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  • 2014/01/23 掲載

水面下で進むアマゾン・楽天・ヤフーの戦い、「ID連携」はEコマースの競争を変えるか

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利用者のID情報をサービス間で共有する「ID連携」は今後、大手Eコマースサイトの経済圏を拡大させる上で大きなポイントとなりそうだ。利用者にとっては、普段利用する大手EコマースサイトのIDとパスワードをさまざまな場面で活用することで、シームレスに決済の手続きを行うことが可能になるため、利便性は格段に上がる。この分野も、今はまだ本格上陸を果たしていないアマゾンを迎え撃つ楽天・ヤフー(Yahoo!JAPAN)という構図になりそうだ。

アマゾンサイト外で進むアマゾン商圏の拡大

 米国時間の2013年10月8日、ショッピングモール事業を展開するアマゾンが開始したあるサービスは、Eコマースに携わる関係者たちの耳目を集めた。そのサービスとは、外部のEコマースサイトなどがアマゾンの決済システムを利用できる新サービス「Login and Pay with Amazon」。Eコマース事業者は、自社のEコマースサイトに「Pay with Amazon」というボタンを設置しさえすれば、そのサイトの利用者はアマゾンのIDとパスワードで、面倒な氏名や住所、クレジットカード番号などの入力なく決済を完了できるというものだ。

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アマゾンの「Login and Pay with Amazon」を紹介するWebサイト
(出典:アマゾン)


 Eコマース事業者は、初期費用無料、月額取引総額3,000ドル未満の場合、2.9%の手数料および0.30ドルのトランザクションフィーで、アマゾンの優れた決済システムが使用できる。


 このサービスが注目を集めたのは、2億1500万人とも言われるアマゾン利用者を、そのまま自社のEコマースの決済に用いることが可能な点だ。

 これまでもアマゾンでは「Checkout by Amazon」を通して、外部加盟店にサービス提供を行っていた。これは、アマゾン外のEコマースなどのショッピングサイト事業者に対し、アマゾンの“ワンクリックオーダー”をはじめとするアマゾンのペイメント機能をオンラインマーチャントの自社のWebサイトに導入することができるサービス。“州税(付加価値税)計算機能”や“発送料金計算機能”、“スリップ作成機能”などの機能も合わせて利用できる。

 しかし、「Checkout by Amazon」はあくまでも、Eコマース事業者のIDでログインしたうえで、決済方法としてアマゾンの決済手段を選べるというだけのもの。そのため、Eコマース事業者は自社サイト上で利用者にID登録をしてもらう必要があり、これが1つのペイウォール(支払いの壁)となっていた面がある。

 これが「Login and Pay with Amazon」により、ID情報も連携する。つまり、アマゾンのIDとパスワードで、中小のEコマースサイトの商品がダイレクトに購入できるようになるわけだ。

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アマゾンが買収した靴の通販サイト「Zappos」のログイン画面。「Login with Amazon」ボタンが用意されている(赤枠部分)。「Checkout with Amazon」同様、「Login with Amazon」もこれまでも提供されてきた。「Login and Pay with Amazon」はこれらのサービスを組み合わせて利用できる形と言える
(出典:アマゾン)


 本サービスでは、Eコマース事業者側はアマゾンが提供する顧客情報を活用して、配送状況の確認、購入履歴、クーポンなどの発行、荷物の追跡サービスなどを受けることが可能になる。現状は、米国のみのサービスだが、今後日本で展開されれば、消費者の利便性が高まることは間違いない。

 Eコマース事業者は「顧客の決済情報」という首根っこを押えられる形になるが、それでも自社のシステム投資予算が限られる中堅以下のEコマースサイトにとっては、セキュリティなどのコストをあまりかけずに、世界中に2億1,500万人いるアマゾンの利用者を潜在的な顧客とすることができる。

 ID連携を行うアマゾン側にとっては、自社の会員基盤を別のサイトでの決済に誘導することで手数料収益が期待できる。また、アマゾンのIDとパスワードを利用した決済が外部で可能になり、会員の利便性を高められるほか、IDを使う機会を増やすことでアマゾン自身への帰属意識を高めることも可能になる。言わば、アマゾンの外で、アマゾン商圏を拡大することになる。

 現状の問題として考えられるのは、個人情報保護の観点で、どこが個人情報を持つ主体なのかという点だ。この辺が日本市場への取り組みを躊躇されている要因である可能性もある。

【次ページ】迎え撃つ楽天・ヤフーのサービスは?
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