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新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、ソーシャルボンドが国内外で注目されている。ソーシャルボンドとは、社会的課題解決に資するプロジェクトの資金調達のために発行される債券だ。国内では民間事業者による発行が少しずつ始まっており、経済界などから国内における実務的な指針の早期策定の要望が高まっている。金融庁ではサステナブルファイナンス有識者会議の下に「ソーシャルボンド検討会議」を設置し、企業などがソーシャルボンドの発行に当たって参照できる実務的な指針の策定を検討している。今回は、ソーシャルボンドの概要とその取り巻く環境について、解説する。
ソーシャルボンドとは何か?
ソーシャルボンドとは、いわゆる「社会的課題(ソーシャルプロジェクト)」に取り組む際、資金を調達するために発行される債券を指す。国際資本市場協会(ICMA)ソーシャルボンド原則では、以下のように定義される。
ソーシャルボンドとは、「調達資金のすべてが、新規または既存の適格なソーシャルプロジェクト(社会的課題への対処・軽減、ポジティブな社会的成果の達成を目指すプロジェクト)の一部又は全部の初期投資又はリファイナンスのみに充当される債券」のこと。
(出典:国際資本市場協会(ICMA))
ソーシャルボンドが注目される理由
ソーシャルボンドは、民間資金により「社会的課題解決へ」貢献できる仕組みを持っているため、新型コロナウイルス感染症などから注目度が高まっている。
企業にとっては、サステナビリティ経営の高度化、ソーシャルプロジェクトの推進を通じた社会的な支持の獲得なども期待できる。さらには、新たな投資家との関係構築による資金調達基盤の強化や、好条件での資金調達の可能性なども想定できる。
投資家にとっては、ESG投資(環境や社会、ガバナンス)の要素も考慮した投資における投資手段の提供や、投資利益と社会改善効果などにかかわるメリットの両立も可能となる。さらに、開示情報を通じた社会改善効果などにかかわるエンゲージメント機会の提供などにもつながる。
ソーシャルボンドとグリーンボンドの違いは?
ソーシャルボンドとグリーンボンドの双方に調達資金が充当される債券がサステナビリティボンドとなる。グリーンボンドやソーシャルボンド、サステナビリティボンドの関係は以下のとおりとなる。
グリーンボンドとは、調達資金のすべてが、新規または既存の適格なグリーンプロジェクトの初期投資またはリファイナンスのみに充当される債券だ。日本では環境省において、ICMA原則の内容との整合性に配慮した「グリーンボンドガイドライン」を策定している(2017年策定、2020年改訂)。
サステナビリティボンドとは、調達資金のすべてが、新規または既存の適格なグリーンプロジェクトとソーシャルプロジェクト双方への初期投資やリファイナンスのみに充当される債券だ。ICMAでは、サステナビリティボンド発行のガイドラインとして「サステナビリティボンドガイドライン」を策定している(2018年策定)。
ソーシャルボンドの発行額は?
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、ソーシャルボンドの発行が急拡大している。2020年の世界のソーシャルボンドの発行額は、約14兆4,000億円(1ドル=105円換算)にのぼっている。
日本証券業協会では調達資金がSDGsに貢献する事業に充当されるものとして、グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドなどの債券を「SDGs債」と呼称している。
国内においても、国際的な動向と同様、SDGs債の発行は増加傾向にある。これまでグリーンボンドとほぼ同水準で推移していたソーシャルボンドの発行は、2020年にグリーンボンドを上回って急拡大している。
【次ページ】国内のソーシャルボンド発行事例とは