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この先も目先の対応に追われる企業にとどまるのか。描いた未来像に向かって全速前進する企業に生まれ変わるか。それは「AIの民主化」の実現にかかっている──。「AI Experience Virtual Conference」(主催:DataRobot)に登壇したエクサウィザーズ 代表取締役社長 石山洸氏は、“6つのT”をマネジメントして“日本版オードリー・タン”を輩出できる環境を醸成しよう、と訴えた。
※本記事は、DataRobotが2020年7月14日に主催したオンラインイベント「AI Experience Virtual Conference」の内容をもとに再構成したものです。
目先の対応と理想の実現、二極化が進む日本
石山氏が現在代表を務めるエクサウィザーズ社の経営理念は、AIを利活用したサービス開発による産業革新と社会課題の解決だ。Deep Issue──社会に根深くとどまる課題を対象に、AIのようなハイテクや既存科学、複数の異なるテクノロジーを組み合わせて解決するDeep Techを実践している。また、石山氏は“AIの民主化”──AIを誰もが使えるようにすることにも言及し、その重要性を強調した。
エクサウィザーズ社では先ごろ、「アフターコロナ時代のDX」をテーマに日本企業290社411人にアンケート調査を行った。その結果、“取りあえずリモートワークは実現したものの、目先の対応にとどまり、その先のことはわからない”と答えた層が46%で、最大のボリュームゾーンとなった。
一方で、“To-Be(めざしたい理想像)は規定したが、具体的にDXとどう掛け合わせたらいいかわからない”層は26%、“To-Beに向けDXに着手したが、実現には課題がある”層は9%、“DXに本格的に着手、To-Beに向かって躍進している”層は3%だった(図1)。
目先の問題の対策に追われる層をTo-Do型、理想像を規定してとにかく前進し始めた層をTo-Be型と命名したならば、それぞれ46%、38%となり「二極化の様相が見られる」と石山氏は指摘する。同氏の見立てでは、この先さらに二極化は進んでいくという。To-Do型のまま取り残されたくなければ、変革するしかない。
日本企業のDXに不可欠な6つのTとは
社会学者 リチャード・フロリダはかつて、イノベーションに不可欠な要素として3つのTを挙げた。技術(Technology)、人材(Talent)、寛容性(Tolerance)だ。これらに加えて、日本企業が別の姿に変わるためには、さらに3つのTが必要だと石山氏は主張する(図2)。
それは、なりたい理想像(To-Be)、透明性(Transparency)、超越(Transcendence)だ。
「To-Beは、今からどこへ向かうのかという目的地です。これがなければ、DXに乗り出したくてもそもそも出発できません。Transparencyとは、正しく目的地へ向かっていることを透明度高く証明するもの、すなわちデータです。そして、Transcendenceというのは、少し難しいのですが、今までの自分を超えていくというような概念です。新しい自分への変容を促す、不安はあるけれど自分自身を変化させていこうという考えを自ら持つことです。“6つのT”をしっかりマネジメントしていくことで新たな『AIの民主化』が実現するとともに、それを牽引するリーダーシップ、新しいクリエイティブ・クラス (新しい価値観を共有する人材)を生み出せます」(石山氏)
Radical Transparencyを成し遂げたオードリー・タン氏
その新しいクリエイティブ・クラスの代表として、台湾のデジタル担当政務委員であるオードリー・タン氏(IT担当大臣)を同氏は挙げる。まだ39歳と大臣としては若いが、もともと卓越したプログラマーだったタン氏は新型コロナウイルス感染拡大の初期段階に政府が把握しているマスクの在庫情報を公開。また、外部開発チームを活用し、オープンイノベーションによってエンドユーザーにマスクのある薬局を知らせるアプリの開発も実現した。これによって台湾は早い段階で感染抑制に成功し、市民もこの対応に高い満足度を示した。
「タン氏はデジタルの力で感染抑制を実現しました。Radical Transparency(急進的な透明性)というのは、タン氏のスローガンの1つだそうですが、行ったのは徹底的にマスク在庫を可視化すること、感染を防げるようになっているか徹底的に可視化すること。DXやAIの民主化にとって『データによる圧倒的な可視化』は重要なスローガンになるでしょう」(石山氏)
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