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  • 2017/06/22 掲載

「Yahoo!アカデミア」はインターネット時代のMBAになれるか

伊藤羊一氏インタビュー(前編)

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あっという間にビジネスの潮目が変わってしまう現在、企業のかじ取りを行う「リーダー」の果たす役割と責任は、その重みを増している。それは、インターネットの世界で圧倒的な存在感を放つヤフーも同じだ。では、同社は次世代を担うリーダー、人材をどのように発掘・育成しているのか。その重要な役割を担うヤフーの企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長 伊藤 羊一氏に話を聞いた。
(聞き手/構成:編集部 中島 正頼、執筆:井上健語)


後編はこちら

自分でも意識していなかった自分のミッションを、宮坂社長に見つけてもらった

──伊藤さんはもともと、日本興業銀行(現みずほ銀行)からキャリアを始められたと聞きました。楽天の三木谷 浩史会長と同じですね。

伊藤氏:22歳で就職して、日本興業銀行で14年間仕事をしました。三木谷さんは2年先輩ですが、接点はほとんどありませんでしたね(笑)。入った当初は融資事務で、最後のころは事業再生の業務を担当していました。

 その後、文房具、オフィス家具メーカーのプラスに転職し、物流からマーケティング、事業再編、新規事業開発などを担当し、最後は経営に携わりました。そして、2015年4月にヤフーにジョインした、というのが大きな流れです。

photo
ヤフー
コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア 学長
伊藤 羊一氏

──銀行から文房具メーカー、そしてヤフー。かなり異色の経歴に感じます。なぜヤフーを選ばれたのでしょう?

伊藤氏:MBAのグロービス経営大学院で学んでいまして、卒業後、同大学でリーダーシップ開発の講師を担当することになったんです。そのタイミングでソフトバンクの孫正義会長の後継者を発掘する、という「ソフトバンクアカデミア」に入り、それをきっかけにヤフーの宮坂と出会いました。

──現在もヤフーの代表取締役社長を務める宮坂 学氏ですね。

伊藤氏:最初に会ったときからすごく意気投合して、盛り上がったんですよ。それから、一緒にご飯を食べに行く仲になって、そこで「2014年4月から始まっている『Yahoo!アカデミア』を手伝ってくれないか?」という話が出たのです。

 最初はいまひとつピンとこなかったのですが、宮坂に「あなたしかいない」と請われ、「この人が言うならそうなのかな」と。いまは、宮坂にとても感謝しています。自分でも意識していなかった自分のミッションを、彼に見つけてもらったと思っています。

──では、伊藤さんがいま「自分のミッション」とおっしゃられたYahoo!アカデミアについて、これからお伺いしたいと思います。そもそもYahoo!アカデミアとは何でしょうか。同じグループには「ソフトバンクアカデミア」もありますが、何が違うのでしょう?

伊藤氏:ソフトバンクアカデミアは、孫正義の後継者を発掘する取り組みですが、Yahoo!アカデミアは、ヤフーの次世代リーダーを発掘して育てることを目的とした企業内大学です。

 今後、ますます競争が厳しさを増す中で、リーダーには、会社をしっかりドライブすることが求められます。そのための人材を発掘・育成することを目的に設立されました。発案者である宮坂は、リーマンショック直後の2009年ころから、こうした取り組みが必要だと認識していたようです。

約120名が5つのクラスに分かれて学ぶ選抜プログラム

──ソフトバンクアカデミア誕生の前から構想があったのですね。Yahoo!アカデミアは、現在、何名くらいが参加しているのでしょうか。また、どのような仕組みになっているのか教えてください。

伊藤氏:大きく「選抜プログラム」と「オープンプログラム」に分かれています。選抜プログラムでは、社内から選抜されたメンバー約120名が20数名ずつ5つのクラスに分かれています。

 G1クラスは本部長やユニットマネージャーのクラスで、G2クラスが部長やサービスマネージャ、G3クラスが課長に当たるリーダークラスで、G4クラスがそれ以外となります。また、これ以外にRFクラスがあります。これは、CFOコースといって、企業を主にカネの面からみるCFOを育てるクラスです。一方のオープンプログラムは、プログラムごとにメンバーを社内から募集しています。

──5つというのは、かなり細かい分け方だと感じるのですが。

伊藤氏:階層が同じだと悩みも共有できますし、仕事するうえでも都合がいいと判断したからです。ただ、カリキュラムを明確に分けているわけではなく、同じ悩みを共有できる仲間を作れることを重視しています。

 なお、G1クラスは、リアルに次のリーダー、つまり次の経営陣を見極める場ですので、他のクラスとはちょっと意味合いが異なります。このため、特に年数は設定していません。

 これに対して、G2~G4クラスは基本的に1年のプログラムです。また、RFクラスは学ぶことが多いため2年としています。各クラスには、執行役員が一人ずつ塾頭として入ります。塾頭の役割は、一人一人のメンターになってその成長を見守ることです。

自らを見つめるLead the Self

──プログラムでは、どのようなカリキュラムをどれくらいの頻度で実施しているのですか。

伊藤氏:現在は、3週間に1回くらいの開催頻度です。カリキュラムの内容は「スキル系」と「マインド系」に分かれています。スキル系はロジカルシンキング、プロブレム・ソルビング(課題解決)、システム思考、デザイン思考などを学びます。スキル系は、1回あたり3時間、たとえばロジカルシンキングを3時間やったら、その応用編を3時間という具合です。

──スキルを教えるのはなんとなく想像がつくのですが、マインド系というのはどのような内容になるのでしょう?

伊藤氏:マインド系というのは、主に自らを見つめるセッションをやります。我々は「Lead the Self」と呼んだりしますね。Lead the Selfは、各クラス2泊3日の合宿を年に2~3回実施します。

 特徴は対話を重視していることです。たとえば、4人が1組になって、各自が自分の「ライフラインチャート」を作って対話します。ライフラインチャートというのは、時間を横軸、幸福度を縦軸にとって、生まれてから現在までの幸福度の変化を表したグラフのことです。そして、自分以外の3人に説明し、それに対して3人が質問を投げかける。それを4人全員が30分ずつ行うのです。

──自分の過去を振り返る、ということでしょうか。どういった意味があるのですか。

伊藤氏:時間軸は「過去、現在、未来」ですが、Lead the selfでは「現在、過去、現在、未来」という流れで対話をしていきます。まず現在からスタートして過去に遡ります。今の自分は過去の自分の経験から構成されているからです。すると、自分が大事にしていた価値観や忘れていた大切なことを思い出します。そうやって現在に戻ってきて、いま大切なことは何かを考え、それを踏まえて将来を考えるのです。

 また、外部からリーダーを招いて講演会も開いています。これまでには登山家の栗城 史多さん、ローランド・ベルガーの遠藤 功さん、ラクスルの松本 恭攝さんなど、いろいろなタイプのリーダーにきていただきました。その際も、事前にその方の書いた著書の読書会を開いたり、講演後に懇親会で意見を交換したりと、単なる講演会で終わらずに講師や受講生同士で「対話」することを重視しています。

【次ページ】 「インターネット時代のMBA」を作りたい
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