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  • 2020/11/05 掲載

モノづくりに4つの課題、IVIフェローらが考える「コロナ禍を生き抜く」製造業の条件

IVI公開シンポジウム2020 -Autumn-レポート

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一般社団法人「IVI」(Industrial Value Chain Initiative )は、モノづくりとITが融合した新しい社会をデザインし、企業の現場や部門や組織の垣根を越えつながり、すべての人びとのバリューが相互に高まることを目指すフォーラムだ。これまでIVIは、企業の協調領域をリファレンスモデルとして共有することで「つながる工場」の実現を推進してきた。しかしコロナ禍によって、バリューチェーンが分断され、モノづくりのあり方にも変化が出てきた。先ごろ開催された「IVI公開シンポジウム2020 -Autumn-」では、IVIのコアメンバーが「コロナ禍を生き抜くものづくりの智慧・知恵・知慧!!」をテーマに熱い議論を交わした。
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写真左から、関 行秀氏(IVIフェロー/NEC)、古賀康隆氏(IVI技術統括)、堀水 修氏(IVIフェロー/日立製作所)、渡邊嘉彦氏(IVI副代表幹事/伊豆技研工業)

「ニューノーマル」でのモノづくり領域の4つの課題とは?

 パネルディスカッションの前に、司会を務めるIVIフェローの関 行秀氏(NEC)が、今回のテーマに則したモノづくり領域の課題を整理した。同氏は「工場の働き方が変わる」「サプライチェーンがスムーズにつながらない」「製品の需要変動が激しい」「新たなビジネスチャンスが生まれる」という4つを論点として挙げた。

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ニューノーマル社会でのモノづくり領域における主要課題は4つ。いずれもIVIのコンセプトである「つながる工場」で解決できるか可能性が高いものばかりだ

 まず1点目は、コロナ禍で工場の働き方が変わり、どんな対策が現場で練られてきたのかということだ。Webカメラで生産ラインの状況や品質を調べたり、出荷前の立ち合い検査をリモートで実施したり、AIやAR/VRなどの新技術を活用する企業も出てきた。

 この点について、まずIVI副代表幹事の渡邊嘉彦氏(伊豆技研工業)が、中小企業の立場から、コロナ禍の変化について紹介した。

 同氏は「首都圏と地方の工場の在り方は若干違うと思います。我々は静岡が拠点で、クルマ通勤が中心。三密状態は起きづらい。ただし、もし自社で新型コロナウイルスの患者が出たりするとインパクトが大きい。取引先など風評被害が怖いため、かなり気にしていることは事実です」と本音を漏らす。

 そういう点では、やはり地方企業でも働き方は変化したそうだ。三密状態がなくても、それを想定した取り組みを実施している。

 「まず自分たちの工場でテレワークを適用できるのかを考えました。やはり設計部門は、セキュリティの観点から、自宅にデータを持ち帰れないため難しいです。また間接部門の総務や調達の仕事も、中小企業ではテレワークはやりづらいです」と実情を吐露する。

 というのも、中小企業は人数が少ないので、データや文書でのやり取りより、人同士が関わり、口頭や現場に行ったほうが速いという文化があるためだ。大企業とは異なるコミュニケーションを考える必要があるという。

 「テレワークが三密を避ける手段なら、工場では人との接点を避けて、従来まで2人だった作業を1人にするなど、省力化と効率化を押し進める仕組みが必要です」と渡邊氏。

 関氏は、IVIとして現在、中小企業のメンバーに対して、どんなフォローをしているのか、IVI技術統括の古賀康隆氏に話を聞いた。

 古賀氏は「技術統括として、IVIで教育活動を進めてきました。この活動では、日本各地の中小企業のIVIメンバーに対し、IVIの業務シナリオによる手法や、困りごとなどを解決する実証実験にトライしてもらうためのセミナーなどを開催してきました」と語る。

