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  • 2021/06/04 掲載

「地方銀行を破壊するのは誰か?」、スジの良いDXアイデアを生む発想術

連載:大野隆司の「DX」への諫言

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経産省は2020年末、「DXレポート2」を公表した。そこで目に付いたのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)に未着手である、あるいは一部門で取り組み始めた」という企業が、全体の95%を占めるという数字だ。DXを推進してきたという自負を持つ人は認めたくないと考えられるが、退歩しているとさえ言える状況にある。ここで1つ挙がるのが、多くの企業が「(2018~2019年度あたりに)取り組んでいたものはDXとは言えないのではないか」という仮説である。この連載のテーマである「スジのいいDX」を改めて考えた上で、今回は本質的なDXが起きうるエリアとして、地方銀行のビジネスに焦点を当てる。ゼネコンや町役場が、DXによる新たな仕組みで、銀行ビジネスを代替するシナリオを作成し、検証する。
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そもそも「DX」の定義についても意見が分かれている
(Photo/Getty Images)

DXの実情はほとんどが未着手?METIのDXレポート2の意味

DXレポート発行から2年が経過した今般、DX推進指標の自己診断に取り組み、結果を提出した企業の中でも、95%の企業はDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない
(出典:経産省発行『DXレポート2』から抜粋)


 DXレポート2に記載されたDXへの取り組みが思いのほか進んでいないという指摘には、多くの人が困惑したことだろう。X(変革)への視座やアイデアを持たないDXの推進役(伝統的なCIOをイメージしてもらえばいい)や、DX支援サービスをうたうITベンダーにとって、これまでの取り組みを根本的に否定されたことになるからだ。

 ここ数年、DXの名の下に支援してきた業務効率化や基幹システムの刷新などが、「これじゃDXとは言えない」という結論に転換しつつあることを意味する。

 ただし、いまさら経営側から「XのためのDXをやってくれ」言われても、戸惑ってしまうのが本音だ。先進技術の候補は容易に挙げられるが、「技術を生かして何をやるのか」となると、考えが止まってしまう人が多いと考えられる。

 もちろん、顧客エンゲージメントを高める、データの一層の活用、SCM(サプライチェーンマネジメント)の高度化、無人店舗の導入といった一通りのアイデアを並べることはできる。

 ただし、それでは「本当にわが社に効くのか? もっと、振り切ったもの、本当にXになるようなものを出すように」といった、厳しいやり直しの要求を突きつけられてしまいかねない。

 業務効率化をDXと称して、数年前から早めに取り組んできた企業ほど、「Xへの認識の是正」を迫られている。厳しい再オーダーを受けてしまう確率も高いのはないか。

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DX加速シナリオ


スジの良いXを「ディスラプトするのが誰か」という視点で探る

 スジの良いXのテーマを見つけることは本当に難しい。顧客や社会の課題解決から見つけていくのが王道ではあるが、これはなかなか骨が折れるものだ。やみくもに課題を探していくのでは効率が悪い。気がついたらリサーチだけで1年がたってしまうこともある。

 やや難易度が低いやり方は「自社のディスラプター(破壊者)はだれか?」という問いから始めることである。自社の強みが無力化されてしまうリスクから考える、というものだ。これは有効かつ効率の良いアプローチで、筆者もしばしば使う。

 ただし、注意しなければならないのは、思考が防御一辺倒になってしまうことだ。つまり「現在保持している競争力の維持」に目が行き過ぎて、新しい成長機会の発見には発想が及びにくいということである。

 しばしば「一層のコスト削減による、強い競争力の維持」といったように、業務効率化の徹底に過ぎないという意味で、スジの悪いDXのテーマ設定に堕してしまう。

 こうなってしまうとXの点からは最悪だ。

 ここは、ひとつ思い切って「自社がディスラプターになる」という視点を採ってみてはいかがだろうか。そこで今回は銀行、特に地方銀行にディスラプトの「ターゲット」になってもらい、スジの良いDXのテーマを見つけることについて考えてみたい。

【次ページ】DXを目指す他業種による地方銀行の代替の可能性
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