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  • 2021/04/20 掲載

デジタル収益が「5割超えない」銀行は消える、Bank 4.0著者が語る“残酷な現実”

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コロナ禍で金融サービスを取り巻く環境は一変した。デジタルの活用であらゆる変化に対応するための金融サービスを提供するには何が必要なのか。2010年から続く伝統的なアクセラレータープログラム「Startupbootcamp」をけん引し、フィンテック業界で存在感を示すジーラ・ボスコビッチ氏とネオバンク ムーブン(Moven)の創設者・会長であり、『Bank 4.0(邦題:BANK4.0 未来の銀行)』の著者でもあるブレット・キング氏の考えを紹介する。
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世界的に著名なフィンテック識者はコロナ禍後の世界をどう見ているのか
(出典: FINOLAB CHANNEL 4F2021)

※本記事は、2021年2月のFINOLAB主催イベント「4F 2021」での講演内容をもとに再構成したものです。

コロナ禍を経た「金融サービスの現状と未来」

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Ghela Boskovich(ジーラ・ボスコビッチ)氏
2010年から続く伝統的なアクセラレータープログラム「Startupbootcamp」を主宰するRainmakingのフィンテックやレグテック連携の代表。金融分野における性差別を解消するための「FemTechGlobal」創設者でもあり、Banking Technology Awardsの審査委員、Banking Technology Women In Technology(W.I.T.) Award主宰や複数のフィンテック関連のアドバイザーを務めている。『Brummel』誌では「影響力のある女性起業家」、『Innovate Finance』誌では「影響力のある女性フィンテック専門家」に選出されている

 冒頭、ジーラ・ボスコビッチ氏(以下、ボスコビッチ氏)は、新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)について、「ようやくパンデミックとの均衡を見出す時期を迎えています」と切り出した。

 ボスコビッチ氏は市場に、景気後退の波もようやく落ち着きを見せ始め、“感情的ではない”補正も徐々になされていると語る。その上で、今後経済が回復するには数多くの公的な債務救済措置が必要であるが、政府が金融政策を推進することによりある種の均衡が見出されるため「遅かれ早かれ資本市場の原理に委ねることになる」とした。

 そして、スタートアップや新規事業がアフターコロナの金融業界で成功するために注力すべき要素として「デジタルセントリック(デジタル中心)」「カスタマーセントリック(顧客中心)」を挙げた。

「もし皆さんが新たなビジネスを成功させるという夢がある場合、それが『デジタルセントリック(デジタル中心)』であり、『カスタマーセントリック(顧客中心)』であるならば、他にどんなものをブレンドしても成功するでしょう。今後、世界は(平時のようなビジネス上の)混沌と混乱の状態に戻っていきます。そこには必ずオポチュニティがあり、お金になります」(ボスコビッチ氏)

 また、ボスコビッチ氏は、今後の注目すべき領域として「サプライチェーンと金融」を挙げた。

 金融サービスによってスムーズなサプライチェーンを実現し、世界中の品物やサービスを効率的に動かすことにより、多くのスモールビジネスを支援することにもつながる──。「貨物配送やロジスティクスが金融と交差する分野は、莫大なアービトラージ(arbitrage、裁定取引、サヤ取り)のオポチュニティの領域にもなる」と指摘した。

フィンテックでもバリュー投資が注目されるワケ

 続いてボスコビッチ氏は「消費者の行動の変化」を考察した。消費者が購買行動において企業を選ぶ際、「自分のお金がどう使われているかを知ることで“自分自身のバリュー(values、価値)”を作り上げ始めている」のだという。

「消費者は購買行動の際、そのバリューについて、自分のお金がいかに望むような形でマーケットに影響するかを意識しています」(ボスコビッチ氏)

 その流れを受けて、多くのものが環境的なサステナビリティにシフトしているとした。「教育」「水の清浄度とそのアクセス」「基本的な医療サービス」など持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)こそが、「今や舞台の中心にある」との見解を示す。

 そしてSDGsについて非常に多くの人々が関心を持っている点を強調した。たとえば、米国における一般的なオープンエンド型投資信託である「ミューチュアルファンド」に投資する場合、多くの投資家がファンドを構成する企業をチェックするようになったと説明する。

 特定対象のCO2の排出量を指す「カーボンフットプリント」など、その企業が世界をよりグリーンでサステナブルなものにしようとしているかどうかを確認するのだそうだ。

 さらに、今後登場するテクノロジーや投資アプリの多くも、バリュー投資にフォーカスをすると予測する。ボスコビッチ氏は「私たちがある企業の商品を購入するのと同じように、多くの企業が政治運動や政治に関する議論が、地域コミュニティに対してどのようなインパクトを与えるかについて敏感になっています」と説明した。

「SDGsにフォーカスする場合、フィンテックにもその領域でのバリューがあります。“利益になる”“世界中に重大なインパクトを与える”ということが、これからのオポチュニティになるでしょう」(ボスコビッチ氏)

アフターコロナの「ファンダメンタルズ」を再考する

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Brett King(ブレット・キング)氏
ネオバンクMovenの創設者・会長としても知られているが、『Bank 4.0』や『Augmented』などの著書を手掛けるベストセラー作家でもある。最近3年間だけで50カ国以上で金融の未来に関する講演を実施するなど、各種受賞歴を持つ講演者、著名ラジオ番組ホストといったさまざまな顔も持っている

 ブレット・キング氏(以下、キング氏)は「コロナ禍で、ファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)の問題がより広範囲に強調されるようになりました」と語る。特にコロナの影響は、低所得~中間所得世帯に及ぼしている。その影響は世界中の富の8割を独占する上位10%を占める超富裕層に対するものよりはるかに甚大だと指摘する。

 そこから分かる事実としてキング氏は「金融包摂とデジタルインクルージョン(デジタル包摂)が、現代社会のクリティカルなファンダメンタルズ(国や企業などの経済状態などを表す指標)の要素であるということです」と説明する。

 たとえば、教育や医療などの公共サービスを利用する場合、デジタル包摂が必要となり、金融資産にアクセスしようとするなら、金融包摂が必要になるという。その基盤は、IDフレームワークのようなデジタル包摂に依存していると説く。

「私たちが、このままデジタル化を続けていけば、その事実がより識別されるでしょう。デジタルアダプション(デジタル技術の定着化)が加速度的に進んでいるのが現状です」(キング氏)

【次ページ】デジタル収益が50%に満たない金融機関の末路
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