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大阪を訪れる外国人観光客の増加に伴い、長く沈滞ムードを漂わせていた大阪経済に明るさが見えてきた。来阪外国人観光客数は増える一方で、各種景気指標も右肩上がりで回復している。2025年に開催される大阪万博だけでなく、うめきた2期開発、鉄道のなにわ筋線、夢洲駅タワービルなど巨大開発計画が目白押し。明星大経営学部の田原洋樹特任准教授(地方創生学)は「今後も大阪を訪れる外国人が増え、大阪経済に好影響をもたらすのでないか」とみている。来阪外国人観光客の後押しで大阪は復権するのだろうか。
2018年の来阪外国人観光客は過去最高の1,200万人
自撮り棒を掲げて記念写真を撮るカップル、たこ焼きを片手に談笑する家族連れ。聞こえてくるのは中国語や韓国語など外国語ばかりで、背景のビルを見なければここが大阪と思えない。中国が旧正月の休暇に入った2月上旬、大阪ミナミの戎橋は外国人観光客の長い列が続いた。
一時の爆買いは鳴りを潜めたものの、近くの心斎橋筋商店街は土産物を物色する外国人観光客が後を絶たない。ドラッグストアの店員は「売れ筋はコスメや生活雑貨。忙しくて目が回る」と苦笑いする。心斎橋筋商店街振興組合事務局も「売り上げは別にして心斎橋を訪れるアジアの観光客は増えている」という。
大阪観光局が1月、発表した2018年1~9月の来阪外国人観光客は前年同期比2%増の849万4,000人。6月に大阪北部地震、9月に台風21号による関西空港被災があったものの、年間の来阪外国人観光客は前年の1,110万人を上回る約1,200万人と予想されている。
前年越えは2012年から7年連続。欧米からの観光客数は東京に劣るが、中国や韓国などアジアからの観光客は東京をしのぐ勢いだ。増加率はこのところ、全国トップを維持している。
観光庁がまとめた外国人観光客の都道府県別訪問率は、2018年1~3月期、4~6月期の2期連続で大阪府が第1位に立った。英誌エコノミストの調査部門が選ぶ「世界の住みやすい都市」ランキングで大阪市は3位。東京都の7位を上回り、国内の都市ではトップを走る。
各種景気指標が軒並み右肩上がりに
戦前の大阪市は「大大阪」と呼ばれ、人口で東京を上回ったこともあるなど決して地方都市と呼ばれる存在ではなかった。しかし、高度経済成長期以降、企業の東京移転が相次ぎ、地盤沈下が進む。
帝国データバンクによると、大阪府に本社を置く企業は2008年から2017年で748社の転出超過となった。リーマンショック後は多くの経済指標が全国ワーストランキングの上位を占めたほか、府市の財政もバブル期の巨大事業失敗で赤字が拡大した。企業流出、所得減少、税収減少という三重苦は、大阪問題と呼ばれていた。
ところが、訪日外国人観光客の増加とともに、各種経済指標が一転して回復に向かっている。府市の副首都推進局によると、景気動向指数や中小企業景況判断、有効求人倍率は既に全国平均を上回っている。
ホテルの客室稼働率は2015年から3年連続で全国1位。開業率は三大都市で最も高い。商業地価は底値だった2012年の1.8倍に。地価上昇率も大阪市が4年続けて三大都市のトップに立った。大阪市の人口は2017年、転入超過が20政令市で最多を記録した。2017年の府税収は、2011年より4,572億円増えている。
大阪の主な経済指標 |
| 2008年 | 2012年 | 2017年 | 直近の状況 |
景気動向指数 | 97.3 | 112.1 | 123.5 | 全国平均より28.2ポイント高い |
中小企業景況判断 | -42.4 | -26.2 | -13.7 | 全国平均より6ポイント高い |
有効求人倍率 | 0.94 | 0.77 | 1.57 | 2018年3期の1.80は全国平均の1割増 |
完全失業率(%) | 5.3 | 5.4 | 3.4 | 2018年3期の3.4は2011年から半減 |
本社の転出超過数(社) | 89 | 54 | 61 | 2006年から半減 |
ホテル客室稼働率(%) | 68.1 | 75.5 | 85.8 | 2015年から3年連続で全国1位 |
開業率(%) | 4.4 | 4.8 | 6.4 | 2016、17年は三大都市で最高 |
商業地価府平均(万円) | 57.2 | 42.6 | 76.4 | 底値だった2012年の1.8倍 |
大阪市人口流入超過(人) | 7,064 | 7,742 | 9,453 | 20政令市中で最多 |
来阪外国人旅行者(万人) | 158(注) | 203 | 1,110 | 2011年の7倍。増加率は全国1位 |
府税収(億円) | 13,567 | 10,696 | 14,999 | 底値の2011年に比べ、4,572億円の増収 |
(出典:大阪府市副首都推進局「大阪の改革評価」から筆者作成) 注:来阪外国人旅行者数の2008年は2011年の数字 |
副首都推進局は「景気指標を見る限り、大阪経済は順調に回復している」と胸を張る。人口減少下で縮小するはずのパイが訪日外国人観光客の増加で拡大したのをきっかけに、大阪を取り巻く空気が一変したように見える。
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