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人工知能(AI)の手法の1つである機械学習。この機械学習に取り組み始めるのに最適なのは「マーケティング」業務であることをご存じでしたか?本稿では、データサイエンティストである中野高文氏が、BtoBマーケティングおよびBtoCマーケティングでの機械学習活用についても事例を交えながら教えます。リードの獲得や育成、アップセルや解約予測、また広告配信や顧客体験(CX)向上まで、機械学習を使えばどのようなことが実現可能になるのでしょうか。
マーケティングと機械学習が相性抜群の理由
マーケティングは、他部署との折衝や規制が少ないので機械学習の導入が行いやすく、また比較的たやすく効果測定でき、さらにインパクトがわかりやすいので始めるのに適した分野です。
特にECやCRMと言ったデジタルマーケティングでは、元からかなりのデータが蓄積されているケースが多いです。業種に関わらず機械学習が活用されており、事例の多いテーマでもあります。
機械学習によりマーケティング業務が効率化し、パフォーマンス改善につながります。また、単に精度を向上させるだけでなく、これまで特定の人の感覚に頼っていた業務の属人化を防げます。
たとえば人事異動でまったく新しい人間が担当になっても、フォーマット化されたデータを使えば以前と変わらない高精度なターゲティングモデルを運用することが可能です。ではさっそく具体的な活用事例を見ていきます。
B2Bマーケティングでの機械学習活用
B2Bマーケティングは、受注確度の高い有望なリードを獲得し、セールス部門に引き渡すことがミッションです。リードを獲得するだけでなく、そのリードを精査し、顧客化しそうなリードの興味・関心を高め、機が熟したタイミングでセールス部門に引き継ぎます。
引き渡すリードの量が少なければ受注件数は下がりますし、精度が低いとセールス部門の稼働が増える一方で受注率が下がります。マーケティング部門は、リードの質と量を常に意識して活動しなければなりません。
BtoBマーケティングは、以下のようなフローで行われます。
それでは、それぞれのフローでの活用法を紹介していきます。
(1)リードジェネレーション(リード創出)×機械学習
このステップでは、自社についての認知を高めます。まずは、広告やSEOにより見込み客を自社Webサイトやセミナーなどのイベントに集客。集まった人から、名刺や入力フォームでリード情報を獲得します。
機械学習を使って集客時の広告配信を分析すれば、見込み客になり得るセグメントへの配信を最適化できます。
具体的には過去の成約情報を元に、顧客化を予測するモデルを生成します。そこで生成したモデルのインサイトを使って見込みの高いユーザーセグメントを特定。それらのセグメントに限定してDSP(Demand-Side Platform)広告など配信することで、効率的な集客が実現できます。
また、セグメントだけでなく集客チャネルの評価にも機械学習を生かせます。たとえば集客チャネルごとの予算などを変数にして、リード獲得数や成約数を予測する機械学習のモデルを生成します。このモデルを使ってシミュレーションすれば、リード獲得に有効なチャネルを特定でき、最適な予算配分ができるというわけです。
(2)リードナーチャリング(リード育成)×機械学習
獲得したリードに対して、メールや電話などのコミュニケーションを通して、自社への興味・関心、検討度合いを高めるステップです。リードの情報ニーズに合わせたコンテンツを提供できれば、興味・関心を高められますが、関係のないコンテンツを送ったり、高頻度でメールを送ると、効果がないばかりではなく、今後メールが開封されなくなるなどマイナスの影響を与えることがあります。
機械学習を使えば、過去のメールの開封率やコンテンツの閲覧状況、CRMの情報(業種、部署、役職など)を変数として、開封率や契約確率を予測。反応が高いセグメントだけにメールを配信することができます。
またそれだけでなく、次のベストアクションを予測しその人が興味を持ちそうなコンテンツを配信したり、開封されやすいタイミングを予測して配信時間を最適化したりもできます。
【次ページ】「見込み客のしぼり込み」「アップセル/解約予測」、さらに「BtoCマーケティング」の機械学習活用を解説
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