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今や「イノベーション」はすべての企業にとって喫緊の課題である。しかし、日本企業はイノベーションを起こしにくい環境だと言われてる。リスクを取ることに消極的な経営陣、減点法の人事査定、右肩下がりの研究開発費など、その要因はさまざまだ。このような状況の中、日本の企業はどのようにイノベーションを生み出していけばいいのか。経産省が示す「12の行動指針」を踏まえ、日本のイノベーションの未来像を考える。
1万人を超えた上場企業の「希望・早期退職」
ビジネス環境の変化が激しく、人口減少社会に突入した日本では、どの企業にも「新規事業」や「イノベーション」が必要である。一方、有能な人材の採用は困難であり、多様性を確保することができない状況が続いている。足元では、次世代ビジネスへの構造変化や人材確保に備えるべく、従業員数の削減をしているという企業が増えている状況だ。
たとえば、東京商工リサーチがこの10月に発表した「2019年 上場企業『希望・早期退職』実施状況」によると、2019年1~9月に希望・早期退職者を募集した上場企業は27社に達し、対象人数は1万342人と、6年ぶりに1万人を超えたという。
「上場企業の希望、早期退職実施社数」はすでに2018年(1~12月)の12社を大幅に上回って2014年の32社に迫り、人数も2010年(同)の1万2223人を超える勢いだ。業種別では、業績不振が目立つ電気機器が8社のトップで、薬価引き下げや国外メーカーのライセンス販売終了などを控えた製薬が4社で続いている。
早期希望退職者の募集人数は、最多は富士通の2850人、非開示だが東京商工リサーチの取材で判明したルネサスエレクトロニクスの約1500人、経営再建中のジャパンディスプレイの約1200人、子会社の売却、事業など選択と集中を進める東芝が1060人と続いている。
また、アステラス製薬や中外製薬、カシオ計算機、キリンホールディングスなど、業績が堅調な企業が先を見据えた「先行型」の募集も目立つ。バブル期に大量入社した40代から50代社員による年齢構成の"逆ピラミッド状態"の是正のほか、事業の絞り込み(選択と集中)、外部人材の登用による活性化など、新陳代謝を急ぐ企業が増えているという。
日本企業でイノベーションが生まれにくい理由
日本の上場企業は、人員削減数が例年を上回る状況だけでなく、研究開発投資やベンチャー企業への投資なども低調だ。企業はコスト削減や投資抑制の優先度が高くなり、多くの日本企業が成長曲線を描けず、イノベーションを生み出しにくい環境に陥っている
破壊的イノベーションに対する日本企業のアンケート調査によると、66%の企業が日本企業は革新的イノベーションを起こしにくいと回答している。起こしやすいと回答しているのが18.1%で、実に3.5倍以上の開きがある。
その理由としては、「リスクをとることに消極的な経営」との回答が67%と最も多く、続いて「労働市場の流動性不足」が33.1%、「高度人材の不足」が22.3%となっている。「リスクをとることに消極的な経営」が約3分の2を占める状況では、イノベーションが生まれ、新たなサービスが生まれる可能性は期待できないのは当然だ。
そういった状況は調査にも表れている。経済協力開発機構(OECD)によると、製造業やサービス業において新製品や新サービスを投入した企業の割合は、先進国の中で日本が最下位である。日本経済を支えてきた製造業から新製品や新サービスが生まれにくい状況が続けば、日本経済の地盤沈下に歯止めがかからないだろう。
GAFAとは比較にならない、お粗末な研究開発費
2018年度のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と日本の大企業の研究開発費を比較すると、GAFAと日本の大企業研究開発費は大きな差がある。2018年度のアマゾンの研究開発費が3兆2000億円に対し、日立製作所は3000億円と、おおよそ10倍超だった。
GAFAと日本の大企業の売上高研究開発費比率を比較すると、2018年度の米国のGAFAは、日本の大企業より売上高研究開発費比率(研究開発費÷売上高)は大きい。
また、日本企業は、営業利益に対する設備投資や研究開発費の比率が下がっているが、米国企業は大きく伸ばしている。各指標の推移(日米比較)(2011年=「100」で指数化)でみると、その差は一目瞭然だ。
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