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  • 2023/12/21 掲載

日本でのライドシェア導入はなぜ進まないのか?誰が賛成していて誰が反対しているのか

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見知らぬ人同士が相乗りする、いわゆる「ライドシェア」が2024年4月にも大幅に緩和される見通しになっています。海外では一般的なライドシェアですが、メリットもデメリットもあり、日本では導入されてこなかった経緯があります。サービスの提供側となる米ウーバー・テクノロジーズの日本法人は、最新の本人確認手法などデジタル技術の力によって危険性を抑えられると主張。導入によるビジネス環境の変化に危機感を募らせているタクシーの業界団体は、安全性やさまざまな犯罪などのリスクの大きさなどに難色を示しています。デジタル庁で開かれた専門家会合では、異なる立場の双方の意見が真っ向から対立していました。
執筆:飯田 和樹、編集:川辺 和将

執筆:飯田 和樹、編集:川辺 和将

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議論の背景には深刻化するドライバー不足がある
(出所:厚労省資料を基に国交省が作成したものをもとに作図)

政府がライドシェアを持ち出した背景

 ライドシェアは、日本語で「相乗り」を意味します。もともとはヒッチハイクのようにアナログな形態を含む広い意味合いを持っていましたが、最近ではプラットフォームが運営するオンライン上のマッチングシステムなどを通じ、車や時間が空いている一般ドライバーが移動サービスを提供すること、といった定義が定着しつつあります。

 政府がライドシェアの導入案を持ち出した理由の一つとして、地方などにおける交通サービスが不足していたり、限界に近づいていたりすることが挙げられます。人口減少を背景に公共交通システムの維持が難しくなる中、高齢化によって買い物や通院といった日常的に不可欠な移動が困難な住人が増えているのです。また、一部の観光地では旅行需要の増加も移動サービスの供給不足に拍車をかけています。

 ドライバーのなり手不足が深刻化する中、ライドシェアを導入すれば地域のリソースを活用しながら地域の交通手段を確保・維持できるという期待論があります。

タクシー業界団体による衝撃の試算の中身

 ただ、ライドシェア導入をめぐっては、見知らぬ人どうしが閉ざされた空間を共有することについての安全性に関する懸念の声もあります。

 政府が11月に開いた専門家会合(デジタル庁の地域産業活性化ワーキンググループ)では、ライドシェアの導入に難色を示している全国ハイヤー・タクシー連合会が参加し、意見を述べました。

 同連合会の提出資料によると、米国版ライドシェアでは2020年の1年間で998件の性的暴行事件が発生。65万回に1回の確率という計算で、これは日本のタクシー(2950万回に1回)の約45倍にあたる水準といいます。

 その上で同連合会は、日本でのライドシェアの解禁によって、年間100件近くの性的暴行事件が発生するとの試算を提示しました。

画像
2020年の犯罪発生状況の日米比較
(出所:国交省公開情報を基にした連合会提出資料より)

 連合会の代表者は会合で「『海外でライドシェアに乗ってみたけど、良かったよ』とよく言われる。私も海外に行ったら乗ることがあるが、個人で乗るのは1000回、2000回というレベル。65万回で性犯罪が起こるのだから、(個人として)乗ってよかったというレベルの話ではない」と話しました。

 また、米国版ライドシェアでは身体的暴行事件による死亡が1年間で11件(日本のタクシーは0件)、交通事故による死亡が42人(同16人)、それぞれ発生しているとのデータを示しました。

 その上で代表者は日本のタクシー会社におけるアルコールチェックなどの運行管理や、毎日多数の項目について行われる車両点検など、安全性を確保するためのさまざまな取り組みを紹介。ライドシェア導入よりもタクシーの運行に関する規制を緩和して新規参入を促すほうが、供給不足の解消と安全性を両立するうえで有効と主張しました。 【次ページ】人間の「あの動作」を抜き打ち確認、ウーバーの犯罪防止策
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