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ポストコロナ時代に注目される「リカーリングビジネス」。これは、モノを売って終わりではなく、顧客との継続的な関係を築き、その基盤の上に安定的な収益を得ることを目指す考え方だ。たとえば、ソニーはリカーリングへ舵を切ったことで企業変革に成功しつつある。サブスクリプションやシェアリングを含むリカーリングは、デジタルトランスフォーメーション(DX)とも親和性が高い。デジタル化時代の企業戦略として注目されるリカーリングについて詳しく見ていこう。
「リカーリング」は古くて新しいビジネスモデル
「リカーリング(Recurring)」は、英語で「繰り返し」「循環」という意味。ビジネス用語としては、モノを売ったりサービスを提供したらそれ1回きりで終わりなのではなく、繰り返し利用されることで収益をあげるビジネスモデルを指す。
リカーリングのビジネスモデルは古くから存在する。有名な例としては、100年以上前に、米国のカミソリメーカーのジレットが、替え刃の取り替え需要で継続的に収益をあげられるよう米国の主要都市の街頭でカミソリ本体を無料で配った「ジレットモデル」がある。
また、オフィス用のコピー機本体の価格を下げ、インクや用紙の販売で継続的に収益をあげる「ゼロックスモデル」もリカーリングだ。どちらも、替え刃やインク、用紙の提供を通じ、ユーザーがカミソリやコピー機と長期的な関係を築くビジネスである。
日本でも、家庭に薬を置いて使った分だけ後で集金する「富山の置き薬」は、顧客と長期的な関係を築いて収益を得るリカーリングの考え方に基づいていると言える。また、茶道の師範が茶道具を、華道の師範が花器や花を、日舞の師範が着物や和装小物の推奨販売で収益をあげるのも、弟子との長期的な関係を基盤とするリカーリングビジネスだ。
さらに例を挙げれば、マンションデベロッパーの子会社にマンション管理会社がある背景には、分譲後に月々の管理費からリカーリング収益を得ようという意図がある。リカーリングビジネスの範囲は非常に広く、電気・ガス・水道・電話代も、ロボットやエレベーター、医療機器の保守料金も「長期的な関係に基づく継続的な収益」に相当する。
前途洋々のサブスクもリカーリング
「定額制」でモノやサービスを利用する「サブスクリプション(サブスク)」は、日常生活でかなり定着してきたが、これもリカーリングビジネスに含まれる。
たとえば、「Spotify」「Apple Music」のような定額ストリーミング音楽配信サービスは、ユーザーがCDや楽曲データのダウンロードで楽曲を「所有」していなくても、定額料金で好きな曲を好きな時間に何度も繰り返し聴いて「利用」できる。
そんな「所有から利用へ」というコンセプトは、サブスクリプションやシェアリングのコンセプトであるとともに、リカーリングの本質的な価値だ。
ICT総研が2020年2月に発表した「2020年 サブスクリプションサービスの市場動向調査」によると、2017年に8,720億円だったサブスクリプションサービスの国内市場規模は、2年後の2019年には31.1%増の1兆1,440億円に伸びた。
さらに2023年までの4年間で25.6%成長し、市場規模は1兆4,370億円に達すると予測されている。中でも伸びが大きいのは音楽配信、動画配信などのデジタルコンテンツで、2019年の4,050億円から2023年の5,570億円へ、37.5%成長すると見込まれている。
「所有から利用へ」で現代人の心をつかんでいるサブスク、シェアリングを含むリカーリングビジネス全体も、将来の成長性があることは疑いないだろう。すでに、リカーリングによって業績が回復した有名企業がある。それは他ならぬ、世界のソニーだ。
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