ジャパン・マネジメント・コンサルタンシー・グループ 合同会社 代表社員 大野 隆司
アクセンチュア、ヘッドストロング・ジャパン、ローランド・ベルガー、KPMG FASなどで33年余にわたり経営コンサルティングに従事。成長戦略の策定、新規事業の創出支援、それらの実現のためのオペレーション戦略の立案・設計など数多くのプロジェクトを手掛けている。近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)、イノベーション創出、M&Aに関わる支援を中心にしている。
経産省は2020年末、「DXレポート2」を公表した。そこで目に付いたのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)に未着手である、あるいは一部門で取り組み始めた」という企業が、全体の95%を占めるという数字だ。DXを推進してきたという自負を持つ人は認めたくないと考えられるが、退歩しているとさえ言える状況にある。ここで1つ挙がるのが、多くの企業が「(2018~2019年度あたりに)取り組んでいたものはDXとは言えないのではないか」という仮説である。この連載のテーマである「スジのいいDX」を改めて考えた上で、今回は本質的なDXが起きうるエリアとして、地方銀行のビジネスに焦点を当てる。ゼネコンや町役場が、DXによる新たな仕組みで、銀行ビジネスを代替するシナリオを作成し、検証する。
デザイン思考がビジネスの世界で耳目を集めるようになっている。イノベーションや「スジの良いDX」を目指すクライアントとのディスカッションなどでも、この5年くらいでデザイン思考という言葉が出てくることも増えてきた。インダストリアルデザイナーやアーキテクト(建築家)などのフレーバーを感じさせるデザイン思考は、ビジネスの現場で、ドアオープンさせることには成功し、システムベンダーの業界では、「切り札」たる新しい思考法として、大きな期待が寄せられている。一方で、デザイン業界からは「ブルシットだ」(これは、でたらめ、たわごとくらいの意味でよいだろう)という声も挙がっている。切り札なのか、ブルシットなのか?考えてみたい。