• 2025/03/09 掲載

アングル:お茶大国中国で苦戦のスタバ、現地嗜好踏まえた飲料開発で復活へ

ロイター

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Casey Hall

[上海 5日 ロイター] - 米コーヒーチェーン大手スターバックスが、中国での業績低迷からの巻き返しを図っている。アナリストらによると、激しい競争とデフレ問題の克服には戦略的パートナーシップと、消費者がコーヒー「体験」を得るために来る場所という同社の原点に立ち返ることが必要だという。

スターバックスはそれでなくとも、世界的な減収減益というプレッシャーに悩んでいる。米国に次いで世界第2の市場である中国では、景気悪化と長引く不動産市場の低迷による消費者心理の悪化が、問題をさらに深刻化させている。

こうした状況で、スターバックスは中国における市場シェア首位の座を、地元チェーンのラッキンコーヒーに奪われた。2023年、ラッキンの国内売上高はスターバックスを上回った。

コッティやKFC系列のKコーヒーといった競合チェーンも急成長し、スターバックスが中国市場で「アメリカーノ」に設定する27元(3.70ドル)よりも低い価格で熾烈な価格競争を挑む。だがアナリストらは、スターバックスはこうした競争に加わるべきではないと言う。

調査・戦略コンサルティング会社アパチャー・チャイナの創業者ヤーリン・ジャン氏をはじめとするアナリストは、世界2位の経済大国である中国でスターバックスが成功を取り戻す上で最も期待できるのは、戦略的パートナーシップだとみている。

ジャン氏は「最良のシナリオは、ラッキンコーヒーを支えるセンチュリウム・キャピタルのような相手を見つけることだ」と語る。

「重要な意思決定を現地パートナーに任せれば、中国の消費者の期待に迅速かつ的確に対応できるかもしれない」

CTRマーケットリサーチのジェイソン・ユー氏も同じ意見で、優れた現地パートナーがいれば「不動産、政府との対応、用地取得の点で有利になる」可能性があると述べた。

スターバックスにも、すでにその道筋は見えている。同社は11月、中国での戦略的パートナーシップを検討中だと発表した。米マクドナルドは中国・香港事業の過半数の株式を中信などの投資家に売却し、この提携策でおおむね成功を収めたとされるが、この先例に倣う可能性がある。

先週ロイターが報じたように、スターバックス中国事業への出資に興味を示している投資会社としては、KKR、ファウンテンベスト・パートナーズ、PAGなどのほか、中国の国営コングロマリット華潤創業やフードデリバリー大手の美団といった名前が挙がっている。

スターバックスはこの記事に関するコメントを控えた。

<挽回は可能か>

中国での業績回復に成功すれば、昨年8月に就任したスターバックスのブライアン・ニコル最高経営責任者(CEO)にとって、低迷するグローバル事業を再活性化する強力な追い風になるのは確実だ。

同社の収益は直近の四半期に急減速し、1100人の人員削減を発表した。中国に限れば4四半期連続で減少しており、てこ入れをすべく事業再編を進めている。2024年度の中国での純収入は約30億ドルで、世界全体での5分の1を占めている。

市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルのデータによれば、スターバックスの中国での市場シェアは、2019年の34%から24年には14%まで低下した。1999年に中国に進出し、もっぱらお茶を愛好していた社会にコーヒー文化の扉を開いた同社にとって、あまりにも急激な凋落(ちょうらく)だ。

前出のジャン氏は「戦略的な改革を実行しなければ、スターバックスは今後5年でさらに存在感を失い、中国で首位争いに加わる候補として数にも入れてもらえなくなる」と語る。

アナリストらは、スターバックスが踏み切るべき戦略的な改革には、商品刷新の強化に加えて「人と会い、時を過ごす場」として顧客に選ばれる同社本来の魅力をさらにアピールすることが必須だと指摘する。

ラッキンは現在、中国全土で2万店以上のフランチャイズ店舗を展開しており、スターバックスの7596店を大きく上回っているが、ラッキンは持ち帰りとデリバリーに特化している。

<原点回帰>

スターバックス中国事業の元幹部で、現在は中国市場についてグローバル企業に助言を提供しているジェシカ・グリーソン氏は「人にサービスを提供するコーヒービジネス」ではなく「コーヒーを提供するピープルビジネス」に戻ることがブランド価値を育むと語る。

さらにグリーソン氏は「モバイル注文もデリバリーも完全に理にかなっている」と前置きしつつ、ラッキンのようなより安くコーヒーを提供するという取引を軸とするビジネスモデルに対抗するのではなく、「本来の自社のやり方への集中を取り戻す必要がある」と続ける。

これはニコルCEOの「スターバックスに帰れ」プランとも整合している。この計画のかなりの部分は「語り合い、くつろぎ、コーヒーを楽しむ場所」というスターバックスの原点に回帰しようという取り組みだ。コロナ禍の際に撤去された調味料カウンターも復活したし、バリスタが油性ペンでカップに顧客の名前を手書きする慣習も再開する予定だ。

グローバルな業績回復を目指す動きには、メニューの簡素化、陶器のカップや「もう1杯割引」の復活、カフェでの待ち時間を4分未満に短縮といった内容も含まれる。

ただ中国市場では、メニューの簡素化よりも、製品の改善と「斬新さ」の不足がスターバックスの問題だとされており、依然としてお茶が消費者の人気を集めている。

スターバックスはここ数カ月、現地消費者の好みに合わせたフレーバーを特徴とする中国向けのドリンクメニューを増やす企業努力をしている。グリーソン氏とジャン氏は、この前向きな取り組みには、スターバックス中国でデジタル部門を率いていたモーリー・リュー氏が9月に中国事業のトップとなったことが大きいと見ている。

スターバックス中国では現在、ジャスミンティームースケーキ(36元)や、白桃フラペチーノ(38元から)といった期間限定メニューを提供中だ。

だが上海のコンサルティング会社ヤング・チャイナ・グループの創業者ザック・ダイクトワルド氏は、さらにやるべきことはあるとみており、「現状の改革は市場をリードしているというより、ただ追随しているだけだ」と指摘。もっと迅速に新製品を市場に投入すべきだと続けた。

とはいえ、グリーソン氏によれば、長期的にはラッキンの台頭がスターバックスにとってプラスになる可能性すらあるという。

「スターバックスは『ラッキンが2万店達成か、良いことだ』と考えて、ラッキンが新たにコーヒー愛好者を生み出したことに感謝すべきだと思う。将来的に、コーヒーも飲んでみようと思ってくれる顧客が増えたのだから」

(翻訳:エァクレーレン)

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