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  • 2021/01/30 掲載

DXでの成功で最も重要なポイント、「稼ぎ方」を理解すべき理由

連載:大野隆司の「DX」への諫言

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前回は、既存の制約を解除することにこそDX(デジタルトランスフォーメーション)におけるX(変革)にD(デジタル)が付与されたポイントであり、これは稼ぎ方とオペレーションの広がりの2つに現れるということを述べた。今回はさらにそれを進め、実際の「稼ぎ方」へと広がっていくプロセスを考えてみる。
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DXで最も重要なポイントは「稼ぎ方」だ
(Photo/Getty Images)

ニューノーマルで押さえるべき5つのポイント

 「稼ぎ方」の多様化は、この20年で定着した「コト・モノ消費」が推進力のベースになることを理解しておきたい。その上で、新型コロナウイルス感染症の影響で脚光を浴びた「ニューノーマル」と呼ばれる環境の変化が、実際にビジネスをどう変えていくのかを、5つの要因を指摘しながらこの記事で論じていく。


 1つ目は、インターネットへの接続人口と利用時間の増加である。総務省の情報通信白書(令和元年版)によれば、個人のインターネット利用率は約90%となっている。利用時間も1日約2時間とこの5年で3割増加。すでに生活インフラとなっている。活用するためのデバイスも、スマートフォンの普及率が80%を超えており、実利用環境も整備されている。

 さらに、 こうした拡大傾向を背景にしながら、現在は、5Gが今後コンシューマーとビジネスの両面での普及することなどが期待されている。たとえばNTTドコモは、大容量データを送信できる5Gの機能を生かして、サッカーの指導や遠隔地から農家に技術支援するといった実験など、各社積極的に取り組んでいる。

 2つ目はインターネット広告への出稿額の増加である。電通が2020年3月に発表 したところによると、2019年にインターネット広告への広告出稿額がテレビCMを超えたことが話題になった。この3年間、インターネット広告は2017年の約1.5兆円から、2018年に1.75兆円、2019年は2.1兆円と増加する一方、テレビは同1.95兆円から2019年に1.9兆円を切る規模へと逓減していることを見ると、この傾向はこれからも続くだろう。

 インターネット広告は稼ぎ方そのものでもあるが、資金が流入する場・モノ・コトを産み出したことこそはニューノーマルと言えるだろう。

 3つ目としてSNS利用の定着も、新しいメディアビジネスの登場という意味で重要だ。ICT総研によると2019年末のSNSのアクティブユーザー数は約7,800万人であり、1人が3つのSNSを利用していたとしても、かなりの人数が利用しているといえる。

 SNSそのものがプラットホームとして稼ぐというビジネスではあるが、ここでは、消費者のみならず企業の情報の収集と発信、知識を取得するための選択肢が増加し、一人ひとりが持つ欲求の充足や、欲求そのものへの気づきを可能にしていることに着目したい。

 4つ目に挙げたいのはクラウドコンピューティングの定着だ。2020年のパブリッククラウドの市場規模は約1兆円 (IDC Japan調べ)といわれるが、10年前には500億円を下回る規模であったことを考慮すると、システム構築の方法を大きく変えたことがわかる。

 クラウドは大手企業のシステム構築を変えたという側面はもちろんのこと、インターネットにおけるサービスのローンチコストと時間におけるハードルを下げることに貢献した。消えていったサービスも多いが、それを含めてサービス誕生に多様性を持たせたことこそ、ニューノーマルとして高く評価したい。

 最後の5つ目として挙げておきたいものは、インターネットにおいてクレジットカードの利用が一般化したことである。2019年の消費者向けEC市場の規模は約19兆円(経済産業省調べ)。この10年で約12兆円増加しているが、決済はコンビニ決済と代金引換の合計が約10%にすぎず、ほとんどがクレジットカードを中心としたキャッシュレス決済となっている。

 日本人はもともと現金志向が強いといわれていた中での変化である。中でも特筆すべき効果は、クレジットカード決済によって、売上金額の回収というハードルが消滅することである。その意味で、ニューノーマルの1つだと指摘できる。

 ここまで見てきた5つ以外にも、高齢化やミレニアル世代などのデモグラフィー面の変化、低金利の長期化、ベンチャーキャピタルにおける金余り現象、M&A、EXITとしての売却の流行、全国で時間指定の宅配サービスが定着したこと、WLBやハラスメントへの企業の問題意識向上や対応などさまざまな変化が同時並行で起きている。バズワードのように聞こえるニューノーマルという言葉だが、実態はかなり重層的なのである。

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ニューノーマルは重層的な意味合いを持つ
(Photo/Getty Images)

サブスク、シェア、D2Cなど、この10年で話題になった「稼ぎ方」

 先進的な技術を持ったスタートアップ、ディスラプターの出現を懸念する大企業、社会正義の実現を掲げるNPO(非営利団体)など、DXに取り組む企業や団体の規模、歴史、哲学などはさまざまである。ただし、いずれの企業も「どのように稼ぐのか」の検討を避けて通ることはできない。

 この検討を先送りしたり、スコープ外にしたりすると、初回で触れた業務効率化や基幹系システム再構築の問題と同様に、DXの「視座」が低きに流れる恐れが出てきてしまう。「稼ぎ方を視野にいれていない検討では、X(変革)を起こすことはできない」と言ってもいい。

 この10年で話題に上った稼ぎ方を見ることにしよう。

稼ぎ方の広がり例

・サブスクリプション
・シェアリング
・フリーミアム
・プラットホーム
・D2C(Direct to Consumers)

 サブスクなどと略されすっかり言葉として定着した「サブスクリプション」。もともとは「定期購読」を意味するサブスクリプションだが、現在では「一定額を支払えば期間内の利用制限がないサービス」という認識も一般化しつつある。

 サブスクリプションが急激に人気になってきたのは、デジタル化されたコンテンツ、すなわちソフトウエアや映画などをサブスクリプション方式で販売することで成功を収めている企業が耳目を集めたという面が大きい。NetflixやHuluなどの動画配信サービスや、Spotifyなどの音楽配信サービス、雑誌や漫画の読み放題サービスなどを利用されているヒトも多いだろう。

 「利用し放題」という点ではデジタルコンテンツのサービスがサブスクリプションに適しているが、高級かばんやドレスなどのレンタルなど、物理的な搬送を必要とするサービスでも成功事例が見られるようになってきている。日本を代表する自動車企業であるトヨタ自動車も「クルマのサブスク」を展開するなど、裾野は広がっている。もちろん始めたものの、撤退したサービスも多い。

【次ページ】流行だけでは続かない、成功の法則
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