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中心市街地の核店舗として営業してきた百貨店の閉店が全国で加速している。人口減少と若者の百貨店離れ、インターネット通販との競争などが原因で、中心市街地の空洞化にますます拍車がかかりそうな状況。地方都市の多くが百貨店など大型商業施設を核にしてコンパクトシティの実現と中心市街地の活性化を目指しているが、成功例はほとんど見当たらない。明治大政治経済学部の飯田泰之准教授(経済政策)は「大型店誘致の再開発は家賃高騰で地元店や個人店出店のハードルを高め、経済的に貴重な地元経営の拡大に悪影響がある可能性も高い」と地方自治体の手法に疑問を投げかけている。
京都市のラクト山科、大丸山科店が撤退
JR西日本、京阪電鉄、京都市営地下鉄が乗り入れる京都市山科区の山科駅(京阪は京阪山科駅)。駅前にある地下1階、地上6階建ての再開発ビル「ラクト山科ショッピングセンター」は、館内の一部にシャッターが下ろされている。3月末までラクト山科の核店舗として営業していた大丸山科店が撤退した跡だ。
山科区は京都市や大阪市のベッドタウンとして宅地開発が進んでいるが、駅前は狭い道路が続き、商業施設の集積もほかの行政区に見劣りしていた。それを打開しようと整備されたのがラクト山科で、1998年の街開きに合わせて大丸山科店がオープンした。
大丸山科店は当初、地下1階から地上4階までを売り場にしていたが、予想に反して売り上げが低迷、2011年に3、4階の売り場を閉鎖した。しかし、それでも経営が好転せず、2018年2月期で1億円を超す営業損失を計上、撤退を決めた。
駅前でバスを待っていた女性(46)は「大丸という格式高い百貨店の存在は地域の自慢だった。その大丸がなくなって駅前のにぎわいが減った気がする。このままでは地域の活気も失われてしまうのではないか」と不安そうに語った。
ラクト山科を運営する京都市の第三セクター京都シティ開発は、大丸跡に良品計画が運営する「無印良品」を誘致した。無印良品山科店は11月、オープンの予定。京都市市街地整備課は「大丸の後継として山科のにぎわいを創出してほしい」と期待する。
ラクト山科は大都市圏の一角に位置するためか、運よくすぐに後継店が見つかったが、地方都市では後継店を誘致できない地域が少なくない。このため、商業施設を自治体が買い取り、公共施設とする苦肉の策も珍しくなくなってきた。
山口井筒屋宇部店跡、宇部市が複合開発へ
かつて炭鉱の街として栄えた山口県宇部市では、2018年12月に閉店した山口井筒屋宇部店の跡地利用で自治体や経済団体の迷走が続く。
店名 |
所在地 |
利用方法 |
きたみ東急百貨店 |
北海道北見市 |
市役所、商業施設 |
十字屋山形店 |
山形県山形市 |
ホテル |
福田屋百貨店栃木店 |
栃木県栃木市 |
市役所、商業施設 |
西武沼津店 |
静岡県沼津市 |
商業施設 |
高島屋和歌山店 |
和歌山県和歌山市 |
商業施設 |
近鉄松下百貨店 |
山口県周南市 |
一時市役所仮庁舎 |
とでん西武 |
高知県高知市 |
パチンコ店 |
高松天満屋 |
香川県高松市 |
商業施設 |
閉店した主な地方百貨店跡の利用方法
(出典:各社ホームページ、地元自治体への聞き取りから筆者作成)
山口井筒屋宇部店は地下1階、地上4階の建物で、宇部市役所に近い常盤通り沿いで営業していた。約7700平方メートルの売り場面積で市内唯一の百貨店として人気を集めたが、売り上げの減少と施設の老朽化で撤退となった。
常盤通り周辺は宇部市の中心市街地。山口井筒屋宇部店の撤退が決まったあと、宇部商工会議所が跡地を購入し、中心市街地の核店舗となる複合施設とする方針を打ち出したが、3月の宇部商議所の臨時議員総会で否決され、白紙に戻った。
やむなく宇部商議所の有志が約1億4000万円の寄付を集めて宇部市に買い取りを要請した。宇部市は5月に跡地を取得し、建物を解体して複合施設を新築するか、既存施設を改修して活用を続けるのか、検討を進めている。
新築、改修のいずれの場合も商業施設と公共施設の入居で中心市街地の核となる施設にする方針。宇部市総合戦略局は「11月ごろに方向性を示し、市の中心市街地活性化基本計画に盛り込みたい」と述べた。
【次ページ】「公共施設でにぎわい創設」を目指す自治体も
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