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2020年代、シェアリングエコノミー(共有経済)は大きく伸びると見込まれている。その中でスキルのシェアに該当する「家事関連シェアリング」は、生活に密着しているだけに利用に前向きな声も多く、今後の成長が期待できそうだ。新型コロナウイルス感染対策のための「巣ごもり」生活で、家事の負担が増え、悲鳴をあげている家庭などで潜在的な需要が掘り起こされたことも大きい。「家事シェア」は、ポストコロナ時代に大きな花が開くかもしれない。
巣ごもり生活で需要再認識「家事シェア」
2020年に入りまだ4カ月しか経過していないが、今年の「新語・流行語大賞」の最有力候補は「コロナ」だろう。新型コロナウイルスによる肺炎が世界的に大流行し、南極を除く全大陸で感染者、死者は増加の一途をたどった。このままでは中世のヨーロッパで猛威をふるったペストのような歴史に残る疫病になりそうな勢いがある。
日本では東京五輪・パラリンピックが1年延期になり、各種イベントは次々と中止。感染拡大を防ぐために最初は7都府県、次いで全国を対象に外出自粛の「緊急事態宣言」が発令された。会社員は出勤を控えて在宅勤務(テレワーク)をするように奨励され、多くの店舗や施設は休業を要請され、子どもたちは学校や幼稚園や保育所に通えず、外で遊べなくなった。
そのため、家族そろって「巣ごもり」中の多くの家庭では掃除、洗濯、料理、子育て、介護など主婦(主夫)の家事負担が増し、悲鳴があがっている。この経験により、家事を手助けして負担を少しでも軽減してくれる「家事関連のシェアリングサービス」の潜在的需要が掘り起こされた。
家事関連シェアリングサービスを提供する企業には、子育てや介護などで密接な接触が必要になる業務もある。そのため、現状では休業や業務縮小を余儀なくされているところがあるが、危機を克服した後のポストコロナ時代には、大きく成長するビジネスの有力候補になりうる。家事関連シェアリングの成長は、実は“コロナ前”から見込まれていた。以下で、その理由を説明しよう。
市場規模1,100億円超えのシェアリングエコノミー
シェアリングエコノミー(共有経済)とは、不特定多数の企業や個人が持つ財産やスキルを、他の企業や個人が必要な時に利用でき、提供者がサービスの対価を受け取る経済活動のことだ。自動車を提供するカーシェアリングはすっかりポピュラーになり、旅行者に個人住宅を提供する「民泊」や、会員制のファッションシェアリング、スマホ充電器のシェア、外国語通訳のスキルシェアなど、さまざまな業態がある。
提供者と利用者のマッチング(仲介)や利用申し込みの手続き、コミュニケーションツールとしてネットのプラットフォームやソーシャルメディア(SNS)を積極活用するのが大きな特徴で、人材のクラウドソーシング、資金調達のP2P型クラウドファンディングもその一類型とみなされている。
矢野経済研究所が2019年10月に発表したレポート「2019シェアリングエコノミー市場の実態と展望」によると、その国内市場規模(事業者売上高ベース)は2023年度で1,691.4億円と予測され、2017年度の実績値766.35億円と比べると6年で約2.2倍に拡大し、CAGR(年平均成長率)は14.1%という成長市場である。
経済産業省が2020年3月に発表した「シェアリングエコノミーに関する実態調査」によると、2019年9月1日時点におけるシェアリングエコノミーの年間取引高は「自動車」「自転車」「ファッション」などの「モノのシェア」のカテゴリーが群を抜いて大きい。それに次ぐのが「シェアハウス」や「宿泊(民泊)」「駐車場」などの「場所のシェア」だった。
スキルや能力を提供する人と、その活用を希望する人をマッチングさせるような「スキル等のシェア」は179.6億円で、全体では1.1~1.2%程度にすぎない。しかし、スキルシェアの分野が成長する可能性は、決して小さくはない。
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