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- 2021/07/13 掲載
金融機関の店舗は「リストラ対象」か? 次世代店舗戦略の論点とは
大野博堂の金融最前線(39)
店舗を取り巻く話題はネガティブなものばかり
人口減少を背景に、デジタルトランスフォーメーション(DX)による事務の合理化と人材抑制とも相まって、店舗を取り巻く話題はネガティブな要素がつきまとう。とかくこれまで顧客との重要な接点を担ってきたはずの店舗が置き去りにされつつあり、話題となるのは営業店の統合や削減といったネガティブな動きばかりである。こうした中、店舗数の削減といった発想にとどまらず、「既存店舗の利活用」に着目する動きも出てきた。
欧州を旅すると、金融機関の営業店の一階部分が育児スペースで、本来の営業店機能は二階の相談ロビー、といった店舗を目にする。また、筆者の自宅近くの駅前に立地する地域金融機関は、前面の看板を喫茶店と共有した上で入口も喫茶店と同じくし、金融機関の営業店と喫茶店が建物内の同じフロアで半ば一体化したかのごとく並びあっている。金融機関店舗に見られる堅苦しさや敷居の高さは微塵も感じられないほどだ。
これまで規制でがんじがらめとされてきた店舗
従来より欧米では体験型店舗が注目され、複数の機能を組み合わせた新たな来店動機形成に余念がない。一方、日本ではこれまでのところ、金融機関は営業店をうまく活用できていないのが実態である。これには防犯上の理由もさることながら、日本での店舗規制が極めて厳しいという特有の事情が存在する。過疎地対策として利便性の高い移動店舗1つとってみても、店舗規制が適用されることで、運用には必要以上のコストを伴うことになる。結果、一台の車両製造に2000万~4000万円ものコストを投じざるを得なかった。
このように、店舗の利活用においては決して金融機関の責が問われるべくものではなく、金融当局によってがんじがらめにされてきたのが実態である。実際、かねて店舗再開発に向けた金融機関からの要望は数多く当局に寄せられてきた。
店舗利活用は緒に就いたばかり
近年、営業店の再開発とセットで空きフロアの一般貸出が容認されてきたことを受け、地銀ではこのところ、交差点などの好立地に出店する平屋の営業店をビル化し、空いたスペースを第三者に賃貸する方式での「不動産賃貸業」を手掛ける例が見られる。そもそもこうした「金融機関の店舗利用の柔軟化」構想は古くから金融庁内にあったものの、地域金融機関における不動産不正融資などが問題視された結果、慎重視されてきた経緯がある。不動産事業への進出のみでは、単なる兼業にとどまる恐れがあり、新たなリスクを背負い込むことにもなるためだ。
そのため、金融庁としては地域創生を踏まえた店舗戦略を金融機関に要請している、と解釈すべきだろう。では、店舗を地域創生にどう生かすべきなのだろうか。
【次ページ】昼夜間、平日と休祭日で機能を分けることも
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