビジネスモデルを構築するための実効性のある対策を求めるとしていた。

●銀行の業務範囲の見直し
 地銀から明確な意思やビジョンが示されるケースにおいては、子会社や提携先企業が生業とする業務へ「本体での進出」を容認するなど、「地域差に着目した」一定の要件の銀行業としての業務範囲の拡大を認めるとしていた。

 注目すべきは「地方創生」における例示である。銀行グループが、地方創生に資する業務など社会的に意義のある業務に積極的に取り組むことができるよう、銀行の子会社や兄弟会社の業務範囲に関する規制を見直す、といった趣旨だ。

 当時既に地域商社は解禁されていたこともあり、各地で地銀による創設が相次いでいたものの、その時点では残念ながら有意な結果を導出するまでには至っていない、といった金融庁の認識が示されたと言っても良いだろう。

令和3事務年度金融行政方針のポイントは?

 こうした中で公表された令和3事務年度の金融行政方針のポイントとして挙げるならば、大きく4つの視点で整理できる。

  1. (1)事業者及び金融機関の経営状況の把握と金融機関における貸倒引当金の算出プロセスの検証
  2. (2)地域金融機関の経営基盤強化に向けた対話の実施
  3. (3)金融庁内でのデータ分析に基づいた行政の推進
  4. (4)地域経済を念頭においた金融機関職員の活用

 上記のうち(4)の要諦は、地域経済全体の活性化に向け、地域企業のための経営人材マッチングを促進するほか、金融機関職員の地域・組織・業態を超えた事業者支援のノウハウ共有や兼業・副業の普及・促進を後押しする、とするものだ。

 金融機関における合従連衡が進捗するとともに、DX推進や店舗網の再編が促される中で、多くの金融機関職員のリタイアメントが予見される。そこで、金融機関職員が持つ経営に関するノウハウやスキルを地域の民間企業にて活用してもらうことで、金融機関職員の利活用を期待したいとの意思が感じられるところだ。

 (1)から(4)の中で重要なのは(1)。すなわち、貸倒引当金の算出プロセスの検証に言及している点だ。

画像
2021事務年度 金融行政方針
(出典:金融庁「報道発表資料」2021年8月)

【次ページ】コロナ禍で惑うのは事業者、金融機関だけでなく「金融庁も同じ」
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