• 会員限定
  • 2019/03/13 掲載

ガートナー流「デジタルKPI」でビジネスを見直せ! 目標管理と設定方法の極意

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
KPIはビジネスの“今”を把握するうえで非常に有益だ。それを基に、将来に向けた判断が適切にできるからだ。ただし、KPIを活用できていない企業は意外に多い。デジタル化が進み、より多くのデータが利用できるようになる中、KPIの見直しを放置したままでは他社に先行を許しかねない。ガートナーのアナリスト ポール・プロクター氏が、KPIの活用促進に向けた方策をかみ砕いて解説する。
photo
KPIはどのように設定すればいいのか
(©Funtap - Fotolia)


プロセスを可視化するKPIに多くの社員は無関心?

photo
ガートナー
ディスティングイッシュト バイス プレジデント
兼アナリスト
ポール・プロクター氏
 ビジネスのデジタル変革が進む中、企業の目標達成度を示す指標である「主要業績評価指標(key performance indicator:KPI) 」の重要性は高まるばかりだ。

 人手で処理していたため、従来では把握が困難だった多様な局面が、データによって可視化できるようになったためだ。新たに有効なKPIを設定できれば、迅速かつ的確な判断につながり、業績向上が期待できる。

 しかし、「企業の現状を概観すると、その道のりは険しいと言わざるを得ません」とプロクター氏は述べる。KPIと自身の業務についての関係性に、多くの従業員が「未だに気づいていない」ためだという。

 それは仕方のない面もある。企業では部門や役職ごとに異なるミッションが与えられ、その達成に無関係なデータには無関心になりがちだ。

「ただし問題なのは、多くの従業員が業務の『IT依存度合い』や問題点について、理解していないことです。このため、たとえば不適切なパッチ適用が生じた場合でも、『単なるITの問題』と捉え、対応する機会をみすみす逃しています。それが原因でアプリに不具合が発生し、サプライチェーン全体の遅延リスクが高まってしまうにも関わらずです」(プロクター氏)

KPI策定は社員へのデータの「翻訳作業」

 こうした状況の改善を抜きに、今後のKPIの活用は困難だ。プロクター氏は、「その対応で責を負うのは、システムと業務の関係に精通したIT部門、中でも経営に資するIT活用を指揮するCIOにほかなりません」と強調する。

 そして、改善の柱となる作業が「適切なKPIの設定」だ。

 そのためにプロクター氏が必要性を強調するのが、「ビジネス成果との因果関係が明確に定義されている」「先行指標としての役割を果たす」「対象者が具体的である」などの7つの条件を、できる限り多く満たした“良いKPI”の策定である。
●良い評価指標の特性
・ビジネス成果との因果関係を正当化でき、明確に定義されている
・先行指標としての役割を果たす
・対象者が具体的で明確である
・対象者がビジネス決定を下す際に役立つ
・ITを専門としない対象者も理解できる
・緑から黄、赤へと変化し、アクションを促せる
・評価指標にビジネス環境がかかわるとき、対象者の関心の度合いが高まる
「数値での厳密な提示が困難なリスクなどは、信号のように『安全』『注意』『危険』といった具合に伝えても構いません。そのうえで、自身の業務にどう影響が出るのかについて、社員の職位や業務などを基に分かりやすく伝えねばなりません。これが疎かでは従来のように無視されてしまいます。そして何より大切なのは、なぜそうなるかとの問いに論理立てて説明できることです」(プロクター氏)

 たとえばメーカーであれば、アプリの不具合に起因する影響、つまり「生産できなくなった量」「結果として失われる売り上げ」などを営業部門や経営層に報告する。

 金融機関であれば、組織のIT化の遅れについて、社内での業務速度や売買処理の遅れといった具合に、道筋立てて部門ごとに言い換えるわけである。

ガートナー流KPI策定法とは?

 もっとも、企業ごとに置かれた状況や、管理データの種類と量も異なり、適切なKPIの設定は一筋縄ではいかない作業である。

 特にデジタルビジネスの「デジタル化進捗度」に関するKPIつまり、「デジタル・ビジネスKPI」となると、経験の浅さなどから、企業の約半数がいまだ指標を持ち得ていない。

 そうした企業に対する参考材料としてプロクター氏が紹介したのが、ガートナーが実施するデジタル・ビジネスKPIの策定サービスでの具体的な策定手法である。

関連記事
 ガートナーではデジタル・ビジネスKPIについて、まず、ビジネス目標の達成に最も有効と判断される「測定対象」を定める。

 さらにその対象について「現在の段階」「目指す目標」「目標達成された際の企業としての成果」「自社の調整点」の4つの観点から見ていく。

 たとえば、遠隔診療の利用者拡大に取り組む医療機関の場合は、ヒアリングを基に「仮想/デジタルインタラクションの割合」を測定対象に定め、「現在の割合」「目指すべき割合」、目標達成された際の企業としての成果として「顧客満足度の20~50%の向上」を、自社の調整点に「顧客満足度の低下」をそれぞれ設定した。

「この5つの観点のうち、分かりにくいのが調整点でしょう。これは、成果が上がることで生じてしまう不具合です。たとえば、遠隔診療が広がることで、対面での診療を改めて求められる患者が増えてしまい、患者の不満が増すといったことが該当します」(プロクター氏)

画像
デジタル・ビジネスKPIの構造

遠隔診療の利用者拡大に取り組む医療機関のデジタル・ビジネスKPI(測定対象)。デジタル・ビジネスKPIである「仮想/デジタルインタラクションの割合」について、「現在の割合」「自社の目指す目標」「自社にとって望ましいビジネス成果やメリット(顧客満足度の20~50%の向上)」「調整点(顧客満足度の低下)」などがひと目で分かるようになっている

【次ページ】8つの企業KPIでデジタルビジネスの成熟度を明らかに
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます