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キャッシュレス市場が加熱している。先行する非接触ICを使ったキャッシュレス決済サービスに対して、後発のバーコードやQRコード(二次元コード)による決済(以下コード決済)サービスにさまざまな事業者が参入し、大規模な利用者還元キャンペーンを展開するなど、激しい競争を繰り広げている。今回は、このキャッシュレス化の動きを後押しする政府の取り組みを解説する。
キャッシュレスと政府の「キャッシュレス・ビジョン」
経済産業省は、2018年4月に「キャッシュレス・ビジョン」を発表。2017年に21.3%だったキャッシュレス決済比率を、2025年には40%にまで引き上げる目標を掲げている。内閣官房が2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略 2018」においても、キャッシュレス化の推進は根幹部分と位置づけられている。
本ビジョンにおける「キャッシュレス」は、「物理的な現金(紙幣、硬貨など)ではなく、デジタル化された価値の移転を通じて活動できる状態」を指している。
現状の主なキャッシュレス決済手段では、「前払い(プリペイド)」「即時払い(デビット)」「後払い(クレジット)」の支払い方法があり、決済方法としては「接触型(指し込み式)」「非接触形型(タッチ式)」「コード型(CPM/MPM)」がある。
キャッシュレスを後押しするとみられているのが、消費税増税後と2020年の東京オリンピック/パラリンピック、2025年の大阪・関西万博開催のタイミングだ。
政府は、2019年10月の消費税増税後、消費者が小売店で商品を購入する際にキャッシュレス決済をすれば、2~5%のポイント還元を9カ月限定で実施することを決めている。
東京オリンピック/パラリンピックや大阪・関西万博でも、キャッシュレスの利用頻度の高い訪日観光客(インバウンド)の増加に対応する店舗やサービスの増加が予想されている。
「キャッシュレス・ビジョン」の推進に向けた取り組み
こうした背景を受け、政府では「キャッシュレス・ビジョン」の具体的な推進に向けて、2018年7月、業界横断で産学官が連携する組織として「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」を設立した。
キャッシュレス推進協議会は、2019年4月11日、「キャッシュレス・ロードマップ 2019」を公表した。本ロードマップでは、10年後の「キャッシュレス社会の将来像」を提起し、消費者、店舗、決済事業者、行政・自治体などのすべてのキャッシュレスに関するステークホルダーが、キャッシュレス社会の実現に向けた活動を加速するための方向性を示した内容となっている。
本協議会では、決済系各社が足並みをそろえたキャンペーンを実施することで、一層の利用を促すことを目的とし「GO! CASHLESS 2020(ゆくぞ! 日本全国どこでもキャッシュレス)」の取り組みを行っている。
第一弾は、3月のプレミアムフライデー(3月29日)にキャッシュレスを展開する27社が「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」と銘打ち、キャンペーンを実施した。
第二弾は、4月のプレミアムフライデー(4月26日)とその後の10連休を「キャッシュレス・ウィーク」と称して、一斉キャンペーンを行った。各社のキャンペーンのまとめは、
本協議会のサイトから確認できる。
消費税率引き上げに伴うキャッシュレス利用者に対する還元事業
経済産業省とキャッシュレス推進協議会では、2019年度から「キャッシュレス・消費者還元事業」も行っている。先述したように、2019年10月1日の消費税率引き上げに伴い、キャッシュレス対応に消費費税率引上げ後の9カ月間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する事業だ。
本事業の対象となるのは、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードなど電子的に繰り返し利用できる決済手段で、主な支援内容は以下の通りとなっている。
<実施期間>
2019年10月からの9か月間、2020年6月まで。
<支援内容(一般の中小・小規模事業者の場合)>
消費者還元5%。加盟店手数料率3.25%以下への引き下げを条件とし、加盟店手数料の1/3を国が補助。中小企業の負担ゼロで端末導入(1/3を決済事業者、残り2/3を国が補助)。
<支援内容(フランチャイズなどの場合)>
消費者還元2%(端末費用および加盟店手数料の補助はなし)
<対象となる決済手段>
クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードなど一般的な購買に繰り返し利用できる電子的決済手段。要件として、「日本円でのチャージが可能な決済サービス、日本の金融機関の口座を利用する決済サービスであること。
【次ページ】モバイル端末を用いたキャッシュレス決済手の規格統一に向けた取り組み
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