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  • 2024/06/28 掲載

AI事業者ガイドラインとは何か? 経産省と総務省謹製「日の丸AI」基準の書

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政府はこの4月、AIガバナンスの統一的な指針を示すため「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」を策定した。生成AIの普及を踏まえ、総務省や経済産業省が策定した既存のガイドラインなどをに関して、必要な改訂を施した格好だ。本記事では、「AI事業者ガイドライン」の策定方針や基本的な考え方、基本理念や指針、そして今後の展望などについて解説する。
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AI事業者ガイドラインとは何か?
(Photo/Shutterstock.com)

AI事業者ガイドラインとは何か

 「AI事業者ガイドライン」とは、総務省と経済産業省が2024年4月19日にAIの普及をはじめとするデジタル技術の急激な変化に対応するために作成された公文書である。AIの普及に対応するための指針として、AI開発者や提供者、利用者という3者の立場から、基本理念や指針、実践の方法を明らかにし、AIの安全な活用を目指している。

 AI事業者ガイドラインは、内閣府が2019年に公開した「人間中心のAI社会原則」を土台に総務省の「AI開発ガイドライン(2017)」「AI利活用ガイドライン(2019)」、経産省の「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン(2022)」という3つのガイドラインが統合されている。

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「AI事業者ガイドライン」の策定方針
(出典:総務省/経済産業省 AI事業者ガイドライン案 2024.1)

 このガイドラインでは、AIを活用する事業者がAIの社会実装およびガバナンスを共に実践するとともに、安心安全なAIの活用のための望ましい行動につながる指針として位置づけている。

 またガイドラインは、政府が単独で主導するのではなく、教育・研究機関や一般消費者を含む市民社会、民間企業などが構成するマルチステークホルダーでの検討を重ね、実効性と正当性を重視したものとして策定されている点も特長である。

AIの事業活動を担う3主体と「リスクベースアプローチ」

1ページ目を1分でまとめた動画
 AI技術の急速な発展とその社会実装が進む中で、その利用に伴うリスクと便益のバランスをいかに取るかが、企業や社会にとっての大きな課題とである。

 特定の分野でのAI利用は社会に大きな利益をもたらす可能性があるが、不適切な利用は社会的な軋轢(あつれき)を生じさせ、AIのさらなる活用を阻害するリスクを内包している。また、過度な規制や対策は、AI技術の潜在能力を十分に発揮させることを妨げ、社会全体の利益を損なう可能性がある。

 ガイドラインでは、AI利用におけるリスクを事前に把握し、その大きさ(危害の可能性とその発生確率)に応じた適切な対策を講じる「リスクベースアプローチ」を基に、AIガバナンスにおいて企業が取るべき対策の方向性を具体的に示している。

 そして、ガイドラインでは、AI活用によるリスクを適切に管理することや、さらには、AIが人間社会の発展に貢献するための責務を果たすことの重要性を強調している。

 具体的には、「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」という3つの主体に対し、それぞれの責任と期待される行動が定義されている。これらの主体は、AI技術の安全かつ有益な社会への組み込みを目指す上で、重要な役割を担っている。

<AIの事業活動を担う主体>
主体者 概要
AI開発者
(AI Developer)
  • AIシステムを開発する事業者(AIを研究開発する事業者を含む)
  • AIモデル・アルゴリズムの開発、データ収集(購入を含む)、前処理、AIモデル学習、検証を通してAIモデルおよびAIモデルのシステム基盤や入出力などを含むAIシステムを構築する役割を担う
AI提供者
(AI Provider)
  • AIシステムをアプリケーションや製品もしくは既存のシステムやビジネスプロセスなどに組み込んだサービスとしてAI利用者(AI Business User)、場合によっては業務外利用者に提供する事業者
  • AIシステム検証、AIシステムの他システムとの連携の実装、AIシステム・サービスの提供、正常稼働のためのAIシステムにおけるAI利用者(AI Business User)側の運用サポートやAIサービスの運用自体を担う。AIサービスの提供に伴い、さまざまなステークホルダーとのコミュニケーションが求められることもある
AI利用者
(AI Business User)
  • 事業活動において、AIシステム又はAIサービスを利用する事業者
  • AI提供者が意図している適正な利用を行い、環境変化などの情報をAI提供者と共有し正常稼働を継続することや、必要に応じて提供されたAIシステムを運用する役割を担う。また、AIの活用において業務外利用者に何らかの影響が考えられる場合は、当該者に対するAIによる意図しない不利益の回避、AIによる便益最大化の実現に努める役割を担う

 AIの事業活動において、AI開発者がデータ前処理・学習から開発、AI提供者はシステムへの実装・提供、そしてAI利用者が利用するという3つの主体がそれぞれの役割を担うことで、AIの社会実装への展開を進める。

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一般的なAIの事業活動を担う主体
(出典:総務省/経済産業省 AI事業者ガイドライン案 2024.1)
【次ページ】AI事業者ガイドラインの構成と対象範囲とは?
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