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企業のデジタル化の担い手は、IT人材からDX人材へと変化している。経済産業省では、「企業のDX推進」と対をなす「デジタル人材育成」の取り組みとして、「デジタルスキル標準(DSS)」を策定した。デジタルスキル標準は、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つで構成されており、本稿では「DXリテラシー標準」の狙いや推進する上での課題、展望について、経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課 デジタル人材政策企画調整官の平山利幸氏に聞いた。
経産省が定める「DXリテラシー標準」
DXリテラシー標準は、ビジネスパーソン1人ひとりがDXに参画し、その成果を仕事や生活で役立てる上で必要となるマインドやスタンス、知識・スキル(Why、What、How)を定義し、それらの行動例や学習項目例を提示したものだ。
WhyはDXの背景で、社会、顧客・ユーザー、競争環境の変化。WhatはDXで活用されるデータ・技術、Howはそのデータ・技術の利用方法や活用事例、留意点などだ。
これらは、あくまでも「何が必要か」の広がりを描いたものであり、それぞれの項目に段階や習熟レベルといったものは設けていない。それぞれをできるようになることは理想だが、その手前の段階で、必要性・重要性そのものを理解することが、状況を変える前提となるという考えだ。
なぜ経産省が「DXリテラシー標準」普及に注力するのか?
これまでの「IT」の時代では、システムの話が中心であり、システムをいかに効果的に開発し、運用するかが議論の中心だった。そしてそれを担う「IT人材」は、ITベンダーやユーザー企業の主に情報システム部門の人たちが想定されていた。しかし「DX」の時代には、経営のやり方や製品・サービスをデジタル前提で抜本的に見直し、展開していくことが必要になる。
DXリテラシー標準の狙いは、ビジネスパーソン1人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事として捉え、変革に向けて行動できるようになることにある。
「今、世間的にはDXしなければと言われていますが、現実的には『うちの会社に関係があるかどうか分からない』『でも何か“やっている感じ”を出さないと』というくらいのコミット度合いの人も多いだろうと思います」と話すのは、DXリテラシー標準の策定に参画した経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課 デジタル人材政策企画調整官の平山利幸氏である。
DXリテラシー標準には、そのような経営者に向けて、2つのメッセージが込められている。1つは、デジタルの影響、デジタルによる変化は「不可逆」だということ。
「今、1人1台スマホを持っている中で、スマホがない時代に戻れるでしょうか。調べものはもちろん、買い物の決済に使ったり、旅行の予約をしたり、電子書籍や雑誌を読んだり、いろんなことに影響を及ぼしました。この変化からは、誰も逃れられません。ですから、経営者として10年後に自社のビジネスがどうなっているかを想像してみることが非常に大事。想像してみて、何らかの危機感を覚えるのであれば、自分事としてDXを捉えることがやはり必要だと思います」(平山氏)
メッセージのもう1つは、外部に“丸投げ”できないということ。
ITの時代にも、経営者のコミットが大事ということはいわれてはいた。でも実際のところは、情報システム部門に任せきりだったり、外部の専門家やITベンダーに“丸投げ”したりというケースも多かったのではないだろうか。
「DXは、デジタルを前提として従来とは違うビジネスモデルを新たに創り出すことですから、それを考えたり実行したりできるのは経営者しかいません。そのため、デジタルとは何なのか、使われる技術はどういうものなのか、それが自分にとってどういう意味があるのかを経営者は知っていなければなりません」(平山氏)
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