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- 2020/11/25 掲載
ブラザー会長 小池利和流の危機管理術、「データ」で新型コロナをどう乗り越えるのか
IVI公開シンポジウム2020 -Autumn-レポート
海外売上が8割超のグローバル企業、変化し続けるブラザーの強み
小池氏は「そこで自社のタイプライタ―からキーボードを外し、インタフェースを付ければ、PC用プリンターになると考えました。当時としては1000ドルという破格の値段でプリンターを発売し、大ヒットしたのです。これらが進化して、現在のレーザー複合機にもつながっています」と説明する。
米国時代は、プリンターのOEMもやっていたが、基本的にはブラザ―商品を量販店に売り込み、彼らと共に成長しながらビジネスを展開。時流に乗って年20%の高成長を続けてきた。米国におけるプリンターのマーケットシェアは50%を超える勢いだった。
最初はインパクトプリンターだったが、音もせずに高品質な印刷ができるノンインパクトプリンターを開発。ファックスも後発ながら、オートカッター付きで安い価格で売り出し、その機能をプリンターに付加した複合機を1995年に発売した。
「インクジェット式やレーザー式複合機など、毎年のように新製品を投入し、ビジネスも膨らんでいきました。私の米国出向中に、米州の売上は25倍になり、ブラザーグループとしても2019年度は連結で6,373億円まで成長しています」(小池氏)
現在は、売上の6割が通信・プリンティング機器で占めている。同社は100年前の設立時はミシンを生業としてスタートしたが、ミシン関連の割合は家庭用と工業用を合わせても約10%ほどに落ちているという。
ブラザー工業は90年代からグローバルでビジネスを展開してきた。現在は40以上の国と地域に生産拠点や販売・サービス拠点を設けており、売上の8割が海外で、生産も9割以上が海外で行われている。
このように小池氏は「40数年にわたり、我々は、さまざまなチャレンジを続け、売上を伸ばしてきました。非常に幸運でしたが、かなりの部分で、米国・欧州・中国を含むアジアの売上がバランスよく伸びてきたことが大きな要因でした」と振り返る。
第三の波のあと突如襲ってきたブラックスワンをチャンスに変えるには?
ブラザーの過去112年の歴史を振り返ると、創業から1980年代半ばまでが「第一の波」にあたり、ミシン専業から電子化へと移った時代だった。そして2005年ぐらいまでが「第ニの波」で、情報化の波に乗り、プリンターや複合機などを開発していった時代だ。さらに現在までが「第三の波」の時代で、ドキュメント・スキャナーやコーディング・マーキングマシン、ギアドモータなどの新領域にも手を広げている状況だ。現在はBtoCからBtoBへターゲット層も変わり、新たな変曲点を迎えているという。
これまで、ブラザー工業は、どんな変化や危機が起きても「At your side」で取り組むという経営方針を掲げてきた。
「お客さまに期待以上のモノを提供することがミッションです。我々は、モノづくりの風上から、どこの国で売るのかという風下まで、サプライチェーン全体をデジタルで見える化したうえで、最適な管理をすることを真剣に検討する時期に来ていました」と小池氏。
そんなときに起きた今回のコロナウイルス騒動。まさにブラザー工業にとっては「ブラックスワン」のような出来事だった。これまでの常識がまったく通用しないなか、変革を遂げながらも、ビジネスの舵とりをしなければいけない状況になった。
政治面でも米中対立があり、まだBREXITも解決していない。世界経済が変わり、ビジネスモデルはネットによるディストリビューションにシフトし、ECが盛んに利用されるようになった。顧客の購買行動が抑えられ、ビジネスでもリモートワークが進み、効率の良い働き方が課題になっている。
そのような状況で、小池氏は「まず変化を敏感に察知しチャンスに変えることが大切です。企業の人材・業務・事業の変革に急いで手を付けないと、不透明な世の中でのサバイバルは難しいと考えている」と語る。
【次ページ】リーマンショックから学んだ、ブラザー工業の「嵐」の乗り越え方
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