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- 2019/12/02 掲載
“地銀”が地方商店街を救う方法、政府の「再生事例」が役に立たないワケ
大野博堂の金融最前線(7)
商店街再生に取り組む政府、自治体、金融機関
出資規制が緩和されたこともあり、各地の地銀では地元の良品を外部顧客に売り込む「地域商社」が生まれている。しかし、狙った成果を出せてはいないようだ。既存の取り組みに法人格をつけても、実際に担っているのは「遠隔地間でのビジネスマッチング」だけのケースが多いことも、この一因である。各々の金融機関は「地域貢献とは何か」という“答え”が見つけられていない。
ただし、ちょっとした工夫を施すだけで、地域の新たな付加価値創出を実現できる可能性もありそうだ。そこで、この金融機関にとって難解ともいえるこの「工夫」を「コストを要さずに」対応するためのアプローチの一例として、「商店街の活性化に向けた取組み」を解説する。
まずは、現状を確認しておこう。
地域振興への金融機関の取組みが有効に機能していないケースへの対応策として、すでにさまざまな試みがある。
たとえば金融庁では、地域貢献を金融機関に要請するとともに、時折「ベストプラクティス」とも言うべき取組事例を示してもいる。他の省庁からも、商店街活性化促進事業の類が用意されており、財政措置としてもバックアップ体制は整っている。また、自治体からは地域創生の一環で地元金融機関にも店舗開発や融資などで支援を要請しているのが一般的である。
中央省庁などでは各地の商店街再生事例を分厚い冊子に仕立て上げ、有意事例として公表している。筆者らはこうした商店街再生事例も参照しつつ、国内各地の「再生」商店街にも足を運んでいるのだが、実際のところ、「どこに人がいるのか?」といったさびしい様相の商店街も少なくない。政府の事例集で紹介されているほどの効果を確認することができないのだ。
商店街の再生はなぜうまくいかないのか
その町は港町でかつては漁師が大漁旗とともに地域にカネを落とし、商店街にも多くの人々が集っていた。ところが、周辺の幹線道路が整備され、そこにロードサイド型店舗が集中出店する。同時に大型商業施設の類も近隣都市に誘致された。商店街のかつての賑わいも今は昔、子供たちの姿を見ることもなくなってしまった。
閉鎖店舗が相次ぎシャッター街と化してきた地元商店街のオーナーは商工会を通じて自治体に商店街の活性化に向けた要望を提出した。外部から店舗開発のコンサルタントを招聘し、新たな店舗誘致に励んだ結果、魚屋や布団屋など「一般的な店舗」ばかりの商店街に、ネイルサロンや女性用小物グッズを扱う雑貨店など、若者向けの魅力ある店をいくつも出店させることに成功した。
もちろん、店舗出店に際しては、地元金融機関が低利融資にも応じた。行政の支援もあり、頻繁に人の集まるイベントも開催した。ところが、人が集まるのはイベント開催時のみで、しばらくすると閑散とした元の状態に戻ってしまった。
【次ページ】新たな店舗の誘致に際して金融機関がやるべきこと
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