 ただ去年までの対面セミナーでは、ホワイトボードにチャートを書いてきたが、これがコロナ禍ではできなくなった。そこで、いまはリモートで他のインストラクターにつないで、地方セミナーを開催しているという。

「やはりリモートではコミュニケーションが不十分な点もあります。たとえばチャートの部分を指摘する際にうまくいかない。そこで仮想ホワイトボードで互いに意思疎通を取ってセミナーを実現しました」(古賀氏)

 このように多少の使いづらさはあっても、できるだけコミュニケションツールを使って課題を解消する工夫を凝らしているという。

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サプライチェーンの分断を回避するには?

 2点目の「サプライチェーンがうまくつながらない」という課題については、IVIでは「リスクの見える化」や「日々の情報トレース」「コミュニケーションのデジタル化」などにチャレンジしているという。

 ただし、ここもネットワークのストレスが課題になる。システムの大容量データ以外にも、リモートワークをどうすべきか、エンド・ツー・エンドの可視化のトライアルによって、スムーズにつなげていくことが大切だ。とはいえ、製造関係の企業間はオープン・クローズドなので、そこにもハードルがある。

 IVIフェローの堀水 修氏(日立製作所)は「IVIでは、設立当初から2つのコンセプトを掲げてきました。1つは“つながる工場”。もう1つは、つながるための“緩やかな標準”です。コロナ禍を生き抜くモノづくりという点では、これまで以上につながることが重要になると感じています」と強調する。

 今回のコロナ禍では、国や都市がロックダウンした。人もモノも動かせず、一時的に流通が制限され、サプライチェーンが分断された。ステイホームで在宅勤務になり、頼りは情報だけという期間も長く続いた。

 モノと人という関係で、業務はどう変化するのか。従来のサプライチェーンは、1つのヒモでつながっており、縦型で動いていた。つまり情報は、消費する側から工場、サプライヤーへと流れ、モノは逆にサプライヤ―から工場、消費者へと流れていったのだ。

 堀水氏は「従来の流れでは人と人の調整が必要なプロセスが多く、“情報のバケツリレー”が中心でした。そのため必要なことが、必要な人にタイムリーに供給されないことがありました。どこか1本切れるとつながらなくなっていたのです。そこで人による調整を最小限にして、必要な情報をネットワークでリアルタイムに共有すれば、誰もが先読みしながらプロアクティブな動き方ができるようになると思います」と指摘する。

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情報のネットワークがもたらす新しい価値。これからのサプライチェーンは、情報のネットワーク化で、リアルタイムに情報を共有し、それに基づくプロアクティブな対応が可能になる

 このネットワークの輪が広がれば、新たなパートナーの発見や異業種を含めた連携、ビジネスチャンスにつながる可能性もある。しかしネットワーク型の情報共有の場を作ることは具現化されていない状況だ。

 「日本のモノづくりが、より輝くには議論が必要です。人による煩わしかった調整が、どこまで排除できるのか。そもそもIVI自体も人を結びつけて知恵を共有し、イノベーションを起こすような場として、多くの成果や知見を蓄積しているところです」と堀水氏。

 こういった問題意識から、IVIでは新たな先進研究分科会(ASG)を申請した。分科会のテーマは、まさに「アフターウィズコロナ、ニューノーマル時代を勝ち抜く、新時代型サプライチェーンと企業連携」だ。

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この春に立ち上がった分科会。先進研究分科会(ASG-18)では、コロナ禍に勝ち抜くための新時代型サプライチェーンと企業連携を目指した取り組みを議論するという

 堀水氏は「2年後をめどに議論をホワイトペーパーにまとめ、IVIの意見として世に発信したいです。まだ今後もコロナ禍が続きそうですが、ぜひ一緒に頑張りましょう」と、メンバーに新分科会の参加を促した。

【次ページ】需要変動はネットワークのつながりとエネルギーの観点がポイントに
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