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  • 2018/11/01 掲載

FIWAREとは何か? 基礎からわかるスマートシティ標準のIoTプラットフォーム

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「官民データ活用推進基本法」などの法整備が進むことで、日本でもスマートシティへの取り組みが本格化し始めた。ただし、その推進に向けた“壁”の1つが、システムごとに独自フォーマットで管理されたデータの整備だ。その解決に向け注目を集めているのが、欧州の官民連携プロジェクトで開発/実証された基盤ソフトウェアの「FIWARE(ファイウェア)」である。本記事では、FIWAREの仕組みやメリット・デメリットについて解説する。
執筆:フリーライター 岡崎勝己 監修:NEC 未来都市づくり推進本部 主任 木野下竜也

執筆:フリーライター 岡崎勝己 監修:NEC 未来都市づくり推進本部 主任 木野下竜也

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スマートシティ向けIoTプラットフォーム「FIWARE」とは?

FIWARE誕生の背景、データ公開における課題とは?

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 IoT活用の代表例と言えるのが、街中から収集されるデータを基に都市運営の高度化を目指す、いわゆるスマートシティだ。そのためのプロジェクトはグローバルで本格化。国内でもデータのオープンデータ化を国や自治体に義務付ける「官民データ活用推進基本法」が2017年に施行されことで、実現に向けた動きが加速している。

 ただし、スマートシティの仕組み作りには、技術的な課題も数多く残されている。その代表格が「データをどう共有し活用するか」だ。スマートシティの出発点は自治体が保有するデータの活用であり、そこで目指すべきは“使いやすい”形での公開だ。ただし、行政の現場では多様なデータがシステムごとに独自フォーマットで管理され、使う先のアプリケーションも企業や目的ごとにさまざま。そうした環境での共有法の見極めは現実的に極めて困難だ。

 また、スマートシティ向けの仕組みは、データ活用の試行錯誤による継続的なてこ入れが必要で、従来型の開発が馴染みにくいのも難点だ。開発手法を見直す手もあるが、プロジェクトの性格上、予算と人材の両面で難しい面があるのは否めない。

 とはいえ、これらへの対応を抜きには仕組みの整備、施策の高度化、さらにプロジェクトへの参加企業の増加も難しく、ひいては、将来的な成果もそれだけ削がれかねない。

 では、状況の打開に向けどんな策が考えられるのか。そこで今、注目を集めているのが、欧州の官民連携プロジェクトで開発/実証された基盤ソフトウェアの「FIWARE(ファイウェア)」である。

FIWAREとは何か? 柔軟性の高いデータモデルで統合管理が可能に

 FIWAREとは分野横断的なデータ流通に主眼を置いたデータ管理基盤といえる。7カテゴリー、約40種のモジュール群で構成され、用途に合わせて自由に組み合わせて利用できる。各モジュールは、OMA(Open Mobile Alliance)で標準化された「NGSI(Next Generation Service Interface)」で規定されており、これを通しでデータの受け渡しが行われる。

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従来のスマートシティサービス(左)とFIWAREで実現するスマートシティサービス

 モジュール群の7カテゴリーは以下の通り。

・DATA/CONTEXT:コンテキスト管理、データ・メディア統合
・Internet of Things:IoTデバイスのサポート
・Advanced UI:3DやAR機能付きWeb UI等
・Security:セキュリティ・モニタリング認証、アクセス管理
・Interface to Networks and Devices (I2ND):ネットワーク、ロボット制御等
・APPS:可視化、ダッシュボード、データセット/サービスの公開
・Cloud:クラウド環境

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FIWAREのメリット

 FIWAREのメリットとしてまず挙げられるのが、低コストかつ効率的な基盤開発が可能なことだ。モジュールはいずれもOpenStackやHadoop、ckanなど、新旧を含めたOSSをベースに開発されており、そのリファレンス実装は「FIWARE Catalogue」としてWebで広く公開されている。あとは雛形を参考に、必要なモジュールを組み合わせたり、機能を独自に追加したりなどの作業で、ライセンス費用の負担なくシステム環境を整備できる。

 そのうえで注目されるのがFIWAREならではのデータの管理性の高さだ。その秘密は実世界の多様な情報を抽象化して表現可能な独自のデータモデルにあり、たとえば温度センサーであれば、その属性である『温度』と、属性値である『摂氏』『20』『設置場所』など、多様なデータを『コンテキストデータ』として格納できる点にある。また、ネットワーク経由でのデータ検出/取り込みのためのAPIも用意されている。

 これらの特性から、FIWAREは物理的に散在する多様なデータの統合管理を実現。かつ、NGSIメッセージに基づきコンテキストデータから「摂氏」や「華氏」といったデータごとの意味の違いを“吸収”したり、必要と判断されるデータを抽出したりといった機能モジュールを組み合わせることで、アプリケーションごとの適切なデータ提供や、他のIoTプラットフォームとのデータ共有が可能となる。

 加えて、FIWAREではアプリケーションとデータがNGSIにより、いわば“疎結合”となることで、システム改修の手間とコストをそれだけ軽減できる。結果、システムの見直しや新サービスの追加も容易となり、成功したプロジェクトのデータモデルを参考に、取り組みの横展開もそれだけ容易になる。すでに「環境」「交通」「廃棄物管理」「天候」などの領域でいくつものデータモデルが公開されている。

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図2:スマートシティにおけるエリアデータ連携の代表的なアプローチ

【次ページ】FIWAREの市場動向、25か国に利用は拡大
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