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2018年6月、政府は総理大臣官邸において「未来投資戦略2018」を閣議決定した。そこでは、大胆な税制、予算、規制改革など、あらゆる施策を総動員して「Society 5.0」の実現を目指すことがうたわれている。今回は、その概要と重点プロジェクトの1つである「次世代モビリティ・システムの構築」を集中的に解説する。
第4次産業革命技術がもたらす変化と「Society 5.0」
この6月、政府は総理大臣官邸で第9回経済財政諮問会議・第18回未来投資会議合同会議を開催し、「未来投資戦略2018」を閣議決定した。
政府では、2017年末の「新しい経済政策パッケージ」で2020年までの3年間を生産性革命・集中投資期間としている。大胆な税制、予算、規制改革など、あらゆる施策を総動員し、「Society 5.0(サイバーな仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会)」の実現に向けて、各種施策の実施を図っている。
今回の「未来投資戦略 2018」では、成長戦略の範囲と期間を広げ、第4次産業革命の技術革新を取り込む。Society 5.0を本格的に実現するため、これまでの取り組みの再構築、新たな仕組みの導入を図るという。
第4次産業革命の新たな技術革新は、豊富なリアルデータを活用し、従来の大量生産・大量消費型のモノ・サービスの提供ではない、個別化された製品やサービスの提供を可能にする。
これにより、さまざまな社会課題を解決し、大きな付加価値を生み、経済社会のあらゆる場面で、大きな可能性とチャンスを生み出す。「Society 5.0」は、それを積極的に展開する社会モデルだ。
政府では、第4次産業革命技術がもたらす変化と新たな「Society 5.0」の展開において、「生活」「産業」から「人材」までの大きな変化を以下のとおりまとめている。
「未来投資戦略2018」において、新たなイノベーションの社会実装やデータ活用によって国民生活が変わる姿を想定している。実際に「現場」を変える先導的なプロジェクトを推進するための重点分野として、以下を挙げている。
●次世代モビリティ・システムの構築
●次世代ヘルスケア・システムの構築
●エネルギー転換・脱炭素化に向けたイノベーション
●FinTech/キャッシュレス化
●デジタルガバメントの推進
●次世代インフラ・メンテナンス・システム/PPP・PFI手法の導入加速
●農林水産業のスマート化
●まちづくりと公共交通・ICT活用などの連携によるスマートシティ
●中小・小規模事業者の生産性革命の更なる強化
次世代モビリティ・システムの構築
今回は、重点分野とフラッグシッププロジェクトの中で、最初に紹介されている「次世代モビリティ・システムの構築」に焦点を当てて紹介する。
「次世代モビリティ・システムの構築」でポイントとなるのが自動化だ。AIやロボットによって、さまざまな分野で自動化が進んでいる。
自動車の運転、物流の分野で自動化が進めば、交通事故の削減や地域における移動弱者の激減や、人手不足に直面する物流現場の効率化につながり、過度な業務負担も大幅に軽減されると期待されている。
また、世界では自動運転の開発・社会実装競争のみならず、移動に関するさまざまなサービス面での競争が加速している。
日本は、自動運転および交通全体の統合サービス・プラットフォームを含む「次世代モビリティ・システム」の実現に向けて施策を展開する。同時に、自動運転のみならず、さまざまなモビリティ手段の在り方、およびこれらを最適に統合するサービス(MaaS:Mobility as a Service)について検討を進めていくという。
「未来投資戦略2018」」では、自動運転の実用化に向けて、以下の2点を中心に目標設定している。
●2020年をめどに、公道での地域限定型の無人自動運転移動サービスを開始
●2030年までに、地域限定型の無人自動運転移動サービスを全国100カ所以上で展開
実証プロジェクトの円滑・迅速な推進では、より実ニーズに近い形態での実証実験を実施し、実証の成果・データを関係者間で共有して、事業化に向けた実証のさらなる高度化を推進していく。
また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見すえて、信号情報を車両と通信するインフラの整備や路車間通信の整備などの環境整備を実施する。
自動運転の実現に向けた制度整備では、「自動運転に係る制度整備大綱」に基づき、安全性に関する要件や安全性確保のためのガイドラインの策定する。安全性の一体的な確保や交通ルール、責任関係など、法制度の整備を早急に進めていく予定だ。
技術開発の推進と協調領域の深化・拡大等では、事故・インシデントに関するシナリオのデータ共有の在り方の検討といった安全評価や、自動運転地図の実用化に向けた地図関連データの整備、サイバーセキュリティリスクへの対応など、自動運転に関連した技術開発の推進などを進めていく。
【次ページ】自動運転移動サービスの4つの事業モデル
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