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- 2017/07/13 掲載
博報堂ではなぜ打ち合わせで「無駄口」「悪口」を推奨するのか(2/2)
「予定調和」を打破せよ
打ち合わせのプロセスの中で、私たちがもっとも重視しているのが「拡散」です。拡散とは、課題に関するアイデアとして、あらゆる可能性を洗い出す作業のことです。アイデア出しの打ち合わせで、もっとも重要なのはアイデアをできるだけ拡散することです。もちろん、「良いアイデアを出すこと」は大切ですし、それがゴールでもあります。しかし、「良いアイデア」は、議論の拡散の後に、結果的についてくるものであるというのが私たちの考えなのです。
私たちは、最終的に導き出される結論のクオリティと、「拡散の度合い」は比例する関係にあると考えています。つまり、議論が拡散すればするほど、結論のクオリティも高まっていくということです。
新しい発想を生み出すためには、常識に囚われない、自由な思考が欠かせません。議論が存分に拡散しないまま、次の「収束」のプロセスに入ってしまうと、常識の範囲内におさまった結論になる可能性が高くなります。
「拡散がない議論」とは、「予定調和」と言い換えることもできます。予定調和の打ち合わせをしても、それでは想定内の結論しか導き出すことができないのです。
打ち合わせは放っておくと、予定調和になりがちです。参加メンバーが、場の収拾がつかなくなることを恐れ、意識的、無意識的に議論の拡散を避けようとしてしまうからです。同様に、「打ち合わせを効率的に、できるだけ短時間で終わらせよう」と意識しすぎることも、拡散の妨げになります。
「最高の結論を導き出すためには拡散が必須である」という意識を参加メンバー全員で共有することが何より重要になるのです。
雑談には使い方がある
仮に、ある課題の解決を目的にした打ち合わせで、参加メンバーから解決策としてA案、B案、C案、D案の4つが出たとします。このとき、4つの案について、それぞれ参加メンバーが自分の意見を述べていった上で、最終的にどの案にするかを4つの中から選ぶ、というのが一般的なアイデア出しの打ち合わせの流れではないでしょうか。
しかし、これでは拡散を起こすことはできません。博報堂の打ち合わせでは、4つの案が出たときに、解決案は本当にこの4つしかないのか。E案、F案はないのか、という問いからスタートして、アイデアをどんどんと拡散させていきます。
実際には、議論の拡散のためにアイデアは質より量を重視しますので、3~4人が集まる打ち合わせでは40程度、多いときでは100以上の案が最初に並べられることになります。ひとつの結論を導くために、最低でも100の案を検討する。最終的に、99の案は捨てることになりますが、それは決して無駄ではありません。
「あるお題について100個のアイデアを考えてみてください」と言われて、本当に100個のアイデアを出せる人と出せない人がいます。この両者の差は、発想力というよりも、思考を拡散させる習慣の有無にある場合が多いといえます。参加メンバー全員が、拡散の意識を強く持たないと、拡散はなかなか起きません。そこで、有効なのが雑談なのです。
「雑談こそが打ち合わせの成否を分ける」というほど、博報堂では雑談に重きを置いており、そんな打ち合わせへのこだわりが博報堂の企業広告のコピー「会議に無駄口を。打ち合わせに悪口を。」には込められているのです。
以上、博報堂の打ち合わせ術を簡単に紹介させていただきました。より詳しくは拙著『博報堂のすごい打ち合わせ』をお読みいただければ幸いです。
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