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  • 2019/02/12 掲載

なぜ「不毛なクラウド議論」がなくならない? 論外なIT部門7つの特徴

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クラウドコンピューティングが登場して20年近くが経過し、ようやくクラウド利用が当たり前になった。調査会社ガートナージャパンのハイプ・サイクル2018年版でも、市場浸透が始める啓蒙活動期にクラウドは位置付けられている。だが、ガートナージャパンに寄せられる相談や質問の中に、クラウド利用のメリットなど初期段階の議論と思えるものが少なくない。同社で最上級アナリストを務める亦賀忠明氏は、そんな日本企業のIT部門に改善策を提案する。
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なぜクラウド利用は誤解を招くのか
(©kelly marken - Fotolia)

クラウド利用が当たり前の時代に愚かな質問をするIT部門

 2018年に入って、アマゾンのAWSやマイクロソフトのAzureなど“本物”のクラウドへの移行を決めるユーザー企業が急増した。

 その一方で、「基幹系システムをクラウド化できるのか」や「コストが安くなるのか」などと質問する“重症”の大企業が多いーー。このように指摘し、危機感を募らしているのがガートナージャパンの亦賀忠明氏だ。

 クラウドはデジタル化への前提なのに、いまだにクラウド移行の議論を続けている大企業が多いのは、経営者のIT活用の理解不足から、IT人材が育っていないことにある。これまで同様に、IT企業に丸投げする企業もある。

 亦賀氏は「世界の競合企業と戦ううえで、AIやIoT、クラウドなどデジタル技術のスキル不足は致命傷になりかねない」と、経営者にクラウド化の重要性を説く。

コストが半分になると思っている経営者

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 一部の経営者は新聞や雑誌報道で、クラウド化でコストが半分になった事例を知り、「当社も可能だろう」と、IT部門にITコスト削減の検討を指示する。

 そこで、IT部門がIT企業にクラウド利用を前提に提案を求めたところ、数百人月に相当する数億円の見積もりが提示された。ユーザーは「クラウドなのに、どうしてこんなに高いのか」と、想定外の見積もり金額に驚くーー。

 亦賀氏によると、そんな大企業が7割もいるというのだ。

 実は、依頼を受けたIT企業は、そのIT部門から「しっかり作って、きっちり運用してほしい」、つまり決してダウンしない堅牢なシステム作りを求められたので、要件定義から概要設計、詳細設計、実装、テスト、運用という従来方法による工数見積もりをした。開発に1~2年かけるのはある意味、当然のこと。

 亦賀氏は「クラウドの稼働率は小数点以下の桁数が1つ増えれば、コストはざっくり10倍になる」とし、移行するシステムの要件レベルを松、竹、梅に分類し、最も適したものを選択することを提案する。

 たとえば、松の稼働率99.999%以上を求めるなら、クラウドは必ずしも適切な選択肢とはいえない。システムが絶対に変わってはならない場合も、クラウドは適さないだろう。

 クラウド事業者がパッチをあてたり、止まることを前提にし、クラウド事業者による意図しない事前通知による変更もあったりするからだ。

 どうしても、移行したいのなら、クラウド事業者によるパッチや変更などを許容するとともに、システムの運用要件を見直す。パブリック・クラウドの稼働率99.99%あるいは99.9%に合わせるよう棚卸しをする。

 ガートナージャパンは、クラウド化によりコストを削減する場合、以下のような条件を最低限満たす必要があるという。

「絶対に今まで通りでなければならない、という要件を排除する」
「クラウドならではの作法、考え方を許容する」
「クラウドを自分で運転する。そのためのスキル獲得予算を確保する」
「割り切ったプロジェクトを推進できる、スキルのあるIT企業に参画してもらう」
「クラウドにあるサービスを割り切って使用する」

などだ。

 それらを理解せずに、クラウド化したユーザー企業が「コストが下がらない」と不満を述べて、「やっぱりクラウドはだめだ」と勝手な結論を出し、「オンプレミスのほうがいい」と逆戻りする。

 そこにつけ込むIT企業もいるが、ユーザーは取り巻く環境変化に取り残されることになる。

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日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル2018年版。市場浸透が始める啓蒙活動期にクラウドは位置付けられている
(出典:ガートナー報道発表)

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