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  • 2020/04/01 掲載

現実味を帯びる“都市封鎖”、その時までに預金取扱金融機関が準備すべきこと

大野博堂の金融最前線(15)

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新型コロナウィルスの感染者数が増加傾向にあり、政府や自治体からの自粛要請も強まってきている。経済の潤滑油たる金融機能についても、運営上の重要リソースたるヒトの側面がボトルネックとなり、対面営業を中心に規模の縮小を余儀なくされる可能性も出てきた。本稿では、連載第12回に続き、今後予見される都市封鎖などのいわゆるロックダウンを念頭に、金融機関における準備動作を考察してみる。
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金融機関が都市封鎖に備えるには
(Photo/Getty Images)

どのタイミングでの都市封鎖が予見されるのか

 日本では、政府によるトップダウンでの強行施策を可能とする法的要件が欧州圏ほど整備されていないこともあり、特措法は成立したものの、東京がある日突然ロックダウンされる、といった光景は想定しにくい。

 ただし、徐々に任意での自粛要請を重ねることで要件を厳しくしていき、あるタイミングで結果的にロックダウンに近似する効果が発現される、といった複数段階を経た緩やかなロックダウンになるものと想定される。たとえば、すでに中央省庁では官僚もテレワークに部分的に移行しつつある。筆者の妻も某省庁に勤務しているが、現在は1日置きのテレワークを実施中だ。

 ただし、すべての職員が必ずしもテレワーク環境を持たない省庁ではロックダウンの影響は回避できず、業務の縮退モードへの移行が必要となる。国としての重要リソースは、政府機能を維持させるための職員の確保だけでなく、水道やエネルギー、通信、放送、流通といったインフラ事業者における機能確保が大前提となる。さらには食料の安定供給も欠かせない。

 そこで、こうした事業者への一定の準備期間や実現方式の検討、周知期間などを考慮に入れれば、都市封鎖に必要な準備動作に2週間程度は要するものと予想される。すると、ゴールデンウィークと連続できる4月中旬あたりからの「結果的なロックダウン」を予見したうえでの事前準備が金融機関にも必要となろう。

預金取扱金融機関として感染蔓延期に継続すべき業務

 預金取扱金融機関では、窓口業務という対面取引の場を提供している。感染症への対応としては、リスクの高い対面での接触機会を極力回避することが有効である。

 したがって、日本の規制当局では従来より、新型インフルエンザ対策を念頭に、この対面取引を縮小させたうえで、代替機能を提供することを金融機関に要請してきた経緯がある。

 連載第12回でも述べたとおり、政府は発生段階に応じたフェーズ設定をしており、フェーズごとに企業がとるべき対策を個別に要請してきた経緯がある。これを受け多くの銀行では、業務区分を「必須業務」と「重要業務」に分けて定義している。

 必須業務とは、感染蔓延期においても、継続させる業務であり状況に応じて業務量を縮小するものを指す。これに該当するのは預金取引(ATM)、事業性貸付(実行、審査)、個人ローン(実行、審査)、内国為替(ATM、IB)、手形交換、給与関連などとしている。

 他方、重要業務は、国内発生期においても業務範囲を縮小させつつも継続させる業務であり、感染蔓延期では休止する業務、と定義している。具体的なものとしては、預金取引(店頭)、事業性貸付(契約変更)、個人ローン(契約変更)、内国為替(店頭)、投資信託などが挙げられる。

 したがって、感染蔓延期には店頭での預金取引や店頭での内国為替の受付、投資信託や保険の窓口販売などを休止することになろう。つまり、営業店での対面対応の見送りと引き換えに、代替手段が提供されることとなる。

 たとえば、名古屋銀行では、新型インフルエンザ流行を想定し、営業店における業務継続態勢をフェーズごとに定義している(図1)。

画像
図1:名古屋銀行における営業店の継続態勢
(出典:名古屋銀行公表資料より要件を抜粋し、NTTデータ経営研究所にて作成)

 名古屋銀行は新型インフルエンザの流行を念頭に感染症の発生段階を4段階に定義し、第三段階となる「感染拡大~蔓延期」に該当すると判断した場合、営業店は主要店舗のみを営業継続させたうえで多店舗は窓口機能を閉鎖するとしている。その際、店内ATMは通常通り運用するものの、店外ATMは運用を休止する方針としている。

【次ページ】緊急時では例外規定により事務処理のスピード確保を目指す
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