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人工知能(AI )やビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市設計の動きが国際的に急速に進展している。内閣府は、2030年頃に実現される最先端都市「スーパーシティ」構想に実現に向けて、国家戦略特区制度を活用し、2019年夏以降に公募で選定した複数の自治体で実証を開始する予定だ。政府は2030年の街づくりについてどんな構想をしているのか。
内閣府が推進する「スーパーシティ」構想とは
内閣府の国際戦略特区は2018年11月末、「第3回『スーパーシティ』構想の実現に向けた有識者懇談会」を開催した。第四次産業革命を先行的に体現し、革新的な暮らしやすさを実現する最先端都市「スーパーシティ」構想の考え方をとりまとめた中間報告書を公表した。
世界最先端の技術を実証するだけが目標ではない。第四次産業革命後に国民が住みたいと思う、より良い未来の社会、生活を包括的に先行実現するショーケースづくりを目指している。
「スーパーシティ」の基本の構成要素として、以下の4つを挙げている。
- 未来像
- 住民の参画
- 強い首長
- 技術を実装できる企業
「未来像」では、物流や医療・介護、教育など領域にまたがる社会の未来像の先行実現を目指している。
<未来像の構成要素(10分野)>
- 移動:自動走行、データ活用による交通量管理・駐車管理など
- 物流:自動配送、ドローン配達など
- 支払い:キャッシュレスなど
- 行政:ワンスオンリーなど
- 医療・介護:AI ホスピタル、データ活用、オンライン(遠隔)診療・医薬品配達など
- 教育:AI 活用、遠隔教育など
- エネルギー・水:データ活用によるスマートシステムなど
- 環境・ゴミ:データ活用によるスマートシステムなど
- 防災:緊急時の自立エネルギー供給、防災システムなど
- 防犯・安全:ロボット監視など
内閣府では、10分野のうち少なくとも5つの領域以上で、実証事業レベルではなく、2030年頃に実現される未来像を域内限定で完全実施することを目指している。
「スーパーシティ」の実現にあたっては、領域を超えた横断的データ連携基盤の構築に向けた実装技術について、イメージ図をまとめている。
横断的データ連携基盤構築にあたっては、セキュリティやサイバーテロ対策などのデータを適正に管理する。また、データ連携のため、必要な通信基盤・センサー・デバイスなどを埋め込んだインフラ整備にも取り組んでいくという。
「スーパーシティ」構想実現で変わる暮らし
では、「スーパーシティ」構想の実現で国民の生活はどう変わるのだろうか。
街なかでは、キャッシュレス、自動走行・自動配送、自動ゴミ収集の利用イメージを紹介している。
ここで、キャッシュレスの最近の動きを紹介したい。日本では、海外諸国と比較して、キャッシュレス化の進展が遅れている状況にある。
こういった背景を受け、政府では、今後10年間(2027年6月まで)でキャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とする目標を掲げている。
政府は、2019年10月に実施予定の消費税の税率引き上げにあたって、キャッシュレス決済した消費者へのポイント還元を検討している。ポイントを発行するカード会社などを通じて還元し、会社負担分を政府の予算で補助することを視野にいれている。
キャッシュレス社会の実現に向けて、民間企業の動きも加速している。ソフトバンクとヤフーの共同出資会社の「PayPay(ペイペイ)」は2018年12月4日より、総額100億円を還元する「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施し、開始から10日間で目標に当達するほど注目された。
1回のPayPay支払いごとに、最大20%が「PayPayボーナス」としてPayPay残高に還元され、総額100億円がすべて還元される規模のキャッシュレス利用が進んだ。単純計算で500億円がキャッシュレスで流通することになり、キャッシュレス社会の実現に向けた大きな足がかりとなる可能性を見せた。
【次ページ】「スーパーシティ」構想実現のための条件