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- 2018/06/05 掲載
JDD CTO 楠氏やマネーフォワード瀧氏が語る、ブロックチェーンと仮想通貨の可能性
仮想通貨の「寿命は短い」は本当か?
“カンブリア爆発”のように登場するブロックチェーン技術
仮想通貨を取り巻く環境は激変している。最近では2018年初のコインチェック事件、仮想通貨価格の乱高下や各国のICO(Initial Public Offering)規制などが起こった。また、2018年3月には、経済大国を中心とした世界20カ国で構成される「G20」の会議において、投機性の高さから「仮想通貨(Virtual Currency)」ではなく「暗号資産(Crypto Asset)」と位置づけ直し、その規制の在り方を見直す議論もあったばかりだ。「ブロックチェーンには、期待の先走りと現実とのギャップがある」――、勉強会の冒頭で楠氏はこう語り、「仮想通貨とBlockchainの課題と展望」というテーマで講演を行った。
楠氏は「一般的にブロックチェーンに対して、“何でも仲介役がいらなくなる”というイメージを持たれている」と説明した。経済産業省も「シェアリングエコノミー」や「サプライチェーン」、「プロセス/取引の自動化」などで大きな市場が生まれるという期待を持っているという。
そのうえで「現実的なインパクトとして、ブロックチェーン上で契約を自動化する“スマートコントラクト”のような仕組みなど、組織を超えて利用できる点でブロックチェーンの可能性は非常に大きい」と語った。
一方、ビットコインの適用用途については「決済処理が遅すぎる」「電力を消費しすぎる」という批判も起こっている。これに対して、最近「Hyperledger Fabric」などの企業向けブロックチェーンや、データ構造によらない分散台帳「ディストリビューテッドレジャー」なども登場している。複雑な処理をスマートコントラクトで実行できることを売りにした、多くの「プライベートブロックチェーン」が開発されているという。
こうした現状について、楠氏は「“カンブリア爆発”のように様々な技術・サービスが出てきたが、これから数年で優勝劣敗があるのでは」と予測する。
仮想通貨バブルを経て直面する課題
ブロックチェーン進展の背景には、仮想通貨の存在がある。楠氏はビットコインに代表される仮想通貨の最新動向を解説した。ビットコインは最近まで中国で9割近くの採掘(マイニング)が行われていたが、中国政府がマイニングを規制したことで他の国々に移転したという。2017年8月、ビットコインが分裂を果たして「ビットコインキャッシュ(BCH)」という新しい仮想通貨が誕生した。分裂の理由の1つとして、楠氏は「処理能力が低いという技術的な問題がある。日本の決済ネットワークでも毎秒数千件の取引ができるのに対して、ビットコインの取引処理能力は毎秒5、6件ほどしかない。また、P2Pだから決済コストが安いと言われるが、実際は1件を処理するのに1万円くらいかかっている」と指摘する。
現在、処理能力を向上させるソフトウェアとして「セグウィット」と「ビッグブロック」の2つの派閥(プロジェクト)の採用が進んでいるが、楠氏は「セグビット派が強いと感じる」との見解を示した。
仮想通貨に関連して2018年に世間を騒がせたのが「コインチェック事件」だといえる。大手仮想通貨取引所のコインチェック(Coincheck)のシステムがハッキングされ、顧客から預かっていた約580憶円相当の仮想通貨「NEM」すべてが流出した。
同事件などを受けて、仮想通貨・暗号資産に関する議論が活性化されている。楠氏は、今後の論点をスライドにまとめてポイントを解説した。
たとえば、金融庁の「仮想通貨等に関する研究会」では、ICOの取り扱いや仮想通貨取引所のセキュリティ基準、証拠金取引やICOの法律上の取り扱い、匿名通貨の取引の容認などに関して議論しているという。
また、「そもそも仮想通貨は支払い手段として社会に受け入れられているのか」という大きな論点も上がっている。「仮想通貨は胡散臭いが、ブロックチェーンはすごいという議論もある。単体でみたときにコストに見合う価値があるかはまだ議論の余地がある」と語った。
【次ページ】ブロックチェーンで何かをやらなければいけない症候群
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