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- 2020/05/08 掲載
「自行の従業員が感染したら」、金融機関のパンデミック対策を整理する
大野博堂の金融最前線(18)
パンデミック対策における3つの想定シナリオ
前回に引き続き、「BCP(事業継続計画)」で定義される緊急時対応手続きを解説していく。BCPの重点対象リスクとなる「パンデミックリスク」については、従前であれば「強毒性新型インフルエンザの発生」を想定リスクとし、インフルエンザの発生場所を勘案して下記の図のようなA~Cの3つのシナリオを検討してきた。もちろん、パンデミックリスクで対応すべき感染症は、必ずしも新型インフルエンザとは限らない。流行中の新型コロナウィルスについても、同様の取扱いで問題ないはずだ。
ここでは新型インフルエンザの流行を前提としたイメージを掲載しているが、国立感染症研究所や厚生労働省が定義する感染症の分類などを参考として取り上げ、とりわけ国内での感染・流行リスクが高い「強毒性感染症」の流行を想定する、と定義しておけばよいだろう。
なお、弱毒性の新型感染症が流行する可能性もあるが、これまでの発生事例を考えると季節性インフルエンザと同等の被害に留まることが想定される。日本政府の対応方針をみても、強毒性感染症の対応指針とは異なる取扱いとされている。
ちなみに、日本では従来から弱毒性新型インフルエンザ流行時における対処については「基本的対処方針」として別途対応手続きを設けてきた経緯がある。
したがって、弱毒性感染症については「当行では弱毒性の新型感染症が発生した場合については、季節性インフルエンザの一般的な対応方針を準用することとする」といった定義が有効といえる。なお、想定シナリオに基づき、それぞれの場所で強毒性新型感染症が発生した場合には、以下のような被害が想定される。
もし、自行の従業員が感染してしまったら……
パンデミックリスクについては、海外や日本国内、あるいは県内における当行の営業店立地地域外において強毒性感染症が発生した場合において、「頭取がBCPの発動要否を決定する」として定義することが考えられる。他方、当行の営業店立地地域内において強毒性新型感染症が発生した場合には「BCPを自動的に発動する」といった自動発動基準を定義することも可能だ(図3)。
なお、BCP発動の判断はテレビなどメディアによる報道や政府見解に基づき実施することとなる。ただし、BCPを発動する時は、その際の判断証跡を記録として残す必要があるだろう。
【次ページ】継続対象となる「必須業務」と「重要業務」の違い
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